至福の逸品〜dish stories〜 vol.12

春を味わい尽くす「鰆のポワレ ふきのとうのソース」

春の食事といえば何を想い浮かべるだろうか。
この時期、日本中に“春”を知らせてくれる、鰆(さわら)や、ふきのとう。また、ウドやタラの芽などが浮かぶのでは?今回は、淡白で上品な白身を丁寧にポワレした鰆に、九条ネギと新ゴボウの芳ばしい香りを添え、ふきのとうで爽やかな苦味が愉しめる、春を味わい尽くせるメニューをご紹介。

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撮影/永友 啓美

春の訪れを告げる、「鰆」と「ふきのとう」が奏でるハーモニー

3月20日は春分の日。まだまだ寒さこそ感じるものの、暦の上ではもう「春」。道端を彩りはじめる草木や花々、心地よく通り過ぎるあたたかいそよ風に、心踊る季節がやってきた。そして春を告げる旬の魚、文字通り、“春”の“魚”と書く鰆が旬を迎える。実は「サ」は狭い、「ハラ」は腹を意味し、腹が狭くスマートな体形と言うのがその語源だ。

外海から瀬戸内海に入り込み、桜の花盛りの頃に旬を迎える鰆を、和歌山では「桜鰆」と呼び、“春の使者”とも呼ぶそう。また、関西では「鰆が来ないと春が来た気がしない」とも言われるほど、春の食卓には欠かせない風物詩なのだ。

青魚では赤身が多い中、鰆は白身で身質もやわらかく、上品な味わいが特徴。高級魚のひとつで、「目が透き通っていてエラが赤いもの、切り身なら皮に虹色の光沢があり、斑紋がはっきりと出ているものが新鮮なんです」と須賀シェフ。味噌漬けや酢漬け、煮ても炙っても刺身でも美味しい万能な鰆を、今回は皮目の香ばしさを引き出すポワレにし、表面はパリっと、中はふっくらジューシーに焼き上げた。

また、忘れてはいけない春野菜にも注目したい。春先にいっせいに芽を吹き出す山菜、ふきのとうだ。ふきのとうは、日本原産の山菜で全国の山野に自生し、天然ものは雪が解け始める頃、葉(ふき)や茎が伸び、味わいも香りも深まる。コロンとして大きすぎない、艶のあるものが新鮮で、まだ開ききらないつぼみの状態が美味とされる。このつぼみの部分を「ふきのとう」と呼び、独特な芳香と苦味をスパイスとして使用したり、そのまま天ぷらにしたり。また洋食ではソテーに添えたりなど、幅広く利用できるのもポイント。栄養価も高く、優秀な春野菜として古くから愛されている。

この春を代表する「鰆」と「ふきのとう」が楽しめる「鰆のポワレ ふきのとうのソース〜九条ネギと新ゴボウのフライ添え〜」は、そんな“春の香り”が詰まった、季節を感じられる贅沢なひと皿だ。

ひと皿ひと皿、丁寧に仕上げていく。内装やアートにもこだわるシェフならではの、彩り豊かな盛り付けにも注目したい。/鰆の焼き加減が絶妙。パチパチと油が弾け、身が締まり、皮目がこんがりと色づく様は味の骨格をつくる。

毎朝、築地へ。いま最も旬な食材が開花する

茗荷谷で15年、気軽に楽しめるフレンチレストランとして人気を博す「ル ピラート」のオーナーシェフ、須賀眞理氏は、都内のレストランで10年修行し、満を持して渡仏。フランス・ブルゴーニュの3ツ星レストランやパリで3年間修行を重ね、帰国後、ル ピラートをオープンした。

小さい頃から料理を作ることが大好きだったという須賀シェフの一番のこだわりは、なんといっても食材にある。毎朝、6時前には築地を訪れ、新鮮な食材を求めて魚介類から野菜、果物まで築地市場内を隈なくチェックする目は真剣そのもの。いい食材に出会えるコツを聞いてみると、「人と人とのつながりです」と言いきる。

