





一生食べ続けられる、“日常”としての
本格イタリアンを進化させる実力派
【パッソ ア パッソ】 有馬 邦明氏 イタリアン
東京の下町・門前仲町にあるイタリアン【パッソ ア パッソ】。秋冬のジビエを筆頭に、魚介や野菜など、全国の信頼できる生産者たちから届けられる逸材を、絶品イタリアンに仕上げる有馬邦明シェフは、どのように生産者と、そして自らの料理と向き合ってきたのか。そのヨコガオに迫りました。
一生食べ続けられる、“日常”としての
本格イタリアンを進化させる実力派
東京の下町・門前仲町にあるイタリアン【パッソ ア パッソ】。秋冬のジビエを筆頭に、魚介や野菜など、全国の信頼できる生産者たちから届けられる逸材を、絶品イタリアンに仕上げる有馬邦明シェフは、どのように生産者と、そして自らの料理と向き合ってきたのか。そのヨコガオに迫りました。
――有馬シェフは、素材の美味しさを引き出す達人として知られています。
たしかに、今では、素材を一番おいしい形にすることが料理人の仕事であり、僕の仕事だと捉えています。でも、そういった考えにいたったのは、5~6年前のことです。30代半ばくらいまでは、イタリアで修行した時代の良いイメージだけで仕事ができていました。技術と知識があれば、ある程度の料理がつくれて、お客様から「楽しい、美味しい」って言ってもらえ、人の輪の中心にいられる…でも、そんな夢のような話は続かないですよね。
歳を重ね、足元を見つめなおしたときに、たとえば、僕はフォアグラをクリスマスにしか扱ったことなかったことに気づいたのです。年に1回しか使わない料理を美味しくできるわけがありません。だとしたら、いろいろな素材を“日常”にしないといけないと思ったわけです。使いこなさないと、良さを引き出すことはできないという考えから、いろいろな素材への追求が始まりました。
――休みがあれば全国の生産地のもとを訪れているとお聞きしています。
そうですね。僕の場合、何かを判断する時は、人との出会いがきっかけになりますから。ちょうど食材に対する意識が出てきたころに、中勢以の親方に牛の生産者さんのところに連れて行ってもらったんです。それまで生産者さんに触れ合う機会がなかったのですが、実際にお会いしたら、本当に良い人で、「この人が育てた牛だったらもう頑張るしかない」という気持ちになりました。だから、食材の良さとは、僕の中でどんな人がつくっているかということとイコールです。「あのおじいちゃんがつくっているんだったら、あのおばあちゃんがつくっているんだったら、このお姉さんがつくるんだったら、俺が使う」って(笑)。
――そういったアプローチの中で、イタリアで経験したことが役に立ちましたか。
24歳から約2年間、ミラノやトスカーナなどイタリアで修行しているのですが、本当に行っていて良かったと実感できたのは最近のことです。あのときの経験は、こういうことだったのかと膝を打つことは最近の方が多いです。イタリア人がいかに食べることを大事にしているかが、ようやく理解でき始めてきました。
たとえば、ジビエの使い方に関しても、フランスではかつて狩りに行って、戻ってくるまでに1~2週間かかっていました。そのような状態の肉を、美味しく食べさせるための努力を一生懸命した結果、今のフランス料理のジビエ料理が誕生しています。一方で、イタリアでは、狩ってから料理をするまでにそれほど時間はかかっていません。なので、もっとさっぱりと焼いただけのような調理法が多いわけです。より日常に近い料理、食材としてジビエがあることがわかります。
たとえば日本がイタリアの21番目の州だったとしたら、どんな食材を使って、どんな料理が生まれたか。それを考えたときに生れた料理の一つが、ぼくにとってはスープです。イタリアンのコースでは、スープを組み込むお店はあまりないんですが、水の豊かな日本では、昔から汁物は欠かせません。軟水なので、素材に対して、とてもクリアなスープができます。旬の食材とあわせて、さらにその日に使うジビエの骨などから取った出汁を使うことで、美味しい料理ができあがります。
食材や調理法の背景にあるストーリーや意味をきちんと理解し、単にアレンジしただけではないアプローチをとりたいと考えながら、仕事に向き合っています。
――そもそも、有馬シェフにとってイタリア料理とはどんな存在ですか。
イタリア料理は、洋食の中で一番基本だと思っているんですよ。それは謙遜しているわけではなく、毎日食べ続けられる、価値のある料理だということです。そういう日常としてのイタリア料理を考えるとき、日本で、本場の味を求める必要はないと思っています。その土地の料理を食べたかったら、そこに行くしかないんです。東京のなかにイタリアのような異空間をつくりあげたとしても、ドアを開ければ、そこは東京なのですから、食事としては、日本の状況に合ったものをつくった方が正解だと思います。それをイタリアの技術と知識を使って落とし込んでいく。そんな料理をこれからも追求していきたいと思います。
撮影/鈴木信吾 文/ヒトサラ編集部(2015.2.9取材)
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