磯薫るウニ
クリーミーでとろける旨さのウニ。旬は初夏から8月のお盆まで。今回はウニが主役を張るスペシャリテの中から、『殻つきウニのプリン』、『ウニのクリームパスタ』、『ウニの土鍋ご飯』の3品をご紹介します。
クリーミーでとろける旨さのウニ。旬は初夏から8月のお盆まで。今回はウニが主役を張るスペシャリテの中から、『殻つきウニのプリン』、『ウニのクリームパスタ』、『ウニの土鍋ご飯』の3品をご紹介します。
【El Pulpo】東京・神楽坂
「ウニ」と聞くと、寿司や丼などをイメージする方も少なくないと思いますが、この食材、和食だけの専売特許にあらず。実は外国でも重宝されているのです。
今回ご紹介するのは、ウニを使ったスペイン料理。バルの群雄割拠としても注目が集まる飯田橋・神楽坂エリアにおいて、連日盛況を博す【El Pulpo】のスペシャリテ『殻つきウニのプリン』です。
シーフード専門店を意味する“マリスケリア”を標榜するとおり、メニューの柱は魚介類。「銀座の鮨店で通用するネタかどうか?」という高い基準を設け、時にスタッフ自ら築地に出向き、目利きしています。
今回のメイン料理、『殻つきウニのプリン』で使用するウニも同様に、築地の専門店から産地の異なる2種を仕入れています。「殻つきウニのプリンは二層構造。土台とトッピング部分で求めるものが違うのです」と説明してくれるのはシェフの坂田慎吾氏。
滑らかな舌触りを保ちつつも、トッピング部分を支える適度な固さが必要な土台部分には、水分があまりないもの。一方で土台と比較して少量でもウニならではの旨味や香りが楽しめるよう、トッピング部分には甘みの強いものを選んでいるそうです。
使用する食材は2種のウニと1時間炒めた玉葱、バターにゼラチン、味付けは岩塩、ペッパー、オリーブオイルとシンプルな構成だけに、調理で重きを置いているのは「バランス」だそう。土台とトッピング部分の量や固さのバランス然り、お互いを引き立てる“上下”の味付けの違いといい、小さなウニの殻のなかには綿密な計算が隠されています。
「世界的にウニの需要が高まっている影響を受け、時に食材の価格が高騰することもありますが、このメニューを目当てに店を訪れる方も多いので、価格は据え置きです」と笑う坂田氏。どうやら価格については計算違いだったようです。
【リストランテ イル バンビナッチョ】東京・西麻布
ウニのクリームパスタのクリーミーな旨さには思わず頬が緩むもの。とろける生ウニのコクがクリームソースと重なる濃厚な“一体感”に出会えるのが、【リストランテ イル バンビナッチョ】の『函館から届いた帆立と生ウニのクリームソース 自家製細打ち麺タリオリーニ』です。
西麻布に佇むイタリアンの名店で腕を振るう福田憲一シェフは、素材の持ち味をシンプルに生かした料理が真髄。シンプルを志向するほどに、肝となるのが食材のバランスです。
ウニを使ったパスタのレシピをつくる段階では「ほかのソースや食材との相性も試した」というシェフが早い段階で確立したのが、ウニ、生クリーム、タリオリーニ、そして帆立という組み合わせ。食材の甘さが絶妙に溶け合うスペシャリテの“一体感”に一役を買っているのが帆立。クリームソースが帆立の旨みを引き出し、その逆、帆立が出汁にもなっています。
ソースをつくる工程ではウニをクリームに溶かさず、たっぷりと乗せるのが福田シェフ流。そうすることで、口にしたときに生ウニのとろける旨さが強調された、リッチな味わいが演出されます。柔らかく、とろっとしたウニが口のなかでほどける刹那、鼻孔を抜けていく磯の香り。
「つぶれたてのウニの香りがふんわりと口の中に広がるタイミングをお客様自身に委ねているんです」というシェフの采配通り。ウニの存在感から引き算し、ソースはやはりシンプルに調えてます。
実は、シェフ自身も以前はウニが苦手だったとか。臭みのない美味しいウニに出会った食経験の感動が込められているからこそ、美味しさに説得力が生まれます。
【いふう】東京・中目黒
諸国の料理に溶け込んで魅力が解き放たれているウニですが、そうは言っても、日本人に馴染み深い「ご飯」との相性の良さも周知の通りです。中目黒の割烹【いふう】の『うにの土鍋ご飯』は、土鍋で炊き上げたご飯にウニの“ご馳走感”を付与した人気メニュー。
料理長の亀田雅彦氏が食材に合わせて逆算し、出汁を味付け。できたての美味しさを味わうべきなのは勿論ですが、お客様の“二杯目”まで視野に入れます。例えば、この料理に甘みを出すために酒を入れれば、直後には旨く感じるものの、少し冷めてから食べたときに風味が落ちるのでご法度とのこと。曰く、これこそ「旨味を引き出すための“引き算”です」
北海道根室産のウニを使用し、かつお出汁に塩、薄口・濃い口しょうゆで味を調え、研いだお米にウニを入れたら、土鍋で炊き上げること15分。ウニは出汁の凝縮した味わいを纏い、磯の香りが覆われます。
火を入れることで甘みが一層強くなるのが、この料理で引き出されるウニの魅力。「ウニの甘みとご飯の甘みを、ゆっくりと噛みしめてほしいです」
土鍋の蓋を開けると飛び込んでくるのは、ご飯の上に散りばめられた小金色に輝くウニ。炊き上がったご飯の湯気に乗って、鼻孔をくすぐる甘い芳香。香り立つ湯気ごと美味しさを逃さず、五感で味わってみてください。
PICK UP
パプリカやししとうなどの唐辛子類が旬を迎え、ビールのお供、枝豆も欠かせません。トビウオやスズキ、シマアジも収穫期。
秋の味覚の王様、松茸が店頭に並びます。サンマの水揚げがはじまり、たっぷりと脂がのった戻り鰹の季節です。
収穫の秋、里芋類やカボチャなどがおいしくなる季節です。サンマに脂がのり、イワシやニシン、イカがなども旬を迎えます。
ズワイガニ漁、サクラエビの秋漁、さらに山の幸ジビエの狩猟が解禁。サツマイモやカボチャなどの甘味もピークです。
鍋に最適な冬野菜の白菜や大根、春菊がおいしい季節です。海の幸もカキやホタテが旬を迎え、魚は脂がのって旨味が増します。
年が明け、旬を迎える魚が一年で最も多いのがこの時期。アマダイやアカムツ、イカやアカガイが出まわります。
ホタテやタラ、あんこうなど鍋に入れたい魚が豊富。蕾菜やアスパラ菜などが花芽を伸ばし、春の訪れはすぐそこです。
富山のホタルイカ漁が解禁。あさりや蛤などもおいしく、潮干狩りのシーズンを迎えます。山菜が出始めるのもこの頃。
アスパラガスやたけのこが出まわり、新タマネギや新ジャガイモの収穫も始まります。真鯛や鰆も獲れ、春到来です。
初鰹が最盛期を迎えます。野菜は、絹さややスナップエンドウなどの豆類がおいしい季節となります。
キュウリやピーマン、空芯菜やつる紫などの夏野菜が出始めます。海の幸は鮎やキス、トビウオ、マアジが旬を迎えます。
スズキやトビウオ、真アジに加え、鮎やハモも旬真っ盛り。茄子やズッキーニ、ゴーヤーなどの夏野菜が食卓を彩ります。