シェフのヨコガオ vol.04 宗像康雄 氏

ビストロと自然派ワインを求めて

有機野菜でつくる素朴な料理と無添加の自然派ワインが存分に味わえる「メリメロ」。フランス語で“ごちゃまぜ”という意味をもつこの店では旬のおいしさを身にまとった、さまざまな料理が飛び出す。スイス・ローザンヌ2つ星、フランス・カンヌ3つ星レストランにて厳しい修業をかさね、パリ郊外では料理長をもつとめた経験を活かし、「もっと気軽にフレチを味わってもらいたい」と願う、宗像シェフのあたたかいヨコガオに迫った。

撮影/永友 啓美

フランスで培った自然派素材へのこだわりと自慢のワイン

毎日、天然酵母をつかったパンを焼くことから宗像シェフの1日がはじまる。ランチでもディナーでも食べてもらえるよう、それはそれは大きな自家製パン。シェフ自慢の大きなワインセラーで発酵させるんだとか。「夕方から夜にかけて仕込んでおくと酵母の具合がちょうど良いんですよ」と、その絶妙な加減にシェフのこだわりが伺える。

そうはいっても、「シェフを志したのは、友達に誘われたから」というから驚きだ。まさかここまで自分がハマるとは思ってもみなかった世界。やはり踏み入れた世界はとても険しく、当時の日本では学べる環境もあまり整っていなかったという。

これ以上時間は無駄にできない―。そう思ったシェフは後先考えず、「本場で確かめよう!」と決意し、渡欧したという行動派。結果、約5年にもわたる数々の経験は計り知れないものであり、知となり、技となり、今の自分がある。帰国後は雇われシェフとして数店舗の料理長をつとめたが、オリジナルを求めてついにここ、飯田橋に「メリメロ」をオープン。次第にその人気は高まり、ランチはいつも満員なんだとか。

それもそのはず。素材は国内外から取り寄せるという徹底ぶりだ。かれこれ約12年前からの付き合いになる、九州は阿蘇のふもとから取り寄せる野菜は絶品とのこと。「やはり気候や環境に影響を受けやすい野菜は、虫が出ず農薬に侵されていない土地で育ったものを選んでいます」 と、自然な野菜本来の味わいが楽しめるように心がけている。実際に足を運び、行き着いた地での作り手との出会いや関係をとても大事にしているという宗像シェフのあたたかさが、からだにも心にも優しい料理を生み出しているのだ。

魚介類は、傷のつきにくい一本釣りにこだわり網釣りは使わない。新鮮な生簀から意気のいいおすすめを送ってもらい、その日のうちにメリメロの食卓に並ぶのだ。ランチのラインナップも毎日飽きのこない工夫をしている。「これを求めて毎日訪れてくれる常連さんもいるんですよ」と普段は寡黙な印象のシェフも無邪気な笑顔で語ってくれた。

宗像康雄 氏

自然派ワインと白金豚の美しいマリアージュ

メリメロはランチだけでは終わらない。注目すべきは自然派ワインのコレクション。メリメロでは、フランス国内でもわずか3%しか生産されていない、といわれている無添加の自然派ワインのみを、2畳ほどある広いワインセラーいっぱいに保管しているのだ。

白金豚との出会いは約14年前。岩手のブランド豚であり、プラチナポークと称される“白金豚”がイチオシだと豪語する。部位の選定にもかなり試行錯誤し、バラ肉に行き着いた。「肩ロースだとさっぱりしすぎ。見た目もそそるスペアリブも試しました。年配のお客様でも楽しめる食べやすさと、脂の加減が噛むほどにジュワーっと広がるちょうど良いバランスを考えると、やはりバラ肉が最高です」と宗像シェフ。オープン当時から変わらない、「白金豚 燻しばら肉のロースト」はメリメロの人気メニューだ。独自のソミュール液に3日間漬け、燻すことで芳ばしい香りと旨味が増し、味がよりしっかり馴染むのだ。気になるソーセージも仕込みはとてもシンプル。豚肉と塩と胡椒と少量のスパイスを加えて、例のワインセラーで1週間熟成させるところがポイント。「この熟成された、腐る一歩手前が一番おいしいんですよ」 もちろん白金豚だけで贅沢に腸詰されたソーセージの見事な太さと長さと焼き加減に思わず唾をのむ。

付け合わせは旬菜を使い、根っこを赤らめたおいしそうなホウレンソウやキャベツ、レンズ豆などで上手な引き立て役を演出。「お客様においしく食べていただければそれだけで満足なんです」と手間ひまを惜しまず、その時、その一瞬に最適なメニューを食べていただくことに力を注ぐ。シェフのそんなヨコガオがとても素敵だった。

