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河野 透 氏
河野 透 氏

上質なフレンチを生み出す、職人気質の料理人

【モナリザ 恵比寿店】河野 透フレンチ

オリジナルデザインの器で、星付きレストランのフレンチが楽しめる、今年16年目を迎えるレストラン【モナリザ 恵比寿店】。オーナーシェフの河野透シェフは、ジョエル・ロブション氏のもとで修業を積み、恵比寿のシャトーレストラン【タイユバン・ロブション】の総料理長を務めた経験を持つ料理人だ。食材と真摯に向き合い、鍛錬を続け、技術を駆使して料理を生み出す河野シェフのヨコガオに迫った。

Interview

サフランとトマトのソースが芳香な不動の人気料理
『トマトのロザス』

フレンチ界の巨匠、ジョエル・ロブション氏の元で修業を積み、今なお料理人として活躍を続ける、河野透シェフ。調理師専門学校を卒業後、洋食店で5年の修業を積み、25歳で渡仏したところから、フレンチシェフとしての道が開けた。現地ではすべてが新しく、サービスの質や仕事のスピード感、仕事中の集中力などに衝撃を受けたという。

特に、ロブション氏の店での修業は厳しく、18人の調理人のなかで努力を重ね、最終的には3番手をつとめるほどに成長、90年に帰国。93年に恵比寿【タイユバン・ロブション】の立ち上げに関わり、97年に独立した。「星付きの味をカジュアルに」と始めた店も、お客様に育てられ、上を目指して頑張るうちに、「上質なフレンチレストラン」としての品格を身につけるほどに。料理人としての技術力と味付けにこだわり、基本を踏まえた上で、独自の視点を取り入れた料理を生み出す。

築地で仕入れた新鮮な食材と真摯に向き合い、これまで培ってきた技術を駆使して丁寧につくり上げる魔法の料理。そこには長年の勘と、今なお革新を続けようとする河野シェフの姿勢が表れている。それが最も表現されている一皿が、代表料理の『トマトのロザス』だ。

独自のスタイルで生み出す日本のイタリア料理

【モナリザ】がオープンした15年前からのスペシャリテ。夏の暑い時期に、爽やかでスッと食べられる冷製の一品がつくりたい……と考えて生まれたものだ。

トマトの中をくりぬいて、カニのほぐし身とサラダを詰め、下にはトマトソースとサフランソースをしいて仕上げてある。カニのほぐし身を贅沢に使ったサラダは、トマトの自然な甘さや酸味を引き立てるよう、ほどよくビネガーがきかせてあり、冷やしたトマトとさっぱり仕立てに仕上げたサラダの爽やかな味わいが、サフランの風味と絶妙に絡み合う。

「食材をテーマにし、それをほかのどんな食材と組み合わせるのか、どのような調理法で仕上げるのかと考えるところから一つの料理が生まれる」と河野シェフ。この料理をお客様に出したとき、いかに美しく魅えるかを考え、トマトの赤に映えるようにと黄色い皿をつくった。【モナリザ】の特徴のひとつでもある「オリジナルの器づくり」は、この逸品を生み出したことから始まったのである。

テーブルの感動を生み出す、名脇役のオリジナル食器

料理をよりきれいに、かつ美味しく魅せるには、盛り付ける器が大切。茶道にも通じる日本人ならではの「おもてなしの心」を取り入れ、お客様のテーブルへと料理が運ばれてきた瞬間に、感動を与えることができるようにとの思いもあって、河野シェフはオリジナルの食器を定期的につくっている。

その時々で決めたテーマをベースに、相性のよい料理をイメージしながらつくる器は、植物や宝石、料理が浮かび上がる3D的なものまでデザインは多岐に渡り、形も正方形に近い角皿や楕円、マーキス型など、イメージした料理によってさまざま。ジャンルや形状、素材など、自由な発想で考えるのが河野流だ。今ではお店で使用する食器のほとんどがオリジナルとなり、お客様のなかには、それを楽しみに訪れる人もいるという。

「お店の規模を広げるよりも、いかに今を良くするかということを考え、進化していきたい」と語る河野シェフ。「料理人 河野透」ではなく、「モナリザ」のファンを増やすべく、基本を大切にしながら、着実に歩みを進めている。

シェフの記憶に残るシェフ
~芸術性と料理人としての姿勢を教えてくれた師~

河野シェフが最も影響を受けた人物。それはフレンチ界の巨匠として知られる、ジョエル・ロブション氏だ。

初めてロブション氏に合ったのは、フランス修業時代。フランスの【ギー・サヴォワ】で行われた食事会の席で直談判し、1年後に幸運にもロブション氏の下で働けることとなった。18人の調理人がそろう過酷な環境のなかで多くを学び、最終的には3番目のポジションを任されるほどになったという。この時に学んだことは、「ひとつひとつの調理を丁寧にする」、「料理の味をすべて一定に保ち続ける」、「妥協を許さず、合格点を常に求め続ける」、「すべての料理をお客様に出す前に必ずチェック(味見)する」という4項目。

このことを基盤に、その時々の流行や客の声を取り入れた料理を追求し続ける姿勢と、その高い芸術性は、現在の河野シェフの料理人としての在り方に大きな影響を与えているという。

撮影/永友 啓美 文/ヒトサラ編集部

シェフの裏ワザ

「炒めものをつくるときには最初に塩・胡椒をふる」

炒めものをするときには、最初に食材に塩・胡椒をすることが鉄則。なぜなら、その目的は、「調理の仕上げで味付けをすること」ではなく、「素材の味を引きだし、より一層美味しい料理をつくるための下ごしらえ」だからです。食材を並べた状態で塩・胡椒をし、じっくりと炒めて味をなじませると同時に、素材の持ち味を引き出し、旨みを閉じ込めるようにしましょう。

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