至福の逸品〜dish stories〜 vol.15

鮮やかなる薬膳中華「たけのこと彩り野菜の炒め」

春野菜の代表と言われる「たけのこ」。地下の茎から出た若芽にあたる部分を食す。一般的な料理では、皮をすべて取り除いた後の身の部分を使うが、実は最も味わい深く、栄養価も高いのは先端部分だということを知る人は少ない。今回は、その筍衣(スンイ)という先端部分を使い、彩り鮮やかな野菜や生薬を加えて、素材の風味を生かした薬膳中華で、その滋味をご紹介しよう。

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撮影/岡本 裕介

中国を代表する食材、季節を感じる「たけのこ」

「たけのこ堀り」といったイベントで収穫を楽しむなど、春の味覚として親しまれているたけのこは、イネ科タケ亜科タケの若芽。九州地方から北上するように産地が移動するため、収穫時期は4〜5月とされている。

特に獲れたての1時間以内くらいのものなら、生もしくはサッと湯がいたくらいで食べられるほど、栄養価も高く風味も良い。しかし収穫後は急速にエグミがでてくるため、一般的には米ぬかとともに水煮し、灰汁抜きをしてから、「土佐煮」や「若竹煮」といった料理に使われることで知られている。

このように今でこそ日本の食材とされているが、もともとは中国から伝わってきたもの。パンダのエサが笹の葉であること、竹林が豊富にあるということからも容易に想像できるだろうが、実は中国を代表する食材だったのである。

種類も豊富な中国のたけのこは、食用だけでも5〜6種類はあるとされている。春と秋の2回の収穫期があり、種類によって使い方や調理法もさまざま。酢豚や青椒肉絲といった一般的な料理から、デザートまで、色々な料理があるが、なかでも興味深いのは、中国では筍の先端部分「筍衣」(スンイ。日本語では姫皮)をアワビやカニに並ぶ高級食材として使うということだ。

筍衣は、何層もの柔らかい皮でできている先端部分のことを指す。1つからわずかしかとれないため、中国ではこの部分をアワビと煮込んだり、カニを包んで餡かけにした高級料理として饗しているのだという。春を告げる庶民の食材である日本のたけのこは、大きさや産地にこそこだわるものの、その部位は知らずに捨ててしまうのがほとんどだが、その繊細な味わいを体感すれば、中国の食通が注目する理由もうなずける。

日本では捨てる人も多いが、中国では最も上等な部位とされる、上部の薄皮部分筍衣(スンイ)。/筍衣(スンイ)は、先端の開いている部分。弱火の油でじっくり揚げて水分を抜くことで香ばしさが増し、筍チップスのような歯ごたえが楽しめる。

五感で味わう「たけのこと彩り野菜の炒め」

この中国を代表する「筍衣」の料理を味わえるのが、【銀座 小はれ日より】。板前の父を持ち、子供の頃から厨房を遊び場にして育ったオーナーの高橋政貴氏は、15歳の時に陳健民氏の片腕と言われた岡野国勝氏に師事していた料理人。生薬が野菜のように日常的にそろっている環境のなかで、料理を学びながら自然と薬膳の知識も身についていったという。

そんな高橋氏がつくる料理『たけのこと彩り野菜の炒め』は、たけのこを選ぶところから始まる。中国料理は炒めものが多いこと、また筍衣部分が多いものと考えて、小さめの若いものがよしとされる。

皮をむいたたけのこは2種の異なる味わいで食感を楽しめるよう、事前にふたつに分けて下ごしらえ。ひとつは弱火の油でじっくりと揚げて水分を抜き、パリッと仕上げる。もうひとつはしめじやパプリカ、ニンジン、アスパラといった野菜とともに、サッと湯通しをしておくといった具合だ。

そうしてそろえた具材を熱した中華鍋に入れ、生薬のクコの実と金針菜を加えて強火で一気に炒めて仕上げる。味付けは塩ともち米を発酵させた「チュニアン」と呼ばれる塩麹、そして紹興酒。最後に黒胡椒を加えてアクセントを添えた一皿は、素材の味を立たせ、その旨みを引き出すため、敢えて肉や魚を使わずに、植物性の材料のみを使用しているのも特徴だ。

カリカリとした筍の食感に香ばしい風味、そしてみずみずしい春野菜の歯応えが一度に楽しめるだけでなく、新鮮なたけのこならではの、とうもろこしに似た味わいが贅沢な逸品。ひとつひとつの食材から立つ香気と味わい、この季節ならではの味覚を今春は存分に堪能したいものである。

2種の触感が異なる筍に、グリーンアスパラガスやニンジン、パプリカなどの彩り野菜と、クコの実、金針菜といった生薬を加え、チュニアン(塩麹)で炒める。/厨房のカウンターにずらりと並ぶ生薬や調味料。このなかから、料理の味付けに必要な調味料や香辛料をその場でブレンドし、料理をつくる。

常連客が勧める逸品 〜皮蛋麻婆豆冨〜

皮蛋(ピータン)麻婆豆冨 
(コースの一品)

皮蛋(ピータン)麻婆豆冨  (コースの一品)
陳健民氏が生んだ日本式の麻婆豆冨の味を、忠実に再現するよう心がけてつくっているという麻婆豆冨。ピータンを加えてアクセントを添え、山椒と唐辛子のマー(麻)とラー(辣)が生み出す奥の深い味わいが常連客に人気。

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料理を引き立てる旨い酒 〜甕だし紹興酒(生)〜

甕だし紹興酒(生) 
グラス700円/ 500ml 1000円

甕だし紹興酒(生) グラス700円/ 500ml 1000円
中華料理には紹興酒を使用するため、相性がよいのも紹興酒。特におすすめは甕だしの生紹興酒。味の変わらない通常の紹興酒とは違い、ワインと同様、開封後はどんどん風味が変わる。飲みやすく、まろやかな味わいが特徴。

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このページで紹介したお店

銀座小はれ日より  

銀座小はれ日より 【東京・銀座】

【営業時間】
【平日】 ランチ 12:00〜14:30 (L.O.14:00)※前日迄に予約された場合のみ営業
 
【平日】 ディナー 18:00〜22:30 (L.O.21:30)
 
【土・祝】 ディナー 18:00〜21:30 (L.O.20:30)
【定休日】
日曜日
【TEL】
03-3538-0554

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編集後記

銀座八丁目から一丁目に移転して10年。盛り付けから楽しめる、美味しい薬膳創作中華をつくることに情熱を注いでいた高橋さんの意識は、現在、美味しさ以上に「安心・安全な料理を提供すること」に向けられている。「おいしさは趣向だが、安心・安全は万人に共通する、根本ともいえる大切なことだから」というのがその理由。ゆえに、材料には吟味を重ね、自分の目に叶った食材だけを仕入れる。電子レンジもなく、冷凍食品や加工品も一切なし。磨き上げられた厨房で、調味料や生薬、香辛料をブレンドして料理の味付けをしながら丁寧に作られた料理からは、食材の持つ滋味が感じられる。もともとは四川料理だが、胃腸がつかれている時には食材や生薬で調整し、体調が整う料理をつくってくれる高橋さんの薬膳中華には、その人柄が表れているような気がした。


編集担当:A.S.

銀座小はれ日より

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