茶の収穫時期は春から秋にかけての4回行われる。なかでも、柔らかな新芽でつくられる新茶は「一番茶」と呼ばれ、高級とされている。茶摘み歌として有名な「夏も近づく八十八夜」に出てくる「八十八」とは、立春を起算日として88日め(立春の翌日から87日後)のことをさしているのである。 この時期は、季節の移り変わりを示すために設けられた「雑節」の頃とも言われており、ちょうどその頃に茶摘みが行われるため、「八十八夜」で初夏を表しているとされているのだ。
そんな時期に摘まれる新茶は、やさしい緑色。甘みや旨みも多く含まれ、香りも高いなど、まさに一番茶と呼ぶにふさわしい。一番茶は主に「煎茶」に使われることが多く、入れる温度も80~90度と決められている。ほかにも摘む茶葉の時期や手の入れ方によって、煎茶と番茶を炒ってつくる香ばしいほうじ茶や、番茶など、さまざまな種類の日本茶がある。
日本茶は日本人の愛飲料であるほか、最近では菓子などにも使われるようになったが、それ以上になじみ深いのは「茶漬け」。日本庶民の食文化に欠かせない伝統的な食べ物だが、合わせる茶にはいろいろな種類の茶葉が使われている。たとえば鰻茶漬けには香ばしく味の濃い番茶、漬物や佃煮などを添えてサラサラと食べるときには煎茶や荒茶、玄米茶など。
割烹や料亭などでは本来の「茶」を使用したものではなく、出汁をかけて味わう贅沢な茶漬けが増えた。そうしたなかでも、敢えて茶を使用している、こだわりの鯛茶漬けが味わえる料亭がある。それが銀座で12年、昼は予約で埋まってしまうという【銀座 あさみ】だ。
ここの名物は料亭茶漬けの代表格ともいえる『鯛茶漬け』。一般的には、まず刺身で味わい、次に「茶漬け」として楽しむ。鯛は淡泊な味であることから、胡麻だれにしてあることが多い。【銀座 あさみ】で味わう鯛茶漬けも胡麻ダレだが、一般的なそれとは異なり、胡麻だれにくるみとカシューナッツを加えて香ばしさや風味がより際立つよう工夫してある。
茶には160余年の歴史を持つ老舗【築地丸山 寿月堂】で専用にブレンドした深蒸し茶を使用。深蒸し茶は熱湯でもお茶が良く出ること、またより香りが際立つため、茶漬けには最適なのだそうだ。
まずは鯛をたっぷりの胡麻だれとともに刺身でいただく。香ばしいゴマとナッツの風味が食をそそり、これだけでもご飯が進む逸品。半分ほどいただいたところで、今度は鯛を、胡麻だれごと豪快にご飯のうえにのせ、深蒸し茶をまわしかけていただく。
茶葉の香りとゴマの風味、ナッツのコクと香ばしさが三位一体となり、口のなかで一気にほどけて広がる至福のひととき。ほかにはない、独自の鯛茶漬けをつくろうと思いたち、試行錯誤を続けたという胡麻だれは、おでんの汁やそばのかえしのように、注ぎ足して使うため、旨み成分がタレにしっかりと染み込んでおり、味に一層の奥深さを加えている。
新橋・銀座の料亭界隈で激戦とうたわれる鯛茶漬け。気をてらわず、しかし変化のある味を追求していくご主人、浅見さんの顕著な姿勢が、シンプルな料理から伝わってくる味わいだ。
『鯛の白子の塩焼き』(コースのなかの一品)
食通の常連が好んで注文する、人気の一品。鯛の白子を串にさし、シンプルに焼きあげ、すだちをかけていただく。滑らかで濃厚な味わいは、日本酒にもよく合う。
『蒸しアワビ』 (コースのなかの一品)
アワビの身を殻ごと蒸した素朴ながら贅沢な一品。本来の塩気を生かすため、調味料は一切不使用。磯の香りと自然の滋味を存分に味わえるツウ好みの料理だ。
銀座 あさみ 【東京・銀座】
- 【営業時間】
- 月曜~金曜 11:30~15:00(L.O 14:00)
- 17:00~23:00(L.O 21:30)
- 【定休日】
- 日・祝祭日
- 【TEL】
- 03-5565-1606
銀座の裏通りで12年の間、暖簾を守りつづけてきた【銀座 あさみ】。隠れ家的な場所にひっそりたたずむお店ながら、新鮮な旬の素材を仕入れることに、かなりのこだわりを持つ店主の浅見さん。彼のつくったこだわりの『鯛茶漬け』をめざし、ランチタイムから、予約客であふれる店には、連日多くのお客様が訪れる。毎日築地で買い付けたり、産直で仕入れた厳選食材をつかって黙々と仕事をこなし、「不言実行」を唱える浅見さんの姿勢が、店づくりや料理に反映されているように感じた。
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▲深蒸し茶と胡麻だれの、香ばしき風味「鯛茶漬け」~銀座 あさみ~ ページトップへ
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