至福の逸品〜dish stories〜 vol.04

紅葉鯛の土鍋ごはん

今回ご紹介するのは、大将が秋の定番として振る舞う「紅葉(もみじ)鯛の土鍋ご飯」。土鍋のふたを開けた瞬間に店内に広がる香気。大将自ら鯛の身をほぐし、確かな技で生み出されるおこげは、混ざり過ぎないよう注意を払いご飯と合わせる。ギャラリーで気に入ったものを収集しているという器の中にホクホクとした鯛の身がふんだんに入っており、おこげの香ばしい匂いとともに心をキューっとしめつけるような引力を持っている。料理に真摯に取り組む大将が生み出す「紅葉鯛の土鍋ご飯」とは。

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撮影/Matt Mammoto

誠実な仕事から伝わる職人魂

自身の性格を真面目と言いきる、店の“大将”堀内誠氏。和食の魅力は、四季にあった表現ができるところだと話す。
大将がこの道を志したのは高校卒業前のこと。父親が料理人だったことから、料理の道に進むという選択は至って自然なものだった。
しかし、洋食屋を営む両親を持ちながらも和食の道に進んだのは「なんでしょうね。かっこよかったんですよ」。という一目惚れのような理由から。和の職人の寡黙さや真摯さ、技の繊細さが、大将を射止め夢中にさせたのだろう。その恋を実らせるが如く、専門学校卒業後の進路には最も厳しい店を希望し、独立した現在もなお「和の道」を邁進している。

その真摯な姿勢は、食材へのこだわりにも通じている。
仕入れは、時期によって産地を変えた契約農家や漁港からの産直にこだわり、地場の思いを伝えるべく両親が地元・山梨県から送ってくれる食材も多く使用している。
食べて必ずおいしいと思えるような、旬の食材を使った月替わりの料理。季節の変化を楽しみに訪れるという客への思いだけでなく、大将自身の料理への愛情から生まれる逸品なのだろう。

大将がカウンター越しに魅せる、洗練された所作。四季折々変化を見せる、ペーパーテーブルクロス

鯛と独創性が生みだす美味

年間を通して楽しめる鯛。産卵を終え、冬に向かって脂を蓄えた秋の真鯛は「紅葉鯛」と言われている。紅葉鯛は桜鯛に比べ姿もふっくらし、脂がのって甘みを楽しめるという。
この紅葉鯛こそ[旬菜 おぐら家]が秋の至福の逸品として贈る、土鍋ご飯の主役となる。
山梨県産の水を使い、鯛から引く出汁で炊き上げるのは、これも山梨県産のお米と表面をパリパリに焼いた紅葉鯛、そしておあげを始めとする具材たちだ。鯛の脂にお揚げの油を加えることで、ご飯につやを付けて香りを良くし、まろやかな味わいにするための調節を行っている。
「味を足しすぎるとまずくなる。味を添加しないて、素材の持ち味をうまく引き出すのが料理人の仕事だと思います。」
土鍋ご飯という料理には、脂と旨みをしっかり持った秋の鯛が最適なのだ。

素材はもちろん、炊き方次第でも味が大きく変わってくるのが土鍋ご飯の醍醐味。
「本来、ご飯は炊き上げから10分ほど蒸らすといいと言うけれど、蒸らさないほうがおいしい気がするんです。」
料理に真摯に取り組む大将が見せる、自らの感性を尊重したオリジナリティー。湧いたら20分で火からおろし、すぐに提供するそうだ。蒸らさないことで出る水気は、炊き上げる際に水を減らすことで調節している。特にこの時期は新米を使用するため芯が残ることもなく、歯ごたえのあるお米とホクホクな鯛とのバランスの良い食感を楽しむくことができる。水分の調整をして炊きあげられた、日本人の楽しみとも言える新米には、お米本来の味と食感、そして鯛の旨みと香りが詰まっている。

椀によそった後も香り続ける、おこげのこうばしい香り。朱色と葉色を加え、彩り鮮やかに見た目へのこだわりも

常連客が勧める、外せぬ逸品

旬のお刺身盛り合わせ

旬のお刺身盛り合わせ(800円)
季節ごとに旬の魚を産直で仕入れ、日替りで提供する。写真は左から、さんま、雲丹、さば、まぐろ、鯛。大将が合わせた甘めの土佐醤油と、ボリビアの岩塩でいただく。白身魚には塩が合うそうだ。

おぐら家コロッケ

おぐら家コロッケ(900円)
メニューから外すと常連客に怒られるという、長芋を使用したとろとろのオリジナルコロッケ。柿の種をまぶした衣はカリカリで、甲州牛のミンチと大ぶりの松茸が入った贅沢な逸品。カボスを絞りサッパリいただく。

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主役級の旨い酒

十四代・而今・飛露喜

[旬菜 おぐら家]に通う常連客は酒好きが多い。消費量も多いことから、週一で仕入れに出かけるのが大将の決まりごとだ。知り合いが営んでいる酒屋には、貴重な銘酒が豊富に置いてあり、常連客の趣向を考慮した上で、そのときどきの最高の品を仕入れるという。

【写真左】 十四代 (1500円)
日本酒好きにこの名を知らない人はいないだろう。りんごのようにフルーティーな味わい
【写真中】 而今 (1000円)
次世代の十四代とも言われている。フレッシュな美味しさが楽しめる一本
【写真右】 飛露喜 (1000円)
米の味が強く濃密な味わい

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このページで紹介したお店

旬菜 おぐら家 (シュンサイオグラヤ) 【池尻大橋】

渋谷、中目黒、三軒茶屋という賑やかな町にかこまれた池尻大橋。バーが立ち並ぶこの町に、ゆったりと落ち着いた時間の中で割烹料理を楽しめる「旬菜 おぐら家」がある。格子状の扉の向こうには、大将を目の前にするカウンター席が6席、奥には8席の個室が用意してある。目の前で芸術作品のように華やかに盛り付けられていく料理を見ながらの食事。手際良い大将の姿を見ながらの食事というのも魅力のひとつだ。

【アクセス】 東急田園都市線、池尻大橋駅南口より徒歩1分。
【営業時間】 平日・土・祝 18:00 〜 02:00 (L.O.01:00) ※定休日:日曜日

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編集後記

日本で生まれ育ったにも関わらず、私が日本料理の魅力に気づいたのは1年ほど前のことです。すーっと風が吹き抜けるように始まり、ほっこり落ち着く暖かさを持って終わる…まさに癒しの料理と言えるのではないでしょうか。
今回取材をさせていただいた[旬菜 おぐら家]さんも、癒しを纏ったお店でした。素材本来の味を存分に楽しめる料理はもちろん、大将の低い落ち着いた声も、訪れる人を安心させてくれます。春夏秋冬いつでも旬のおいしい料理を楽しめるのが、常連客を離さない秘訣なのだと感じました。

編集担当:AS

〜おぐら家 おせち情報〜 大将自らの手で作るおせち料理。二週間ほどかけてこつこつ仕上げていくという。
一人で作ることから、30〜35個のみ受け付けるという限定品。ご注文は、おぐら家までお電話で

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