日本酒に関する深い愛情、豊富な知識から、時に同業者から“仕入れるべき銘柄”のアドバイスを求められるという竹内さん。
多くのお店で日本酒が取り扱われる今、美味しい日本酒と出会えるコツを伺いました。
全国から鮮度の保たれた日本酒が届く時代だからこそ、お店での扱いに注目する
“日本酒ブーム”という言葉もある通り、最近では日本酒を扱うお店、それを専門とするお店が増えてきました。個人的な見解ですが、ここにはお客様からの需要以上に、若手を中心とした小さな酒蔵の台頭が多分に影響していると思っています。彼らが登場した背景には、冷蔵技術の発達が挙げられます。自分の味を鮮度を保った状態で全国へ提供できる、これを担保に多くの銘柄が市場に出回っているのです。冷蔵技術の発達と、新たな酒蔵の登場により業界全体が切磋琢磨する体質ができたことで、どれも概ね美味しい、80点の日本酒が増えてきているのが現状。お酒を提供する私たち、それを飲むお客様にとってはうれしい状態ですよね。
東京にいながら全国から鮮度を保たれた日本酒がお店に届く環境が整ったわけですが、それならどのお店で飲んでも良いのか、というと必ずしもそうではありません。例えば、お店に専用の冷蔵庫はしっかり完備されているか。なかには寝かせたほうが良いものがあるのですべてを、とは言いませんが、せっかく新鮮なまま届いた日本酒がお店でずさんに管理されていれば、意味はないですよね。スタッフの注ぎ方にも注目してみてください。一升瓶の注ぎ口と酒器が接触していてはダメ、上からドボドボと注いでいるお店も日本酒を大切にしているとは思えませんね。そもそも水とアルコールはゆるやかに結合しているので、やさしく注がないと酒蔵が心血を注いでつくった本来の味が楽しませんから。
旬の食材を使った料理には、旬の日本酒をあわせれば外さない
日本酒好きという方の多くに「辛口」をオーダーされる方がいらっしゃいますが、私は同時に香りについても伺います。香りは大別すると2つ。軟水を使った「軽快」なものと、硬水を使った「しっかり米の香り」がするものがあります。「辛口」と聞くとすっきりした味というイメージが湧きますが、香りによって印象はまったく異なります。飲む際、オーダーする際はこの当たりも意識してみてはいかがでしょうか。
これから日本酒を知りたい、銘柄や味についてあまり詳しくないという方であれば、旬のお酒をオーダーすることをおすすめします。例えば、秋であれば新酒のあらさが消えてほどよく熟成された「ひやおろし」などですね。と言うのも最近は、季節の食材や料理と相性の良い味の日本酒を酒蔵側がつくってくれるからです。季節の食材を使った料理には、季節のお酒を合わせる、イタリアンやフレンチなら旬の食材が使われる前菜にあわせてみれば間違いないと思います。
もうひとつ、日本酒の品ぞろえが豊富なお店ですと、2~3種の「飲み比べセット」が用意されていると思うのでこれをオーダーしてみるのもおすすめです。お店によって得意なお酒、好きなお酒があるわけで、それと自分の好みを合わせられる日本酒好きが最初にオーダーするのに絶好のメニューです。質の良いお酒が多く出回っている現状だからこそ、自分の好みの銘柄はコレ、と決めつけず、季節ごと、お店ごとに好きなお酒があったほうが面白いと思いますよ。