至福の逸品~dish stories~ vol.09

出汁香る、極上卵の親子丼~赤坂 ざんまい~

丼のフタを開けた瞬間に、脳を直撃するような出汁の良い香りが広がった。オレンジに近い色味の卵と、弾力のあるジューシーな地鶏が輝いて見える。口に含むと、出汁に使われているカツオと煮干しのしっかりしたベースの味に、スッキリとした甘み。[赤坂ざんまい]の親子丼は、「さっぱり」のなかに「濃厚」を感じる、絶妙な味わいを楽しむことができる。

赤坂 ざんまい の店舗情報を見る

撮影/中辻 隆史

目指すのは、脳に響く親子丼

「出汁の香りのきいた親子丼をつくれないか」。
香りの強い濃い出汁にこだわった料理を得意とする料理長に、店長からそう提案があったのが5年ほど前のこと。「鶏屋だからこそ、他とは違った親子丼を作りたい」という、強い思いからの提案だったそうだ。
店長の思い描く“出汁の香り”と、料理長が常日頃気にしていたという“味の均一化”に重点をおき、いつ来ても変わらぬ、味覚とともに嗅覚を刺激する「記憶に残る親子丼」を目指して、試行錯誤の日々が始まった。

「お店を始めた13年前とは、割り下へのこだわり方が全然違うんですよ。割り下に使う出汁、合わせる調味料が一番の違いかな。今は、シンプルだけど、内容が濃い。ざんまいの親子丼の命は、割り下ですね。」と話す料理長・楢木野(ならぎの)氏。
割り下に使う出汁には、スッキリとした鰹出汁だけでなく、煮干しからとったコクのある力強い魚の風味を感じる出汁を加えることで、合わせる調味料に負けない香りの強い濃い出汁を作り上げる。[赤坂ざんまい]の親子丼を開けて始めに感じるのが、卵でも地鶏でもなく、この出汁の強い香りなのだ。
そして、出汁を引き立てる素材として、合わせる調味料にもこだわり研究を重ねたそうだ。割り下というと、醤油へのこだわりを想像するが、甘みの決め手となるみりんと砂糖に、強いこだわりを持っている。何種類ものなかから試飲して選んだというみりんは、そのままで飲んでも十分旨い上品な味わいの「福来純 三年熟成本みりん」。そして、料理長が隠し味と明かしてくれた砂糖は、鹿児島県のサトウキビを使ったミネラル豊富な粗糖「土の日記」を使っている。どちらも、作り込まれた重い甘さではなく、スッキリとしており、素材そのもののコクのある甘みを表現できる。

香りの強い濃い出汁と、素材の甘みがマッチした割り下を要として作られる[赤坂ざんまい]の親子丼は、記憶に鮮明に残る「香り高さ」と「コクのある味わい」を魅力に持ち、半年の歳月を経て生まれ変わったのだ。

ざんまいの親子丼に必要不可欠な、厳選素材3品/ふわふわとろとろの卵の中には、大ぶりにカットされた弾力のある地鶏がふんだんに

訪れる者を魅了する、卵の輝き

親子丼には欠かせない卵にも、旬があるのをご存じだろうか。冬から春にかけての卵は、栄養価も高く、味も濃い。産卵の量が減り、卵が母体にいる期間が長くなるからだと言われている。そう、今の季節はまさに卵の“旬”なのだ。

[赤坂ざんまい]で使用する卵は、開店当初から使い続けているという「日本一こだわり卵」。卵臭さがなく、黄身が驚くほど鮮やかなオレンジ色で甘みも強い。味がしっかりしているため、割り下との相性も良いのだ。

「親子丼は、レベルの高い料理ですよ。はっきり言って難しいです。」 そう料理長が話す理由が、この卵の扱い方に隠されていた。 卵は、混ぜすぎるとコシがなくなり、ふわふわになりすぎてしまう。コシを抜かないよう混ぜ合わせ、沸騰して勢いのある所から丁寧に鍋に注ぎ入れる。それからは、ほとんど鍋の中をさわらないという。鍋をゆすって、卵の揺れ方で仕上がりを判断し、火の入りの悪い部分だけスプーンですくって調整するのだ。 表面がほどよく揺れる絶妙なタイミングで火からおろされた卵は、地鶏の旨みが染み出た命の割り下を吸い、黄金に輝いている。その洗練された確かな手捌きに「さほど語ることはしていない」と言う料理長の確かな技を感じた。

ランチではメインとして。夜は数々の絶品料理と、季節ごとに仕入れられる日本酒を楽しんだ後の〆として、数人でシェアしていただくのが[赤坂ざんまい]の愛情たっぷりの親子丼の楽しみ方だ。

卵を入れる瞬間も真剣そのものランチには3つ、夜は2つの卵を使用する贅沢ぶりだ/絶妙な加減でとかれた卵が見事に出汁を吸い、芸術的な艶を生み出す

常連客が勧める逸品 ~比内地鶏のタタキ~

常連客が勧める逸品 ~シューター~

極上ももの焼きたてタタキ 1,890円
焼鳥担当の板前が焼き上げる比内地鶏のタタキは、弾力のあるぷりぷりの歯ごたえと、塩気とのバランスが美味。ドーム状にして焼き上げることで、火の通りすぎない絶品の味を楽しむことができる。

[赤坂 ざんまい]の料理メニューを見る

親子丼を引き立てる旨い酒 ~日本酒~

牡蠣を引き立てる旨い酒 ~日本酒・果実酒~

(上段左から)「600K 1,890円」
「山桜桃 1,000円」「楯野川 1,000円」
「伝 波瀬正吉 1,980円」
(下段手前から)「乾坤一 580円」
「獺祭 1,100円」

数件の酒屋と蔵から仕入れている日本酒は、常時60種ほどを用意。無濾過なのに重すぎず、旨みと香りのバランスが良い獺祭が店長のオススメ。

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このページで紹介したお店

代々木 DAIDEN

赤坂 ざんまい 【赤坂見附】

【営業時間】
ランチ <平日> 11:30~14:00 (L.O.13:30)
 
ディナー <平日> 17:30~00:00 (L.O.23:00) / <土曜> 17:30~22:30(L.O.22:00)
【定休日】
日・祝
【TEL】
03-5549-4718

※ディナー時、親子丼のみのご利用はご遠慮ください。

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編集後記

取材に伺ったのは、土曜の開店前。お店では、店長と女将さん、料理長、板前さんが、開店に向けての準備をされていました。料理の仕込みに素材の発注、お掃除や予約の確認など、私が親子丼をいただきながら拝見しただけでも様々な作業をしていらっしゃいました。それぞれの役割をしっかりこなし、お互いを信頼しあっている空気感。みなさんのチームワークの良さを感じます。どんな忙しい営業中でも、きっとスマートな接客をされるんだろうなと容易に想像がつく光景でした。[赤坂ざんまい]の人気の秘訣は、そんなスタッフの人柄にもあるのかもしれません。
お座敷で、料理や会話をゆっくり楽しむのはもちろん、スタッフを身近に感じる木の温もりあふれるカウンター席で、料理長や板前さんが料理をする姿を見ながら、ひとりでしっぽり…というのもまた違った「赤坂ざんまい」を堪能できるのではないでしょうか。

編集担当:A.S

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