食を通じて楽しさを届けたい。出汁にこだわる和の料理人
【日本料理 晴山】山本 晴彦氏日本料理
閑静な住宅街の地下1階に、人気の隠れ家【日本料理 晴山】がある。岐阜の名店【日本料理 たか田八祥】にて修業を積み、31歳という若さで独立。今でこそミシュラン獲得店として連日盛況を即しているが、開店当初は客が入らず周囲に弁当を配るなどして宣伝活動をしたこともあったという。日本料理の礎である出汁にこだわり、穏やかな口調の先に芯の強さを感じさせる和の職人、山本晴彦さんの凛としたヨコガオに迫った。
食を通じて楽しさを届けたい。出汁にこだわる和の料理人
閑静な住宅街の地下1階に、人気の隠れ家【日本料理 晴山】がある。岐阜の名店【日本料理 たか田八祥】にて修業を積み、31歳という若さで独立。今でこそミシュラン獲得店として連日盛況を即しているが、開店当初は客が入らず周囲に弁当を配るなどして宣伝活動をしたこともあったという。日本料理の礎である出汁にこだわり、穏やかな口調の先に芯の強さを感じさせる和の職人、山本晴彦さんの凛としたヨコガオに迫った。
東京・三田にある人気の隠れ家【日本料理
晴山】。白と茶を基調とした落ち着いた空間の中央にあるカウンターに立つのはご主人である山本晴彦さんだ。山本さんが料理人を決意したのは14歳の時。本を見てつくった茄子の料理を、両親が「おいしい」と言ってくれた時に感じた「嬉しさ」がきっかけだった。
その後、エコール辻東京調理師専門学校に特別講師として来校した高田晴之氏の講義を受け、独自のセンスと、その人柄に魅了されて、卒業後は高田氏の営む岐阜の【日本料理
たか田八祥】に入店。「31歳で独立し、東京に店を持つ」ことを目標に研鑽を重ね、25歳で【支店わかみや八祥】の店長、さらに29歳で【支店こがね八祥】の店長をつとめる。
そして宣言通り31歳で東京へ進出、【日本料理
晴山】を開店する。今でこそ、ミシュラン獲得店としても知られる有名店だが、すべてが順風満帆だったわけではない。開店して最初の半年は客が入らず、店を知ってもらうために弁当を近所に配り歩いたこともある。こうした地道な努力を続けることで、少しずつ、着実にファンを増やしていったのである。
人知れず苦労を重ねながらも、確実にファンを獲得していった山本さん。基本を忠実におさえつつも、独自のエッセンスを加えてつくられる、個性豊かな日本料理。その中でも基本ともいうべき出汁の取り方には、特に強いこだわりがある。
使用しているのは、昆布にまぐろとかつおの削り節。一般的なうす削りの削り節は、透明感のある上品な仕上がりにはなるが、アクセントが弱く、また厚削りの削り節は雑味やえぐみが出てしまうため、築地で仕入れる際に削る厚さの調整をしてもらっている。また、出汁は気候や湿度によって、火の入れ方や昆布のつけ置き時間、削り節の分量やブレンド具合などがすべて異なる。既存のブレンド節を使うと、分量や配合の調整を行うことが難しいため、【晴山】では既存のブレンド節は使用せず、2種の削り節を自らの感覚で使い分けようにしている。
細心の注意を払い、手間ひまをかけて丁寧にとった、かなめの出汁。その持ち味を存分に生かして生み出されたのが、山本さんの代表料理ともいえる、『季節のお椀』だ。
この日に使用した食材のメインは、旬の旨みが詰まった「甘鯛」と「聖護院大根」。甘鯛は、炭火で焼くことで香ばしさを加え、柔らかく炊いた聖護院大根の上にのせて上から出汁をかける。そして仕上げに季節の香り「柚子」が添えてある。
香りと旨みのバランスが最もよい状態で提供するため、料理を食べる時間から逆算し、出汁をひく(調理する)時間や、提供のタイミングを加味して丁寧に仕上げていく。見ための美しさと味わいの良さ、蓋をあけたときの驚きと感動が一つの椀に閉じ込められた椀からは、山本さんの料理人としての心意気が伺える。
内側に富士の蒔絵が描かれた塗りの器で出される季節の椀。蓋をあけると、白い湯気とともに柚子の香りが立ちのぼり、鯛と汁を少しずつ味わえば、出汁の澄んだ風味と、鯛の香ばしさが口の中に静かに広がる。その日に仕入れた食材と、季節の香り、出汁の深い味わいが堪能できる逸品だ。
「自分にとって料理は人生そのもの」と語る山本さん。常に初心を忘れず、お客様に対する感謝の心や人との繋がりを大切に、日々精進を続けている。
栃木県出身の山本さんが、後を追いかけてでも修業をしたいと思った料理人に出会ったのは、エコール辻調理師専門学校へ通っていたころ、特別講義を受けたときのこと。名だたる料理人が講演を行うなかで、それほど著名ではないながら、料理に対する考え方や人柄の良さが魅力的に映った人。それが【たか田八祥】の主人、高田晴之さんだ。
当時学生だった山本さんは、その時に「この人の下で修業がしたい」と入店を決意。しかしながら、修業に入って一年目に、あまりの厳しさから逃げ出したことがある。友人宅で何日か過ごして実家に戻ると、高田さんが自分の実家で帰りを待っていた。先回りして迎えに来てくれたことに感動した山本さんは、覚悟を決めて岐阜に戻り、高田さんのそばで料理人としての修業を重ねつつ、休日は器をみたり食べ歩きをしたりと感性を磨いた。
自分の後を追いかけてきてくれた気持ちや思い、そして「店を訪れたお客様に、常に刺激や驚き、楽しさを届けたい」と料理一品一品に工夫を凝らす、ストイックなまでの料理に対する姿勢は、今の山本さんの礎となっているといっても過言ではない。
撮影/永友 啓美 文/ヒトサラ編集部
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