痺れる辛さ旨辛中華
唐辛子の旬は7~9月。唐辛子に含まれるカプサイシンは発汗を促すという健康効果もあるので、夏バテ解消にも効果的。今回は辛くて旨い中華料理の中から、『麻婆豆腐』、『火鍋』、『家郷鶏(ジャーシャージ)』の3品をご紹介します。
唐辛子の旬は7~9月。唐辛子に含まれるカプサイシンは発汗を促すという健康効果もあるので、夏バテ解消にも効果的。今回は辛くて旨い中華料理の中から、『麻婆豆腐』、『火鍋』、『家郷鶏(ジャーシャージ)』の3品をご紹介します。
【神楽坂芝蘭】東京・神楽坂
辛い料理は、辛さと味わいを両立できるかが争点。逃げ場のない辛さに覆われて旨味が感じられない料理もありますが、そんな杞憂を払しょくするのが【神楽坂芝蘭】のめくるめく四川料理たち。激辛好きは勿論、辛いものが得意ではない人をも虜にしています。
今回紹介する『鴛鴦(おしどり)火鍋』は、多様な唐辛子を使い分けた豊かな辛味が味わえる麻辣スープが肝。「辛い料理は辛さの中にコクと旨みがないと、痛いだけになってしまう」と話すのは、オーナーシェフの渡辺嘉朗氏。
麻辣スープには本場から仕入れた約13種類の香辛料をブレンド。この中で、『鴛鴦火鍋』でしか味わえない格別な風味を演出しているのが、コロンと真ん丸い「朝天唐辛子」を使用した「ズーバージャン」です。
すっきりとした強い辛味と、食欲をそそる風味が特徴。「朝天唐辛子」の種と芯を取り除いて炊き、ミンチにかけます。労力と手間がかかるため、四川省でも使用している店舗は稀有。「ズーバージャン」を使うことで、「塩味を増やさずに、甘みと香りと辛さを強め、コクと旨みを付与することができます」。
香辛料を炒めてスパイシーな香りをスープに移し、豆板醤を溶いたら、麻辣スープが完成。スープの辛さを纏った肉や野菜を噛みしめると、辛さの先には確かな旨さが広がります。しっかりと味付けをし、コクと旨さを確立させるからこそ、ピリッとした辛さの奥にある旨味が鼻孔を抜けていくのです。
四川では暑い夏にこそ汗を流しながら『火鍋』を食べるのだそう。この夏は、現地の熱気が感じられる一軒で『火鍋』を囲んでみましょうか。
【四川料理 趙楊】東京・新橋
辛さを抑えた甘口のものから激辛と呼ばれるものまで、辛さの幅を持ちながら日本に深く浸透している『麻婆豆腐』。“旨さ”と“辛さ”を兼ね備えた四川料理の代表格です。 『麻婆豆腐』をはじめとした四川料理の味を日本の料理人たちに伝承した、この道では言わずと知れた巨匠が、【四川料理 趙楊】の趙楊(ちょうよう)氏。若くして本場・四川省成都にある【金牛賓館】の国賓宴会料理長を務めたキャリアの持ち主です。
定番の『麻婆豆腐』は、1999年のオープン当初には日本人向けに辛さを抑えた味付けにアレンジしたそうですが、お客さんの声を受け、ほどなく本場の味に回帰。料理人として培った経験値で香辛料のバランスを見極め、本場が認めた最高の技を施しています。
日本では花椒を抜いて辛さを抑えた味付けも市民権を得ていますが、「唐辛子の辛さである“辣味”と、花椒の痺れる辛さである“麻味”が2つ揃ってはじめて本場の味わいです」と趙楊氏。そんな痺れる辛さの中に、ふんわりと広がる自家製豆腐や肉の甘さを味わうのがこの料理の愉しみ方です。
さらに、味の決め手となるのが「花椒」と「山椒」。いずれも四川から取り寄せた最高級品を使用。赤はまろやかな辛さ、青は激しい刺激を与え、実の青みが豊かな香りを演出します。「2種類の山椒を組み合わせることで味に奥行きを出し、深みを与えます。刺激の中に旨みが広がるんです」。