シェフのウラワザ〜鶏肉を1日でおいしくする方法〜

「鶏肉は新鮮さで味が決まるんですけど、実は1日でおいしくする方法があるんです」と宗像シェフからの驚きのひとこと。
家にある材料でできるというそれは、玉ねぎと、にんにくやセロリなどの香味野菜をスライスし、塩少々と混ぜ、生の鶏肉に手際よく揉み込む。そう、なんとマリネするだけ。そして冷蔵庫で1日寝かせ、あとは好きな調理法で料理する。
煮るもよし、焼くもよし・・・。
部位はモモ肉がおすすめだが、
ムネ肉やササミでもOKだそう。
こんな応用の効く仕込みは、経験
豊富な宗像シェフならではの
オリジナルレシピだ。

シェフの記憶に残るシェフ〜自然派ワインとシェフの心得〜

“良いもの(素材)を探すより、良い人に出会うこと” ―その結果、良いものに出会えると真剣に語ってくれた宗像氏。
日本での修業時代、いくら本を読んで研究しても、どうにも埒があかなくなり、「自分の目で確かめるしかない!」と日本を飛び出したシェフ。現地でたまたま紹介してもらった、故パスカル・サンタイエ氏とは、1時間しか寝れないほど忙しい日々をともに過ごしたんだそう。
「約20年前、90年代にはまだそんなルートがない中、生産者に直接会ってワインを選んだんです。寝る間も惜しまず山にきのこを採りに行ったり。彼が、素材へのこだわりやワインのすべてを教えてくれたおかげで今があるといっても過言ではないですね」
笑顔の先には恩師との想い出なくしては語れないという深いまなざしがあった。

メリメロ (Meli−Melo) 【東京・飯田橋】

【営業時間】
[平日] ランチ 11:30〜15:00 (L.O.14:00) / ディナー 18:00〜24:00 (L.O.22:30)
[土祝] ランチ 12:00〜16:00 (L.O.15:00) / ディナー 17:00〜23:00 (L.O.22:00)
【定休日】
日曜日
【TEL】
03-3263-3239

詳しく見る

メリメロ (Meli−Melo)

新着記事

鈴木好次 氏

独自に研鑚を重ねた、こだわりの割烹料理

鈴木 好次 氏
【東京・学芸大学】

谷 利通 氏

「美味しい瞬間」にこだわるフレンチの名料理人

谷 利通 氏
【東京・南青山】

木下 威征 氏

フレンチの枠を超えた独自の「木下料理」を追求

木下 威征 氏
【東京・白金】

高見 博史 氏

伝統に独創性を盛り込んだ大人のイタリアン

高見 博史 氏
【東京・渋谷】

田中義和 氏

足し算のフレンチにこだわる個性派シェフ

田中 義和 氏
【東京・麻布十番】

深町正男 氏

山の上ホテルのてんぷらの味を伝承する職人魂

深町 正男 氏
【東京・日本橋】

河野 透 氏

上質なフレンチを生み出す、職人気質の料理人

河野 透 氏
【東京・恵比寿】

高瀬健一 氏

柔軟な姿勢で自在に変化するイタリア料理

八木 康介 氏
【東京・代官山】

高瀬健一 氏

菜食健美がテーマの広東料理

高瀬 健一 氏
【東京・丸の内】

原田慎次 氏

「香り豊かなイタリアン」を生み出す料理人

原田 慎次 氏
【東京・銀座】

トレバー・ブライス 氏

フレンチをベースに独創的な和食をつくる英国料理人

トレバー・ブライス 氏
【東京・王子】

木下威征 氏

フレンチの枠を超えた、独自の「木下料理」

木下 威征 氏
【東京・白金】

大矢弘榮 氏

ホテルのランチバイキングの立役者

大矢 弘榮 氏
【東京・野方】

玉木 裕 氏

四季を感じる、日本人向けフレンチ

玉木 裕 氏
【東京・銀座】

高見 博史 氏

伝統に独創性を盛り込んだ、大人のイタリアン

高見 博史 氏
【東京・渋谷】

山崎 美香 氏

江戸料理をこよなく愛する女将の鍋

山崎 美香 氏
【東京・神楽坂】

小林 武志 氏

丁寧さへの追及が生んだ、独自の中華

小林 武志 氏
【東京・三田】

秋山 能久 氏

美しさを追求した和の野菜料理

秋山 能久 氏
【東京・銀座】

木村 巧 氏

誰もがときめく、芸術的割烹料理

木村 巧 氏
【東京・西麻布】

片岡 護 氏

笑顔を結ぶパスタ

片岡 護 氏
【東京・西麻布】

岡本英嗣 氏

東京・銀座に現れた日本料理の新星

岡本英嗣 氏
【東京・銀座】

宗像康雄 氏

ビストロと自然派ワインを求めて

宗像康雄 氏
【東京・飯田橋】

アグース・ウィアント 氏

インドネシアの家庭料理 〜故郷の味を伝える

アグース・ウィアント 氏
【東京・目黒】

福田憲一 氏

西麻布の名店で味わう情熱イタリアン

福田憲一 氏
【東京・西麻布】

水野敏行 氏

野菜を味わうためのフレンチレストラン

水野敏行 氏
【東京・原宿】

≫「シェフのヨコガオ」トップページへ

▲ビストロと自然派ワインを求めて 〜 宗像康雄 氏 ページトップへ

Back to Top