

美しさを追求した和の野菜料理
【六雁(ムツカリ)】秋山 能久氏日本料理
フロアに足を踏み入れると誰もがあっと声をあげる、【六雁】のオープンキッチン。この「舞台」に立つ総料理長、秋山能久氏のヨコガオには常にピンと張った空気が漂っている。包丁を持つ仕草、皿を持つ姿、スタッフとの会話まで、「見られている」という緊張感に包まれながら、美しい野菜料理の頂点を目指す。「この一瞬を勝負する」という【六雁】の気概を見た。
美しさを追求した和の野菜料理
フロアに足を踏み入れると誰もがあっと声をあげる、【六雁】のオープンキッチン。この「舞台」に立つ総料理長、秋山能久氏のヨコガオには常にピンと張った空気が漂っている。包丁を持つ仕草、皿を持つ姿、スタッフとの会話まで、「見られている」という緊張感に包まれながら、美しい野菜料理の頂点を目指す。「この一瞬を勝負する」という【六雁】の気概を見た。
無駄なものはそぎ落とし、凝りすぎない。あからさまに答えは見せず、残り香でほのめかす。マイナスの美学ともいわれるこのような江戸の「粋」を、【六雁】は料理ともてなしで表現している。和食の伝統を軸にしながらフレンチの要素をサッと香らせるような、軽快で面白みのある店だ。
総料理長の秋山氏は10年間割烹で修業したのち、視野を広げるために精進料理の世界へ。そこで2年間ストイックに野菜と向き合い、野菜の美味しさと表現の可能性に魅了されたという。さらに自由な発想力に触れるため積極的に海外にも出向いていたが、外から眺めることで日本食材の素晴らしさにあらためて気付いたそうだ。【六雁】を任されてからは自ら全国を訪ね歩き、さまざまな食材に出会ってきた。「まだ知られていない日本の美味しさや生産者の情熱を、このカウンターから発信していきたい」と語る通り、オープンキッチンとカウンターというスタイルには並々ならぬこだわりがある。
店内は6階のメインフロア、7階の半個室、8階の特別室があるが、最も【六雁】らしさを感じられるのはフロアの大半がオープンキッチンになり、料理人たちの熱気と躍動感がダイレクトに伝わってくる6階だ。まな板から洗い場まですべてが見えるこの空間は、いわば【六雁】の料理人たちによる舞台。ひとつひとつの所作や返事にも料理人としての美しさを追求している。「見られている」という緊張感に包まれながらも「演じている」ことを悟られないように振る舞う、そんな駆け引きも【六雁】が目指す粋というもの。人に見せて人を魅せる、こんなカウンターにはなかなか出会えない。
毎日行う1時間のミーティングは「今夜、【六雁】を選んでくださったお客様に小粋な時間を過ごしてほしい」という想いの表れで、全員で前日の振り返りと、当日の予約客の情報共有を入念に行っている。前回訪れたゲストなら、好きなお酒、苦手な食べ物、食べるスピードなどを把握しておくことで、より満足のいくメニューの提案ができ、ベストなタイミングで料理の提供が可能となるのだ。決して安いわけではないこの店が多くの支持を得ている理由は、このような舞台裏にもある。
秋山氏の代表料理である「季節野菜の煮こごり」は、定番の野菜と、月替りの野菜の2つの煮こごりが並ぶ。使われている野菜はそれぞれ10種類ずつ。この一皿で実に20種類もの野菜があるということに驚かされる。これだけの野菜が入りながらも味がぶつかることなく、それぞれの野菜の食感と風味が優しく重なってゆく渾身の一皿だ。
【六雁】の料理は、最も美しく見せるために切り口の断面まで計算しながら野菜を配置し、盛り付けている。さらに器は深さや奥行も1ミリ単位で希望を伝え、デザイナーにオリジナルのデザインをしてもらうほどのこだわりようだ。掛け軸や万華鏡に見立てられ盛り付けをほどこされた料理は、和食という枠を超え、季節を感じるアート作品のようでもある。
そのまま食べて美味しいのは当たり前。いかに野菜の美味しさを引き出して、食べた人に感動を与えられるか、【六雁】はその一瞬に勝負をかけている。
茨城出身の秋山氏が今でも東京のおやじさんと慕うのは、東京に出てきてから10年間修業を重ねた学芸大学【割烹すずき】の鈴木好次氏。【割烹すずき】で学んだ「型にはまらない和食」は、秋山氏の料理に大きな影響を与えた。和食の枠を超える柔軟な発想でお客さんを楽しませるエンターテイメント性は、ここでの研鑽が土台となっているそう。
割烹すずきでの修業時代に「一度は銀座で働いてみなさい」と言われたこの地で、秋山氏はさらなる高みを目指している。
撮影/大鶴 倫宣 文/ヒトサラ編集部
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