「ひと口に魚と言っても、その個性はさまざま。この鰆に最適な火入れ、付合せやソースを考えて生まれたのが、このひと皿です」。

鰆は、フライパンで皮目に焼き色をつけたら身側はさっと加熱し表面のみに火が入った状態に。その後オーブンでゆっくりと中心部まで火を入れていく。これにより鰆の表面はパリッ、中はふっくらとジューシーな仕上がりに。柔らかく甘味の立つ京都産の九条ネギを合わせることで、鰆の皮目の触感を際立たせているのがポイントだ。ソースの決め手は、細かく刻んだ、ふきのとうを、バルサミコ、フォンドヴォーを煮詰めたソースに加えること。淡白な鰆に爽やかな苦味を効かせる、このアクセントがたまらない。そして、コロンとしたふきのとうは、バターでコクと焼き色を。160℃にした多めの油で水分を飛ばす程度にサッと揚げた新ゴボウは、鼻の奥まで届く土の香りを放ち、春の息吹をイメージさせる。お花見スポットも近くにあるので、五感で感じる春を、ここル ピラートで味わっていただきたい。

今日使う素材は、その日の朝に築地に直接仕入れに行っている須賀シェフ。こだわり抜いた旬の食材は、まさに新鮮そのもの。/毎日通っていると、向こうから話しかけてくれるんだとか。このコミュニケーションが、いい食材との出会いにつながるという。

常連客が勧める逸品 〜殻付きウニ〜

殻付きウニに赤ピーマンとトマトとバジリコを添えたムース 時価

殻付きウニに赤ピーマンとトマトとバジリコを添えたムース 時価
新鮮なウニといえば、そのまま食べることを想像するかもしれないが、シェフの手にかかれば、新しいフレンチに。さっぱりとしたムースが濃厚なウニを引き立て、磯の香りがたまらない逸品だ。

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鰆のポワレを引き立てる前菜 〜鰊(にしん)の燻製と筍のミルフィーユ〜

鰊の燻製と筍のミルフィーユ 1,250円

鰊の燻製と筍のミルフィーユ 1,250円
旬の鰊と筍を贅沢に使った一品。おろしたての鰊を岩塩でマリネし、燻製に。この絶妙な燻し具合と筍のみずみずしさがグリンピースのソースによく絡む。モッツァレラのコロッケを添えて。

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このページで紹介したお店

フレンチレストラン ル ピラート

フレンチレストラン ル ピラート 【東京・茗荷谷】

【営業時間】
ディナー 18:00〜22:00 (L.O.21:00)
 
ランチ 11:30〜15:00 (L.O.14:00)
【定休日】
日曜日
【TEL】
03-3818-7022

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編集後記

毎月行っている料理教室では、年に一度、築地の仕入れへ連れていってもらえる機会があるとのことで、はりきって参加してきた。朝5時、眠気と戦いながら向かった先、築地市場内は、想像以上に活気づき、エネルギーに満ち溢れていて一気に引き込まれてしまった。行き交う人々の真剣なまなざしの間で、新参者の私にも、あたたかく話しかけてくれる築地の方々の温もりやパワーを感じ、肌で学べる貴重な経験に。生徒さんの中には、かれこれ10年にわたって料理教室に通っているファンの方もいた。料理が大好きというシェフから学ぶフレンチは家庭でも実践できるものばかり。実際にキッチンに入り、本場の火力で調理をさせてもらえる喜びはひとしお。気さくなシェフと、生徒さん、そして手際がよすぎるアシスタントのY氏による、終始にぎやかで実りのある時間が過ごせたことに感謝したい。そして桜の咲く頃に、おいしいフレンチを食すべく、ル ピラートを訪れようと思う。                                                 

編集担当:K.T.

フレンチレストラン ル ピラート

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