秋の香りを運ぶ松茸
秋になると無性に食べたくなる食材「松茸」。魅惑の香り、クセになる食感。時にメインで、またある時は脇役となって他を生かすこの秋を代表する食材を堪能できる厳選の3店をご紹介いたします。
秋になると無性に食べたくなる食材「松茸」。魅惑の香り、クセになる食感。時にメインで、またある時は脇役となって他を生かすこの秋を代表する食材を堪能できる厳選の3店をご紹介いたします。
【銀座 和久多】東京・銀座
食材が旨味を湛える最盛期を「旬」と呼ぶのに対して、出始め、初物の頃が「走り」、過ぎ去る旬を惜しむタイミングが「名残」。食べ頃の頂点を是とする考え方はあるとして、季節の変わり目に「名残」と「走り」の食材を組み合わせるのは、四季を持つ日本ならではの食の楽しみ方。
夏の食材「鱧」に、秋にピークを迎える「松茸」。それぞれがメインを張れる食材の旬が重なり合うわずかなこの時に味わっておきたいのが、銀座にある会席料理の【銀座 和久多】が供する『松茸と鱧の小鍋仕立て』です。
京都や大阪、そして東京の名店で修行し、「出汁もの」を得意料理に挙げる店主の亀山氏。曰く、「松茸は最初に香りを楽しみ、続いてシャキシャキとした食感を楽しむもの」。それならば、氏の腕前が最も発揮されるのがこの料理と言えるのではないでしょうか。
鱧の骨と昆布でとった出汁に酒と薄口しょうゆを加え、松茸と湯引きした鱧、豆腐などを加え、ひと煮立ち。松茸の香気を纏った鱧の食感、鱧の旨味を湛えた風味豊かな松茸の旨さで高揚感に浸りつつも、今だけという組み合わせに惜別の念さえ覚えます。
夏の終わりから秋の始まりにかけて、季節の移ろいをこの料理でしみじみと実感してみるのも乙といえましょう。
【RISTORANTE YAGI】東京・渋谷
日本を代表する秋の食材「松茸」。この食材に目を付けているのは和食だけでありません。イタリア・フィレンツェの三ツ星レストラン【エノテカ・ピンキオーリ】ほか、イタリア各地で5年の修業を積んだ八木康介シェフが代官山にオープンした【RISTORANTE YAGI】。
シェフおまかせのコースのみ、「PROPOSTA(イタリア語で提案の意)」と書かれたメイン食材だけ記された一覧表がテーブルに置かれるこのお店。その真意は、食べ手の想像力を刺激する演出効果のほか、仕入れた食材はゲストの嗜好を汲みつつ、インスピレーションを活かしてその日にメニューを考案、調理したほうが、より一層旬の美味を活かせるという氏の考えにあります。
自由な発想、自分なりの解釈を取り入れた“日本のイタリア料理”を標榜する八木氏。7~8品で構成されるコースで、とりわけ八木氏が力を入れているパスタ。なかでも、“例外的”に秋の定番になりつつあるのが『松茸とツブ貝のスパゲッティーニ』です。
メインの「松茸」は旨味が増すよう軽くソテー、味付けにはこれまた秋の食材である柚子の果汁、さらにカラスミを用いて一皿のなかに存分に秋を表現しています。
食材重視の哲学を明確にするこの店で、イタリアンの名店の元プリモをも魅了する「松茸」に、食材としての有能さを再認識してみてはいかがでしょうか。
【日本料理ほうおう】東京・銀座
個性豊かな食材「松茸」。このキーワードでレシピを探すと一番上に見つかる「まつたけご飯」の文字。そう、この食材はお米とめっぽう相性が良いのです。
数ある「まつたけご飯」の名店のなかから、今回ご紹介するのは銀座にある【日本料理ほうおう】。もとは、歌舞伎座の厨房として仕出し膳を手掛けていたのを、「観劇後もその余韻に浸りつつ日本料理を楽しんでほしい」と、2012年に開業した懐石料理の店です。
四季の味覚を存分に味わえる季節の懐石料理をコースで供するこの店、秋ともなると『月のコース』『雪のコース』には、常連客が目当てに挙げる松茸を使った料理が登場します。
幕開け早々に登場する『松茸の土瓶蒸し』、コースメニューのど真ん中に据えられた『米沢牛ステーキ』、さらに見目麗しき『季節の炊き合わせ』に舌鼓を鳴らすと、いよいよ千両役者たる『松茸御飯』のお出ましです。
蓋を空けると秋の香りが鼻孔を抜け、口にすればシャキシャキした心地よい松茸の歯触り。そして、出汁と「松茸」の旨味をしっかり湛えたお米が、優しい甘みの余韻を残して“引っ込みます”。
シンプルながら、香り、味、食感と八面六臂の働きで「松茸」の良さが存分に発揮される『松茸御飯』。この舞台が用意されることで、松茸は真の姿を見顕すのです。
PICK UP
パプリカやししとうなどの唐辛子類が旬を迎え、ビールのお供、枝豆も欠かせません。トビウオやスズキ、シマアジも収穫期。
秋の味覚の王様、松茸が店頭に並びます。サンマの水揚げがはじまり、たっぷりと脂がのった戻り鰹の季節です。
収穫の秋、里芋類やカボチャなどがおいしくなる季節です。サンマに脂がのり、イワシやニシン、イカがなども旬を迎えます。
ズワイガニ漁、サクラエビの秋漁、さらに山の幸ジビエの狩猟が解禁。サツマイモやカボチャなどの甘味もピークです。
鍋に最適な冬野菜の白菜や大根、春菊がおいしい季節です。海の幸もカキやホタテが旬を迎え、魚は脂がのって旨味が増します。
年が明け、旬を迎える魚が一年で最も多いのがこの時期。アマダイやアカムツ、イカやアカガイが出まわります。
ホタテやタラ、あんこうなど鍋に入れたい魚が豊富。蕾菜やアスパラ菜などが花芽を伸ばし、春の訪れはすぐそこです。
富山のホタルイカ漁が解禁。あさりや蛤などもおいしく、潮干狩りのシーズンを迎えます。山菜が出始めるのもこの頃。
アスパラガスやたけのこが出まわり、新タマネギや新ジャガイモの収穫も始まります。真鯛や鰆も獲れ、春到来です。
初鰹が最盛期を迎えます。野菜は、絹さややスナップエンドウなどの豆類がおいしい季節となります。
キュウリやピーマン、空芯菜やつる紫などの夏野菜が出始めます。海の幸は鮎やキス、トビウオ、マアジが旬を迎えます。
スズキやトビウオ、真アジに加え、鮎やハモも旬真っ盛り。茄子やズッキーニ、ゴーヤーなどの夏野菜が食卓を彩ります。