山の上ホテルのてんぷらの味を伝承する職人魂
【てんぷら深町】深町 正男氏日本料理
東京・京橋の大通りから路地を1本入ったところに佇む【てんぷら深町】。ご主人の深町正男さんは、山の上ホテルの和食部門で料理長をつとめ、江戸前てんぷらを極めた料理人。一流のてんぷらにかける熱意と、山の上ホテルの味を忠実に再現し、次代へと継承することに注力するてんぷら職人、深町さんのヨコガオに迫った。
山の上ホテルのてんぷらの味を伝承する職人魂
東京・京橋の大通りから路地を1本入ったところに佇む【てんぷら深町】。ご主人の深町正男さんは、山の上ホテルの和食部門で料理長をつとめ、江戸前てんぷらを極めた料理人。一流のてんぷらにかける熱意と、山の上ホテルの味を忠実に再現し、次代へと継承することに注力するてんぷら職人、深町さんのヨコガオに迫った。
太白胡麻油を使い、うす衣でサクッと仕上げた「てんぷら」。鰹と昆布で丁寧にとった出汁にみりんと醤油を加えた天つゆか、塩でいただく軽く上質な味わいは、【山の上ホテル】のスタイルそのもの。そんな名ホテルの味を継承しているのが、【てんぷら深町】で腕を振るっている、ご主人の深町正男さんだ。
深町さんは栃木県の足利市出身。近所に住んでいた、都内の有名ホテルで働く料理人にあこがれて1967年に18歳で料理人を目指すべく上京。ホテルに入ろうと面接を重ねていたところ、縁あって東京・御茶ノ水にある【山の上ホテル】のてんぷらセクションに入店。和食の基礎を身に着け、その後専門料理であるてんぷらのセクションで修業を重ね、27歳にして和食の料理長に抜擢となる。
その後34年間をかけて同ホテルで研鑽を重ね、52歳を迎えたとき、「職人に定年はない」と生涯を現役で貫くことを決意し独立し、【てんぷら深町】を開店した。
山の上で使う油は太白胡麻油と純正胡麻油とをブレンドし、天つゆは鰹と昆布でとった出汁に、特定銘柄のみりんと醤油を使用してつくる。
「美味しいものをつくるということは、食材を捨てることをいとわず、その最もおいしい部分のみを使うこと。そしてつくられる料理は、素材や内容が誰にでもわかるものでなければならない」というのが山の上ホテル社長の持論だった。一流の食材は2日目になれば二流に、3日目になれば三流になる。一流の店であるからには、一流の食材を使い続けることが必須。また、手を加えすぎて素材本来の持ち味を損なわないよう、料理はシンプルに。その姿勢を深町さんはしっかりと受け継ぎ、築地の長年付き合ってきた業者から仕入れる最高級の食材を値切らずに買い付ける。
その日に仕入れた食材はその日のうちに使いきり、必要以上に手を加えずに仕上げる。34年間守り続けてきた、この伝統を、日々、忠実に再現しているのである。
衣を薄くし、ネタによって揚げる油の温度を変えて、油を捨てながら揚げるなど、これまで培ってきた技術を駆使してつくる、山の上スタイルの江戸前てんぷら。なかでもホテル時代からの人気メニューであり、深町さんの代表作ともいえるのが、『雲丹のてんぷら』だ。
北海道産で粒ぞろい、身の引き締まった雲丹をたっぷりと大葉にのせて包み、表面に薄い衣をつけてカラリと揚げる。なかの雲丹はレアな状態となっており、そのまま何もつけずにいただくと、素材本来の甘みや雲丹の塩気がまろやかな舌触りとともにフワリと広がる。少し塩をつけると、甘みがより引きたち、日本酒が欲しくなる味わいに。素材の仕入れから使い方、種の配合から油の種類、揚げる温度に至るまで、すべてをそのまま、江戸前の山の上スタイルを継承してつくられる、深町のてんぷら。
山の上ホテルのてんぷらの味を愛する多くのファンを魅了し続けるとともに、その技術は、次代を継ぐ息子たちへと伝承されていくに違いない。
山の上ホテルで34年間、てんぷらを始めとする日本料理を学び、腕を磨いて独立した深町さんが最も影響を受けた人物。それは山の上ホテルの初代社長をつとめた、吉田俊男氏だ。
深町さんは、社長から「子供からお年寄りまで、これが何でつくられているものなのかがわかる料理をつくるように」といわれていたという。手を加えすぎて素材の原型がわからなくなってしまう料理はもってのほか。深町さんは素材を極力いじらず、その旨みを引き出す料理をつくるよう、懸命に努力した。特に社長はまかない料理で「味のチェック」をする人で、電話が来るたびにまかない料理をつくり、運んだ。そのことを通じて教えられたことは多かったという。
また、築地で仕入れた食材が使用できるのは仕入れた当日のみ。1日でも古くなれば捨てるよう指示されていた。「一流の食材でつくる一流の料理」という山の上ホテルの美味に対する信念は、深町さんの店で今なお受け継がれている。
撮影/大鶴 倫宣 文/ヒトサラ編集部
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