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至福の逸品〜dish stories〜 vol.16

山海の美味 華やかなる饗宴「鰹のたたき 初夏の彩り」

「鎌倉を生て出けむ初鰹」(松尾芭蕉)という俳句でも有名な、初夏薫る5月の食材として知られる初鰹。戦国時代には縁起物として、江戸時代には粋な食べ物として愛され続けてきた初鰹は、スズキ目サバ科の回遊魚。さっぱりと引き締まった身が美味とされる初鰹の、初夏ならではの風情あふれる食べ方をご紹介しよう。

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撮影/Matto Manmoto

縁起を担ぎ、粋な食材とされてきた「初鰹」

背中は濃青、腹は銀白をした50cmほどの回遊魚で、スズキ目サバ科の鰹。太平洋側の温水を好み、季節的に回遊をすることで知られている。この鰹が日本に近づくのは、フィリピンや南西諸島を経て、九州の南部から東北へと向かって北上する「黒潮ルート」。九州を皮きりに、四国、伊豆、房総と黒潮にのり、親潮とぶつかる三陸沖まで5〜6か月ほどかけて太平洋岸を日本列島沿いに北上していく。

「初鰹・上り鰹」と呼ばれる鰹は、この黒潮にのって北上する鰹の年初めの水揚げのことをさす。味覚の旬は、ほどよく脂のつき始めた鰹が関東近郊で水揚げされる5月頃だが、近年では北上を始めて間もない2月中旬から3月にかけての九州で水揚げされた鰹が、市場に入荷されていることもあり、「初鰹」の味わえる時期は早まりつつあるという。

戦国時代には縁起物として、「勝男武士」と名付けて好まれたり、織田信長が生の鰹を取り寄せ、岐阜城にいる家臣に振る舞ったりしたことでも知られる鰹。江戸時代になると、「初鰹」は、粋な食材として珍重され、初物を食べると長生きするとの言い伝えから、「女房を質に入れてでも食え」といわれるほどの高級食材とされていたようだ。

脂ののった秋の「戻り鰹」とは異なり、夏の到来を告げる「初鰹」は、サッパリと引き締まった身をシンプルに味わうのが信条。宮崎県産の食材を使った季節の割烹料理を饗している東京・赤坂の割烹料理【かさね】では、この時期、吟味を重ねた新鮮な鰹に、山海の恵みを合わせた、華やかなたたき料理『鰹のたたき 初夏の彩り』を味わうことができる。

九州は宮崎産の初鰹。脂はほとんどのっていないが、その分、引き締まった身はサッパリしていて美味。/ワラビやウルイ、マイクロトマトなど、異なる触感と、粘りや苦み、甘味、酸味など、異なる味わいを意識しながら、食材を組み合わせ、盛り付けていく。

初夏を感じる「鰹のたたき 初夏の彩り」

この日仕入れたのは、九州・宮崎産の小ぶりの鰹。卸した鰹は串にさし、直火の強火でサッと皮だけを焼く。焼いてすぐ氷水につけることで身を引き締めるのが一般的だが、ご主人の柏田さんは、旨みを逃がさず味わって欲しいからと、そのままの状態で出すことにこだわる。そのため、火入れは出す直前に行ない、焼いたら表面が温かいうちに切ってすぐに出せるよう、他の準備を万全にしておくという。

鰹と合わせたのは、ウルイやワラビ、タケノコほか7種の野菜と果物、そしてイイダコ、アオヤギなどの魚介類。エグミや粘り、酸味に甘みといった食感や味覚の異なる食材を組み合わせることで、より幅広い味わいを楽しめるよう工夫を凝らす。盛り付けの最後にハッサクを回しかけ、立ちのぼる柑橘系の香りが完成を告げる。

豊富な食材とともに、華やかに盛り付けられた料理に添えてあるのは、たたき料理に欠かせないポン酢。かさねのポン酢は酸味のなかにも旨みがあり、香り豊かな宮崎県日向特産の「へべ酢」に、鰹と昆布の出汁、醤油や酒などを加えて寝かせた後、丁寧に濾してつくった自家製だ。

熟成させたポン酢でサッパリとした鰹そのものの旨みを楽しんだ後は、ウルイの粘りやワラビの爽やかな苦みなど、異なる食材を合わせることで生まれる触感の違いや、奥深い味のコラボレーションを堪能。さらにトマトやハッサクの酸味はポン酢との相性も良く、初夏の風が口の中を吹き抜けていくような感覚に襲われる。

縁起を担ぎ、長寿を願って食されてきた「初鰹」。爽やかな酸味に包まれ、サッパリとした味わいの身を日本酒とともに味わえば、初夏の訪れを感じられるに違いない。

料理は宮崎県日向特産の「へべ酢」を使った、コクと旨みの強い自家製ポン酢をかけていただく。吟味した日本酒とともに味わいたい。

常連客が勧める逸品 〜季節の冷や汁(牡蠣)〜

湯葉サラダ 豆乳ドレッシング掛け 930円

季節の冷汁(コースの一品)
宮崎県出身の柏田さんがつくる本場の冷や汁は、牡蠣を焼いてつぶし、味噌を加えた焼味噌を出汁で伸ばして、ご飯とキュウリ、ゴマをのせた名物料理。夏なら鯵、冬はふぐと、季節によって内容が変わる。これを目指して通う客が後を絶たない人気メニューだ。

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鰹のたたきを引き立てる旨い酒 〜若波 純米酒(生)〜

<左>加賀鳶 山廃純米辛口 <右>写楽 純米吟醸 グラス450円 一合780円

若波 純米酒(生)
1合 800円

福岡市でつくられた日本酒。九州の鰹には、海の酒の方が山の酒より相性も良い。キレのよい純米酒で、優しく、しっとりとした口当たりながら、しっかりとした味わいが特徴。

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このページで紹介したお店

そばと小皿料理 若松

赤阪 かさね 【東京・赤坂】

【営業時間】
月曜〜金曜 18:00 〜 23:00(要予約)
【定休日】
土・日・祝祭日
【TEL】
03-3589-0505

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編集後記

宮崎県出身のご主人柏田さんが営む、四季を大切にした割烹料理と宮崎料理が堪能できる【かさね】。カウンターに飾られた季節の花や箸置きなどから、四季を感じることができる。料理は時期によって各地から取り寄せた食材でつくる1コースのみ。食材の合わせ方や盛り付け方に工夫を凝らしながらも、つくられるのは和の料理だ。〆に出される季節の食材を使った冷や汁は、故郷である宮崎の郷土料理。ほっこりと優しい味わいと、穏やかな柏田さんの人柄に、常連客が足を運ぶのもうなずける気がした。

そばと小皿料理 若松

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