
柔軟な姿勢で自在に変化するイタリア料理
【リストランテ ヤギ】八木 康介氏イタリアン
東京・代官山の旧山手通り沿いの閑静なビルの地下1階にある、隠れ家イタリアン【リストランテ ヤギ】。フィレンツェの三つ星レストラン【エノテカ・ピンキオーリ】ほかで修業を積んだ八木康介シェフは、吟味した日本の食材を駆使して生み出す料理をイタリアにいる感覚で味わってもらうことを旨としている。お客様の反応に応じて柔軟に自己のスタイルを変え、自在に進化を遂げてきた、八木シェフのヨコガオに迫った。
柔軟な姿勢で自在に変化するイタリア料理
東京・代官山の旧山手通り沿いの閑静なビルの地下1階にある、隠れ家イタリアン【リストランテ ヤギ】。フィレンツェの三つ星レストラン【エノテカ・ピンキオーリ】ほかで修業を積んだ八木康介シェフは、吟味した日本の食材を駆使して生み出す料理をイタリアにいる感覚で味わってもらうことを旨としている。お客様の反応に応じて柔軟に自己のスタイルを変え、自在に進化を遂げてきた、八木シェフのヨコガオに迫った。
その日に仕入れた厳選食材のみを使用してつくる、シェフおまかせのコース料理が味わえるイタリアン。ゲストに手渡されるメニューカードには、食材名しか記されていない。一定期間ごとに食材や料理を決めるよりも、その日に入る食材で料理を考えた方が、より一層「旬」や「美味」を感じる料理が味わえるからだ。ゲストは予約の際に苦手な食材や好みは伝えるものの、調理法はすべてお任せとなっている。
オーナーの八木康介シェフは、外神田【ラ・ステラ】他で料理の基礎を学び、渡伊。憧れ続けたフィレンツェの三ツ星レストラン【エノテカ・ピンキオーリ】ほか、イタリア各地で5年間の修業を積み、2001年に帰国。当初、間もないころは、「イタリアらしさ」にこだわり、北イタリアのトスカーナやヴェネト州の料理を本場の味で提供したいと考えていたが、お客様が喜ぶ顔や反応を見ているうちに考えが変わる。「もっと自由な発想、自分なりの解釈を取り入れた料理をつくってもよいのではないか」と。それを象徴しているのが、スペシャリテ『うにとフルーツトマトの冷製スパゲッティーニ』だ。
日本では定着しているものの、伝統的なイタリア料理ではない「冷製パスタ」。この原型は、伝統的なイタリア料理に新風を吹き込み、新たな食文化を築いてきたイタリア料理の巨匠、「グアルティエロ・マルケージ氏」が1990年に生み出した、『キャビアの冷製カッペリーニ』だ。
これはマルケージ氏が来日した際に食べた、ざる蕎麦からヒントを得てつくったもの。当初、八木シェフは冷製スパゲッティーニをつくることに自問を繰り返していたが、一方では自分も東京イタリアンの新しい定番料理をつくっていきたいという思いもあり、「日本の食材でつくる東京のイタリアン」と解釈した。
都内有名料理店のシェフたちが夏になるとつくる「冷製パスタ」は、そのほとんどが「カッペリーニ」(別名:天使の髪の毛)と呼ばれる極細パスタを使用しているが、このソースに合わせる麺は、それよりも太い方がよいだろうと考え、スパゲティーニを使うことにした。
旬の美味しいフルーツトマトのヘタを取り、丸ごとをミキサーにかけて裏ごして、たっぷりのオリーブオイルを加え滑らかにしておく。皿にトマトソースをひき、その上にうにのソースを絡めたスパゲッティーニを盛り付ける。
ユニークなのは、ボールに氷を入れ、その上にソースを入れたボールをのせて、冷やしながら和えていく独特のスタイル。通常はゆで上がったパスタを冷水で洗い、水気をきってソースを混ぜるが、【リストランテヤギ】では、茹でたてのアツアツをダイレクトにボールに入れて調理する。スパゲティは茹であがりの表面についた粉気に旨みがあるため、流さずに絡めることでその持ち味を生かしつつソースをなじませる。
隠し味は魚醤と柚子の果汁。鼻に抜ける柚子の風味と、サッパリとしながらもコクのある、うにとトマトの滑らかで濃厚なソースがパスタに絡みつき、いつまでも口の中に余韻が残る味わいだ。
北イタリアの料理から始まり、2011年に集大成として【リストランテヤギ】を開店して2年。お客様の反応に応じて、これからもそのスタイルは柔軟に変化していくことだろう。
八木シェフが料理人として働いてきたなかで、最も影響を与えたのは、イタリア修業時代にエノテカ・ピンキオーリでともに働いていた、ITALO
BASSI(イタロ・バッシ)シェフ。彼が仕事場にいるだけで、ピンと張りつめた緊張感が漂っていたという。八木シェフにとっては、それが心地よく、またいい意味で刺激的だった。
入店後1、2週間で各セクションを周り、パスタのセクションに入った時、最初の数週間は、つきっきりでバッシシェフから丁寧な指導を受けた。特に「ラビオリ」の指導は厳しく、少しでも形が変わると捨てられたが、それを1か月繰り返したある日、突然シェフから「今日から一人でやれ」と言われ、それ以降は一切口を出されなくなった。
八木シェフは「三ツ星シェフ」を背負うことのプレッシャーや、重圧を感じたという。この時に経験したことや身に着けたキャリアが、今の自分の大きな糧となっている。
撮影/永友 啓美 文/ヒトサラ編集部
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