心地よい食感と芳香茸
秋も深まると、食道楽の視線は山に向けられます。里芋に銀杏、栗なども魅力的ですが、何と言っても秋の山の幸の代表格といえば「茸」。この時期、多くの料理で目にすることが多いと思いますが、今回は「茸」が主役、オンリー茸の料理をお届けします。
秋も深まると、食道楽の視線は山に向けられます。里芋に銀杏、栗なども魅力的ですが、何と言っても秋の山の幸の代表格といえば「茸」。この時期、多くの料理で目にすることが多いと思いますが、今回は「茸」が主役、オンリー茸の料理をお届けします。
【オステリアバル リ・カーリカ】東京・学芸大学
世界的にみればトリュフと双璧の“名声”を博しながら、日本ではまだ、イタリアン好きのみが独占している感がある「ポルチーニ茸」。主にイタリア料理で重宝されるこの茸、なかには肉料理にパスタ、さらにはスープやリゾットで使われているのに気付かずに食していた、なんて方もひょっとしているのかもしれません。
それならばこの機会にシンプルな調理法で食材としてのポテンシャルを問い、その魅力を広く伝えるべき。そこで今回は「余計な手は加えない」をコンセプトに、イタリアンフリークで連日、盛況の【オステリアバル リ・カーリカ】の『ポルチーニ茸のソテー』を賞味します。
「今回のものは特に大きい」と店主の堤さんも驚くポルチーニ茸はバター、塩コショウ、にんにくオイルで味付け。
先にオチから話せば、この料理はシャキシャキとした軸と、口で蕩けるかさの食感が醍醐味。そのため、「味付けは“ポルチーニ茸の背中をそっと押す程度”にシンプルに。重要なのは火入れ」なのだとか。程よく熱が入ったポルチーニ茸は仕上げにラルド(豚の脂)、オリーブオイルをかけて完成を迎えます。
テーブルに運ばれるまでの間に店内に満たされる芳香。「ほかのテーブルに運ばれるこの料理をみて、つられてオーダーする方も多い」という話も納得です。そしてその味は…。ぜひ、お店でご確認あれ。
【炭火焼鳥 上野広小路 鳥恵】東京・上野広小路
英語で「shiitake」、フランス語で「le shiitake」と呼ばれ世界から受け入れられている「椎茸」。日本人に馴染み深いこの食材、実は鮮度が落ちやすいため、悪くなったものを食べていたずらに評価が下がっているという向きもあり。もともと出汁に使われるほど旨味の強い食材、それならば、質と鮮度の高い「椎茸」を使った料理なら、名誉を挽回できるはず。
そこで白羽の矢を立てたのが、食材にとことんこだわり、絶妙な火入れで供する串ものに高い評価が集まる炭火焼鳥の店【上野広小路 鳥恵】。この店の『椎茸串』、やはり従来のそれとは一線を画すようで、常連客から酒のアテに単品でオーダーされるケースも多いのだとか。
一度、食べた者を魅了してやまないその逸品、調理は至ってシンプル。軸を切った椎茸のかさの上の部分を最初に、「勘と経験」を頼りにリズムよくひっくり返し、そこに、鴨肉を弱火でじっくり2時間ほど煮込み水分を飛ばした「鶏油(チーユ)」を刷毛で軽く塗り、気持ち“艶”がでてきた椎茸に鶏塩を軽くまぶして完成です。
炭火と「鶏油」で香ばしさを纏ったことで、椎茸独特の風味は鳴りを潜め、その逆、椎茸の旨味に奥行きを生み出しています。従来の焼鳥店ではどこか“箸休め”的なポジションに追いやれている椎茸ですが、この店でその味の良さを再評価してみてはいかがでしょうか。
【しんぽ】東京・杉並
西荻窪駅南口、居並ぶ飲み屋街に立ち込める煙と誘惑を越えて、その先に待つのはトロ函の積みあがる居酒屋【しんぽ】。カウンターを埋めるお客はここを一軒目に選ぶ「食に前のめりな方々」と店主の新保さんは呼びます。その期待に応え、新保さんは毎朝市場に足を運び、納得のいく食材を目に、手にしてはその日のメニューを練るのだそう。
「旨みの出汁を全部使う炊き込みご飯や、バター炒めもいいけれど、熱に弱い舞茸の旨みや栄養を逃さずに、さっと揚げて仕上げられる天ぷらが一番美味しいでしょうね」と話す新保さん。
子どもの頭ほどの大きさの株から房を剥ぎ、薄くタネをくぐらせて、油の中へ放ります。パチパチと心地よい音の中から衣の香ばしさと舞茸の匂いが渾然と立ち上り、もう喉が鳴ります。
香りを振りまきながら、踊るような姿で皿に盛り付けられた大ぶりの舞茸にかぶりつくと、歯触りはザクッと衣と身を捉えて軽い、噛みしめると、じゅわっと旨みのしみだすジューシーな茸の厚み。
いつの間にか空になった酒杯に、急ぎもう一杯を注いでもらうと「ほら、もう前のめりになっています」と笑う、店主と常連につられて笑う。まだ鼻孔に残る茸の香と共に、晩秋の夜をもう少し長く過ごしましょうか。
PICK UP
パプリカやししとうなどの唐辛子類が旬を迎え、ビールのお供、枝豆も欠かせません。トビウオやスズキ、シマアジも収穫期。
秋の味覚の王様、松茸が店頭に並びます。サンマの水揚げがはじまり、たっぷりと脂がのった戻り鰹の季節です。
収穫の秋、里芋類やカボチャなどがおいしくなる季節です。サンマに脂がのり、イワシやニシン、イカがなども旬を迎えます。
ズワイガニ漁、サクラエビの秋漁、さらに山の幸ジビエの狩猟が解禁。サツマイモやカボチャなどの甘味もピークです。
鍋に最適な冬野菜の白菜や大根、春菊がおいしい季節です。海の幸もカキやホタテが旬を迎え、魚は脂がのって旨味が増します。
年が明け、旬を迎える魚が一年で最も多いのがこの時期。アマダイやアカムツ、イカやアカガイが出まわります。
ホタテやタラ、あんこうなど鍋に入れたい魚が豊富。蕾菜やアスパラ菜などが花芽を伸ばし、春の訪れはすぐそこです。
富山のホタルイカ漁が解禁。あさりや蛤などもおいしく、潮干狩りのシーズンを迎えます。山菜が出始めるのもこの頃。
アスパラガスやたけのこが出まわり、新タマネギや新ジャガイモの収穫も始まります。真鯛や鰆も獲れ、春到来です。
初鰹が最盛期を迎えます。野菜は、絹さややスナップエンドウなどの豆類がおいしい季節となります。
キュウリやピーマン、空芯菜やつる紫などの夏野菜が出始めます。海の幸は鮎やキス、トビウオ、マアジが旬を迎えます。
スズキやトビウオ、真アジに加え、鮎やハモも旬真っ盛り。茄子やズッキーニ、ゴーヤーなどの夏野菜が食卓を彩ります。