ともすれば辛さだけが強調されがちな四川料理ですが、本来は香りを楽しむ料理。四川風『麻婆豆腐』の痺れる辛さの中に漂う痛快な香りも味わってみてください。
【四川家庭料理 珍々】東京・小岩
小岩の住宅街に佇む【四川家庭料理 珍々】は、唐辛子や香辛料を駆使した四川料理をベースに、重慶市出身の黄革さんが考案した家庭料理が味わえるお店です。2001年にオープンしてから数年はメニューを設けず、その日仕入れた食材でつくる“おまかせ”のみで営業していたそう。
この隠れ家食堂で、常連客を中心に好評を得ているのが、山梨県から仕入れた無農薬野菜を使った期間限定のメニュー。たとえば7月から夏の間だけ提供しているのは、田舎風蒸し鶏に旬の青唐辛子をかけた『家郷鶏(ジャーシャージ)』という料理です。
「うちの料理は大体オリジナルです。レシピを考えるのが楽しい」と笑う黄革さんが、青唐辛子の風味を活かすために味を想像してレシピを考えたという、ここでしか味わえない一皿。
塩味で茹でた鶏もも肉の上に乗せるのは、みじん切りにした生の青唐辛子。赤く完熟させる前に収穫したものが青唐辛子です。赤唐辛子が加熱すると辛さが増すのに対して、加熱すると辛さが和らぎます。
そのため、生でふんだんに乗せて辛さと香りを殺さず、且つ薬味のような役割も果たしています。鶏もも肉、青唐辛子はいずれも塩味をつけて全体を統一。その上に粒山椒を散らし、油を回しかけたら出来上がりです。
この料理は「青唐辛子に和える塩のバランスと、熱い油をかける時の温度が重要」とのこと。ピリっとした山椒の痺れる辛さ、ヒリヒリする旬の青唐辛子の刺激的な辛さ。ベクトルの異なるふたつの辛さが奏でる、爽やかな夏の味に出会えます。
PICK UP
パプリカやししとうなどの唐辛子類が旬を迎え、ビールのお供、枝豆も欠かせません。トビウオやスズキ、シマアジも収穫期。
秋の味覚の王様、松茸が店頭に並びます。サンマの水揚げがはじまり、たっぷりと脂がのった戻り鰹の季節です。
収穫の秋、里芋類やカボチャなどがおいしくなる季節です。サンマに脂がのり、イワシやニシン、イカがなども旬を迎えます。
ズワイガニ漁、サクラエビの秋漁、さらに山の幸ジビエの狩猟が解禁。サツマイモやカボチャなどの甘味もピークです。
鍋に最適な冬野菜の白菜や大根、春菊がおいしい季節です。海の幸もカキやホタテが旬を迎え、魚は脂がのって旨味が増します。
年が明け、旬を迎える魚が一年で最も多いのがこの時期。アマダイやアカムツ、イカやアカガイが出まわります。
ホタテやタラ、あんこうなど鍋に入れたい魚が豊富。蕾菜やアスパラ菜などが花芽を伸ばし、春の訪れはすぐそこです。
富山のホタルイカ漁が解禁。あさりや蛤などもおいしく、潮干狩りのシーズンを迎えます。山菜が出始めるのもこの頃。
アスパラガスやたけのこが出まわり、新タマネギや新ジャガイモの収穫も始まります。真鯛や鰆も獲れ、春到来です。
初鰹が最盛期を迎えます。野菜は、絹さややスナップエンドウなどの豆類がおいしい季節となります。
キュウリやピーマン、空芯菜やつる紫などの夏野菜が出始めます。海の幸は鮎やキス、トビウオ、マアジが旬を迎えます。
スズキやトビウオ、真アジに加え、鮎やハモも旬真っ盛り。茄子やズッキーニ、ゴーヤーなどの夏野菜が食卓を彩ります。