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福田 憲一 氏
福田 憲一 氏

西麻布の名店で味わう情熱イタリアン

【リストランテ イル・バンビナッチョ】福田 憲一イタリアン

名だたるレストランが集まる東京・西麻布で、イタリアンをリードし続けるシェフがいる。修行先のイタリアで付けられた彼のあだ名は「バンビナッチョ」。いたずらっ子という意味だ。そのあだ名を自分の店につけた【リストランテ イル・バンビナッチョ】の福田氏に宿っていたのは、いたずら心を併せ持つ職人のヨコガオだった。

Interview

記憶に残るイタリアンはこうして生まれる

【イル・バンビナッチョ】の福田シェフと向き合うと、日本の「物づくり職人」と話している感覚に陥る。
「同じメニューでも、素材の産地を変えてみたり、仕込みや味付けを少しずつ変えたりしています。お客さんに見えない部分の作業ですし、気づかれないことのほうが多いと思いますが、それでもいいんです。」

最も美味しい瞬間をここで食べて欲しいという想いがベースとなり、厨房では実にさまざまな試行錯誤と工夫が重ねられている。しかし、あえてどこをどうアレンジしたのかは言わない。裏側の努力は、「美味しい」という声となって自分自身に戻ってくる。それで十分なのだ。

「10年前はキレイな皿に豪華に盛りつけ、味にも驚きやインパクトを求めていた」と話す福田シェフ。当時は、エビにカラメルソースをかけたりするような奇抜なアイディアを料理で表現していた。今思えば、自分中心の料理を作っていたと当時を振り返る。

人びとを驚かせるための料理によって技術は格段に向上したがいつの頃からか、ふと「心」を忘れてしまっている自分に気づいたという。それからは「食べた人に美味しいと喜んでもらいたい」という、料理人を志した当時のシンプルな考えに原点回帰し、ベーシックな技法で料理をつくるようになった。

そうは言っても「いたずらっ子」は健在だ。前菜は華やかに、可愛さや面白さを演出。メインはとにかく豪快に。そしてイタリア人もイタリアを感じるような本格パスタ。イタリアの各地で感動したエッセンスを取り入れながら、時には本格的に、時には遊び心を感じるようなメリハリのきいたフルコースは、訪れた人の心をつかんで離さない。

オープンからの相棒、香ばしくほぐれるホホ肉の炭火焼

『和牛ホホ肉の炭火焼き』は、オープン当時から続く福田シェフの代表料理だ。大好きなホホ肉を1年中美味しく食べる方法を考え、外は香ばしくカリッと、中はふわっとほぐれるような柔らかい食感が生まれる炭火焼きにたどり着いた。ナイフを入れた瞬間に、ほろほろと肉が崩れるほどの柔らかさだ。煮込むよりも、ホホ肉本来の味や香りをあっさりと楽しめる炭火焼きは、【イル・バンビナッチョ】でしか食べられない味。芯までホクホクの里芋、旨味が閉じ込められた玉ねぎは皮ごと石焼きに。豪快かつ温かな味わいは不動の人気を誇っている。

「肉も野菜も本当にいい素材だから、余計な小細工をしなくても味が生きてくる」と胸を張る理由。それはシェフ自ら足を運び、「情熱」を感じた生産者からしか食材を仕入れていないから。いいものが手に入らなかったから今回は送らない、逆に、いいものがあったから送っておいた、なんて急に連絡がくることもあるそう。猟師の友人から届く肉、高級寿司店でも使われる函館のウニ、自家製肥料で丹精込めてつくられた山形や国分寺の野菜。【イル・バンビナッチョ】の料理は、たくさんの情熱でできている。

シェフの記憶に残るシェフ
~尊敬できる仲間~

福田シェフが絶対的な信頼を置いているのは、代官山【ラ・ファーメ】の秋野シェフ。専門学校からイタリアの修行時代まで同じ道を歩んでいる同志だ。

「コック服を着た時だけ料理のスイッチが入る僕とは対照的に(笑)、秋野君は24時間ずっと料理のことを考えているような人なんです」と語る福田シェフ。【ラ・ファーメ】の料理は、秋野シェフの人柄の良さがそのまま表れていて、温かくほっとできる料理だ、と太鼓判を押す。
タイプの違う2人の若き実力派シェフ。西麻布と代官山でそれぞれのイタリアンを楽しみたい。

撮影/関 尚道 文/ヒトサラ編集部

シェフの裏ワザ

「クリームソースパスタに……」

食べていくうちに、徐々に重く感じてしまうのがクリームソースのパスタ。「サーモンやトマトで作るクリームパスタは、ソースの仕上げにレモンを絞るといいですよ」という福田シェフのアドバイス。レモンを絞りすぎるとクリームが分離してしまうので、1人前で約3滴が目安だそう。気づかない程度の量だが、これでクリームソースが軽やかな味わいになり、最後までさっぱりと食べられる。

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