





名人と謳われた父から受け継ぐ、
江戸前鮨の正統派職人
【鮨 青木】 青木 利勝氏 寿司
先代は鮨の名店【なか田】から初めて暖簾分けを許された父・青木義(よし)氏。江戸前鮨の伝統を守り、卓越した技術を継承する正統派職人でありながら、柔軟な発想で革新的な鮨を生み出すヨコガオを持つ。 鮨の頂点、銀座で輝き続ける2代目青木利勝氏に迫った。
名人と謳われた父から受け継ぐ、
江戸前鮨の正統派職人
先代は鮨の名店【なか田】から初めて暖簾分けを許された父・青木義(よし)氏。江戸前鮨の伝統を守り、卓越した技術を継承する正統派職人でありながら、柔軟な発想で革新的な鮨を生み出すヨコガオを持つ。 鮨の頂点、銀座で輝き続ける2代目青木利勝氏に迫った。
――銀座の名店【なか田】から初めて暖簾分けを許された父・義(よし)さんは京都で独立したそうですが、京都時代の印象を教えてください。
当時、京都に江戸前鮨はありませんでした。江戸前鮨はマグロが命ですが、京都では白身魚やエビが珍重されていたんです。京都の人はマグロをあまり食べません。でも、父はマグロへの思い入れが強い人だったので、食文化の違いには戸惑っていました。
父の独立に伴って、小学生のときに家族で京都に引っ越しました。学校帰りや休日、父の店に遊びに行くことが何よりの楽しみでした。お弟子さんと一緒に仕込みを手伝うこともあって、自然な流れで職人を志すようになりましたね。学生時代は柔道に没頭し、日本体育大に進学。私が大学に進学したことを契機に家族で東京に戻りました。まず麹町に移って屋号を【鮨
青木】に改め、2年後に銀座へ。銀座で店を出すことは父の夢だったんです。
――銀座で店を始めて一年ほどで突然先代が亡くなりました。
店を継ぐという気持ちは少年時代から揺らぎませんでしたが、15歳で修業を始めた父に比べるとスタートは24歳と遅くなりました。京橋の【与志乃】で修業を積み、満を持して親子二代がそろい踏みした矢先に父が他界。握り方や飯台の並べ方も手探りだった頃で、握った鮨がつけ台の上で崩れることもありました。銀座で店を出すにあたって億という借金も抱えていたんです。それでも、父が残してくれた人脈に支えられました。京都時代に父の下で修業した後輩や同僚の方が銀座にいて、「分からないことがあったらいつでも聞きに来い」と声を掛けてくれました。築地に仕入れに行くと年配の方が魚の目利きを教えてくれます。わざわざ京都から食べに来て叱咤してくださる方もいました。お客さんが店を育ててくれたと感じています。
――スタッフの育成において留意していることはありますか。
父は「見て覚えろ」という朴訥な人でした。昔は多くを語らずに指導する職人が多かったです。私が京橋の【与志乃】で修業した2年間は、師匠から包丁を握らせてもらえませんでした。今は時代が違うと考えています。1~2か月で段取りを教えたら、包丁を持たせて仕込みをさせます。銀座店、西麻布店合わせて現在スタッフは10人。一昔前だと、弟子は修業した店の近所で独立しない風潮でしたが、僕は問題ないと思います。「お客さんがとられる」という感覚では店が伸びません。混んでいるときに師弟の店を紹介し合えるくらいの関係が理想です。
――スタッフの育成において気を付けていることはありますか。
修業を始める前、大学卒業後に一年間アメリカを横断しました。留学ではなく“遊学”です。30年前のアメリカは“スシ”ブームの先駆け。日本ではまだ馴染みのなかったカリフォルニアロールが人気を博していました。サーモンの照り焼き、バルサミコ酢のカルパッチョにも感銘を受け、父に国際電話を掛けたことを覚えています。それから、時間を見つけては毎年必ず渡米し、様々なレストランの食べ歩きをして刺激を受けています。手長海老や牡蠣など、斬新に感じられる素材は別ジャンルの料理から影響を受けて考案したものです。常連さんに提供して好評だとそれが定着し、メニューに加わっていきます。長期に渡ってニューヨークのレストランの変化を見てきましたが、味や調理法だけではなく、設えや空間からも学ぶことは多いです。近年は仕事で握りに行くこともありますよ。現在の夢はニューヨークに店を出すことです。
――鮨屋を経営する上で大切にしていることは。
「丁寧な仕事、手を抜かない、魚のランクを落とさない」というのが父の教えです。手を抜いたり、安い食材を使ったりするとお客さんは離れていくと思います。経営が苦しかった時代もネタのランクは落とさず、良い魚を使い続けました。 長年のニューヨーク訪問を糧に、『岩牡蠣の握り』や『あん肝のシャリ巻芽葱ポン酢』など革新的といわれるような鮨を生み出しています。ネタの可能性は追求しますが、それでも“崩し”過ぎてはいけない。あくまでも求められているのは伝統的な江戸前鮨です。江戸前の仕事を施した煮物や光り物は味わって欲しい逸品ばかり。8割江戸前鮨に2割の“崩し”を加えたスタイルが哲学です。時代に左右されない文化を継承しながら、現在あるべき江戸前鮨の姿を模索しています。
撮影/菅野 祐二、川上 尚見
文/ヒトサラ編集部(2014.12.12取材)
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