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片岡 護 氏
片岡 護 氏

笑顔を結ぶパスタ

【リストランテ アルポルト】片岡 護イタリアン

「人生というのは人とのつながり。お客様と接するというのも人のつながり。おいしい料理はそんなつながりを強くしてくれる」。そう語るのは、西麻布【アルポルト】の片岡護シェフ。【つきぢ田村】での修行に始まり、ミラノでのイタリア総領事付コックとして5年、帰国後に【小川軒】、【マリーエ】を経て【アルポルト】を開店した。さまざまな経験を重ねてきたシェフのヨコガオには、人と料理を大切にしてきた経験から生まれる、深みと温かさがあふれていた。

Interview

イタリアンを選んだ理由、それはパスタがあるから。

レストランフロアには、各テーブルへ丁寧に出向き、会話を弾ませる片岡シェフの姿が。「シェフが顔を出すとお客様はとても喜んでくれます。つくり手の顔が見えるとお客様はホッとするんですよ」と、優しく穏やかな口調で語ってくれた。お皿と料理が一体化し、まるでアートのようにきれいな料理。その心温まる料理にお客様が満足してくれることが一番の喜びだ。

片岡シェフのイタリアン料理人としての人生は、パスタなしには語れない。「私の料理はパスタに始まりパスタに終わると思っている」とまでシェフは語る。
シェフにとって忘れられない味。それがパスタだった。それも少年時代に初めて食べたカルボナーラ。当時、カルボナーラというソースは、思いもつかないし食べたことも、聞いたこともない料理。冷めた状態ではあったが、「世の中にはこんなにもおいしいものがあるんだ」と衝撃を受けたという。

高校卒業後、デザイナーを目指して美大に挑戦していた頃、母親の知人であった外交官・金倉英一氏よりミラノ総領事館のコックへの誘いがあった。デザイン研究所の先生からの助言もあり、「デザインと料理は同じ。キャンパスの上に描くかお皿の上に描くかの違いがあるだけで、ものの考え方は同じ」と料理人への道を決心。出発までの3ヶ月という短い期間ではあったが、日本料理店【つきぢ田村】で料理の基本や料理の心得を学んだ。あの日、カルボナーラから受けた感動を、今度は自分が与える側になる。そう決意を固めていた片岡シェフ。「パスタを美味しくつくれるコックになって帰ってこよう」という目標を胸にイタリアへと向かった。

「パスタに感動を受けてから、ずっとパスタで勝負しています。やはりそれが自分の好きな道。イタリア料理をやるというのであれば、やはりパスタにこだわりたい。それが自分の生き方だと思っています」。

「アルポルト(=港にて)」の名に因んだ魚介中心の料理

昼はイタリア料理、夜は日本料理をつくり、仕事の合間を縫ってはいろんなお店へ頻繁に足を運んでいたというイタリア生活。そこで現在につながる大きな出会いがあった。

「よくベニスに行っていておいしいイカ墨のパスタを食べましたけど、私がいたミラノの【アルポルト】というお店もイカ墨のパスタをつくっていて、すごくおいしかったんです」。ミラノにある魚料理の有名店【アルポルト】。店内には新鮮な魚がたくさん並び、そのなかから好きなものを選んでパスタにしてもらったり焼いてもらったりする。仕事の合間に研修に行ってしまうほど、片岡シェフはこのお店が気に入りだった。現在のお店の名前は、この【アルポルト】から頂いたのだという。

イタリア語で「港にて」という意味の【アルポルト】。その名の通り、魚介を中心とした料理を出している。今回は、「イカスミのパスタ 生雲丹添え」をつくっていただいた。イカの身とトマトを入れて煮込んだイカスミをパスタとあえ、濃厚な生雲丹とトマトソースを上から添えた魚介の旨みをたっぷり含んだひと皿。シチリアの方にいくとおいしい雲丹のパスタが食べられるらしいが、それよりもおいしくするのは、雲丹自身がおいしい日本の雲丹を使うことだという。
そして決め手は、1.4mmのフェデリーニという細麺を使うこと。特に「ディ・チェコ」というイタリアのメーカーのものは、麺が伸びずにずっとアルデンテが続くのが魅力的で、これは二十歳の頃からずっと使っているのだそう。

食べることが好きな人、イタリアン初心者でもどんな人でもお店に来てほしい。そして、何よりも、“パスタが好きな人”をシェフは大歓迎する。

シェフの記憶に残るシェフ
~人とのつながりを大切にする~

「人生というのは人とのつながりだと思っている」と語る片岡シェフ。人とのつながりを大切にすることが力になるという。

人生を変えてくれたのは、渡欧前に修行した【つきぢ田村】の先代である田村平治氏と帰国後に修行し直した【小川軒】の社長。人生の方向性を考える上で大きな影響を受け、それによっていまの自分があるのだという。もちろん、料理の世界へ入るきっかけとなった外交官の金倉氏もそう。金倉氏の知人で、【つきぢ田村】や【小川軒】を紹介してくれた当時の味の素の社長・鈴木恭二氏もそう。

「それもみんなつながり。人とのつながりを大切にすることが力になるんです」そう語る片岡シェフの笑顔が素敵だった。

撮影/永友 啓美 文/ヒトサラ編集部

シェフの裏ワザ

「きれいな盛りつけと、食材を美味しく使いきる方法」

料理をおいしく見せるには、盛付けにひと手間かけることが大切だという。しかし、実際、ほんの少しの盛付けだけのために野菜などを一束買わなければならないなら、家庭でつくるには不経済だ。そこで、お皿の盛りつけにも凝り、かつその素材を使いきる方法を教えてもらった。例えば、カラフルな盛付けに赤ピーマンや黄ピーマンを使った場合。余ったピーマンを焼き、冷蔵庫に入れて1日おくと美味しくなるという。また、バジルの葉を使った場合は、余ったものをジェノベーゼのソースにし、2~3日寝かせると美味しくなるのだそうだ。

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