シェフのヨコガオ

撮影/鈴木信吾
文/ヒトサラ編集部

一生食べ続けられる、“日常”としての
本格イタリアンを進化させる実力派
パッソ ア パッソ 有馬 邦明 氏

素材を一番おいしい形に
することが僕の仕事です

My News

  • 2015.2.19

     まだ寒い日もありますが、食材には春の気配も少し感じられるようになってきました。
     そんな季節を楽しむために、【パッソ ア パッソ】で、3月からコースの中に組み込んでいるのが、『菜花のリゾット』。カブ菜や菜の花など、その日に届けられる最も良いアブラ菜を使っています。春が深まるにつれ、緑が濃くなっていく様もこの一皿から感じていただけると思います。

Interview

東京の下町・門前仲町にあるイタリアン【パッソ ア パッソ】。
秋冬のジビエを筆頭に、魚介や野菜など、
全国の信頼できる生産者たちから届けられる逸材を、
絶品イタリアンに仕上げる有馬邦明シェフは、
どのように生産者と、そして自らの料理と向き合ってきたのか。
そのヨコガオに迫りました。

ぼくが食材を探す旅をはじめた理由

――有馬シェフは、素材の美味しさを引き出す達人として知られています。
 たしかに、今では、素材を一番おいしい形にすることが料理人の仕事であり、僕の仕事だと捉えています。でも、そういった考えにいたったのは、5〜6年前のことです。30代半ばくらいまでは、イタリアで修行した時代の良いイメージだけで仕事ができていました。技術と知識があれば、ある程度の料理がつくれて、お客様から「楽しい、美味しい」って言ってもらえ、人の輪の中心にいられる…でも、そんな夢のような話は続かないですよね。
 歳を重ね、足元を見つめなおしたときに、たとえば、僕はフォアグラをクリスマスにしか扱ったことなかったことに気づいたのです。年に1回しか使わない料理を美味しくできるわけがありません。だとしたら、いろいろな素材を“日常”にしないといけないと思ったわけです。使いこなさないと、良さを引き出すことはできないという考えから、いろいろな素材への追求が始まりました。
――休みがあれば全国の生産地のもとを訪れているとお聞きしています。
 そうですね。僕の場合、何かを判断する時は、人との出会いがきっかけになりますから。ちょうど食材に対する意識が出てきたころに、中勢以の親方に牛の生産者さんのところに連れて行ってもらったんです。それまで生産者さんに触れ合う機会がなかったのですが、実際にお会いしたら、本当に良い人で、「この人が育てた牛だったらもう頑張るしかない」という気持ちになりました。だから、食材の良さとは、僕の中でどんな人がつくっているかということとイコールです。「あのおじいちゃんがつくっているんだったら、あのおばあちゃんがつくっているんだったら、このお姉さんがつくるんだったら、俺が使う」って(笑)。
日本がイタリアの21番目の州だったら
どんな食材を使って、どんな料理をつくるか

――そういったアプローチの中で、イタリアで経験したことが役に立ちましたか。
 24歳から約2年間、ミラノやトスカーナなどイタリアで修行しているのですが、本当に行っていて良かったと実感できたのは最近のことです。あのときの経験は、こういうことだったのかと膝を打つことは最近の方が多いです。イタリア人がいかに食べることを大事にしているかが、ようやく理解でき始めてきました。
 たとえば、ジビエの使い方に関しても、フランスではかつて狩りに行って、戻ってくるまでに1〜2週間かかっていました。そのような状態の肉を、美味しく食べさせるための努力を一生懸命した結果、今のフランス料理のジビエ料理が誕生しています。一方で、イタリアでは、狩ってから料理をするまでにそれほど時間はかかっていません。なので、もっとさっぱりと焼いただけのような調理法が多いわけです。より日常に近い料理、食材としてジビエがあることがわかります。  たとえば日本がイタリアの21番目の州だったとしたら、どんな食材を使って、どんな料理が生まれたか。それを考えたときに生れた料理の一つが、ぼくにとってはスープです。イタリアンのコースでは、スープを組み込むお店はあまりないんですが、水の豊かな日本では、昔から汁物は欠かせません。軟水なので、素材に対して、とてもクリアなスープができます。旬の食材とあわせて、さらにその日に使うジビエの骨などから取った出汁を使うことで、美味しい料理ができあがります。  食材や調理法の背景にあるストーリーや意味をきちんと理解し、単にアレンジしただけではないアプローチをとりたいと考えながら、仕事に向き合っています。

――そもそも、有馬シェフにとってイタリア料理とはどんな存在ですか。
 イタリア料理は、洋食の中で一番基本だと思っているんですよ。それは謙遜しているわけではなく、毎日食べ続けられる、価値のある料理だということです。そういう日常としてのイタリア料理を考えるとき、日本で、本場の味を求める必要はないと思っています。その土地の料理を食べたかったら、そこに行くしかないんです。東京のなかにイタリアのような異空間をつくりあげたとしても、ドアを開ければ、そこは東京なのですから、食事としては、日本の状況に合ったものをつくった方が正解だと思います。それをイタリアの技術と知識を使って落とし込んでいく。そんな料理をこれからも追求していきたいと思います。
(2015.2.9取材)

シェフの裏ワザ

【パッソ ア パッソ】流、自家製リキュールのつくり方

ワインに料理とのペアリングがあるように、その考えはリキュール類にも通じます。
料理の食材にこだわるように、自家製で漬けるリキュールにも、思い入れの食材を使ってみれば、
食卓がより一層彩りゆたかになるでしょう。

  1. 1.お気に入りのフルーツを2kg、ザラメを2kgを瓶に入れる
  2. 2.ホワイトリカーを1.がひたひたになるまで注ぐ
  3. 3.最低、6か月はそのまま保存する
  4. 4.ストレート、オン・ザ・ロック、ソーダ割りなどお好きな飲み方で楽しむ
パッソ ア パッソ(東京・門前仲町)
【営業時間】
ディナー 18:00〜21:30
L.O. 定休日:水曜日
【電話番号】
☎お問い合わせ専用番号:03-5245-8645
平均ディナー予算:13,000円
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