





イタリア料理に敬意を払うからこそ
クリエイティブであり続ける実力派シェフ
【il Pregio(イル プレージョ)】 岩坪 滋氏 イタリアン
イタリア料理としては少数派である少量多皿のコースのみを貫くことで、フーディーズたちを魅了し続ける、イタリアン【イル プレージョ】。イタリア料理、そしてイタリア文化への愛が、自らのクリエイティブなスタイルの原点だと語る岩坪滋シェフのヨコガオに迫りました。
イタリア料理に敬意を払うからこそ
クリエイティブであり続ける実力派シェフ
イタリア料理としては少数派である少量多皿のコースのみを貫くことで、フーディーズたちを魅了し続ける、イタリアン【イル プレージョ】。イタリア料理、そしてイタリア文化への愛が、自らのクリエイティブなスタイルの原点だと語る岩坪滋シェフのヨコガオに迫りました。
――イタリア料理で、少量多皿のコースでやっていらっしゃるお店は、それほど多くはありませんよね。
そうですね、少数派です、はい。この店を開いた当初からコースではあったのですが、プリフィックススタイルでした。途中で完全に『おまかせコース』にしましたが、その方が自分の表現として幅が広がると考えたからです。気に入った食材も多く使いやすくなりましたし。やっぱり表現の自由を求めたんですね。
基本的には、食の指向は保守的なものだと思うんです。だから、いくら自分が良いと思っても、お客様のほうでイメージが付かないと選んでもらえない皿が出てきます。でも、それは食べる側としても、もったいないと思いますし、自分のやりたい表現や店のあり方、厨房の設備などの制約も考えた上で、ベストな質の料理が提供ができるスタイルを考えていったら、自然に今の形行き着いた感じですね。現在ディナーは、9皿、10皿、11皿のお任せコースでやっています。
――そういったところが認められたのか、独立してかなり早い段階でミシュランの星もお取りになりました。
2年目ですね。商売としてどうこうというより、世界でいちばん歴史と権威のあるガイドブックに評価された名誉ですので、純粋に嬉しかったですね。
――たとえば、スペシャリテの『カボチャとフォアグラ 濃厚に軽やかに』ですが、シンプルに見えて、細かい技がいろいろ織り込まれていますね。
はい、たぶん見た目には全然わからないでしょうが、実はいろんなテクニックを使っています。フォアグラのテリーヌも、通常のテリーヌ型に詰めたものではないんです。まずは、きれいに掃除して、筋をていねいにとって、それを低温68度ほどで加熱。それをプレスしたものに南イタリアのヴィンコットというブドウを濃縮した甘味料に和えて、甘さと塩気を加えてプレスしています。また、カボチャはフォーム(泡)にしています。
――なるほど。
フォアグラとカボチャだと、どうしても重たい料理という印象になってしまうのですが、あくまで軽やかにするのがテーマです。
だた、僕の中ではあくまでイタリア料理としてこの皿を考えたというストーリーがあります。フォアグラというとフランス料理のイメージが強いと思いますが、もともとは古代ローマで、ガチョウにイチジクをたくさん食べさせて肝臓を肥大させたものを食べていました。これがフォアグラの発祥じゃないかという説があります。北イタリアのロンバルディア州にあるモルターラという町でその生産があったという記述が残っているんですね。
そして、このあたりの地方は、カボチャを使った料理が有名です。だったら、そのフォアグラとカボチャを合わせてみようと思ったんですよね。もちろん味の相性なども合うだろうと考えてカボチャを選んだんですけれども、それを出したら大変好評でずっとつくり続けています。
――そういった歴史へのリスペクトも含めて、あくまでイタリア料理であることに、こだわりがあるんですね。
そもそも、料理人を目指す前の高校時代に、イタリアって国が好きだなっていうぼんやりしたイメージが原点だったとも思います。当時セリエAが世界最強リーグと言われていた時代で、ユベントスのロベルト・バッジオが僕のヒーローだったんです。ドゥカティ、モトグッツィなんかのイタリアのバイクもかっこいいし。アートも食も建築もイタリアの文化ってすごく好きだなぁ、と。ものをつくる人生を送りたいと思っていましたので、そういった発想の人間にとってはとても魅力的な国だったんですよね。
――料理人になってからも、それは変らなかったのですか。
今やっていることは、イタリアが大好きな僕が、自分のクリエイティビティをもってつくり上げる料理だと考えています。イタリアで修行して、学んだことと言えば、向こうの人の発想の自由さなんですね。単純に言えば、自由でもいいんだなっていう。僕は、イタリア人はすごく真面目だと思っているんですね。イタリア人は怠け者だみたいなことを言う人も多いけれど、一緒に働いていたシェフはほんとに真面目で勉強している方ばかりだったんです。なおかつ天才がいると思ったんですね。日本人はミドルレンジ、それなりにできる人が多いと思います。イタリア人はできない人と、天才がいます(笑)。その真面目で天才である人たちの伝統の崩し方は、日本人の僕の現在にも通じています。
――「すべての道はローマに通ず」じゃないですが、どこまで自分の表現を追求しても、あくまでイタリア料理であるわけですね。
そうですね、僕の場合、イタリア料理というものにちゃんと敬意を払わなければいけないというのが真っ先にあります。そう考えることで不自由になるかというと、そうじゃないと思うんです。僕は、クリエイティブな料理をしていきたいのですが、じゃあルールは無しかというと、そうしたらもう何料理でもなくなってしまいます。
――フランス料理の方などには、その肩書きを外す方も少なくありません。
“自分の料理”として成立させるために、ジャンルから自由になりたいということに理解はできます。でも、僕の中では、最終的にイタリア料理だと言いたいんですよね。イタリアが好きで、イタリアからいろいろ得てきましたので。なんて言うんでしょう、“自分の料理”でもなく、単なる“イタリア料理”でもなく、“自分のイタリア料理”を追求して行きたいという感じでしょうか。それは難しいことですが、同時に楽しいことですね。
撮影/玉川 博之 文/杉浦 裕(2016.4.17取材)
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