「炭トキドキ薪」をうたう中目黒の人気店【ロデオ】。豪快なイタリア料理が気軽に楽しめるこのお店では、常時数種並ぶ和牛の炭焼きなどのメニューが人気だ。そんな【ロデオ】のシェフ、渡辺大祐さんが注目しているのが【なかやま牧場】の黒毛和牛「神石牛」だ。日本産の数多ある牛肉のなかから【なかやま牧場】の肉を選んだ理由とは――。日本各地の生産者さんから直接食材を仕入れ、志の高い生産者を応援したいという料理人を虜にした【なかやま牧場】の肉の魅力を取材した。

すっきりとした脂と肉の味がウマい「神石牛」の赤身肉

今回【なかやま牧場】から【ロデオ】に届いたお肉は、「ミスジ」と「カメノコ」。美しく大きな肉は迫力満点

 中目黒から徒歩5分ほどのところにある、イタメシヤ【ロデオ】。「本格イタリアンが気軽に食べられる食堂」をコンセプトにした予約困難の人気店で、【渋谷ロデオ】、恵比寿【ロデオ・ハナレ】、六本木【ツギヒロ チャン】と、次々と支店をオープン。その中でも1号店の中目黒【ロデオ】は特に活気にあふれ、カウンター奥の大きな焼き台で焼かれる、ステーキやハンバーグを目当てに多くの人が集まる。特に人気の和牛のステーキ類は常時3~4種取り揃えるほど力を入れたメニューだ。

 国内外のあらゆるお肉を取り扱った中でも、【なかやま牧場】の牛肉のファンだというのはシェフの渡辺大祐さん。「【なかやま牧場】の飼育や加工へのこだわりを知り、興味をもってこちらのお肉を使い始めました。柔らかくてみずみずしいのに、旨味が強いのが特徴ですね」。

ミスジは大きな塊のまま、炭火でグリル。40分ほどかけて、じっくりと火を入れていく

 今回、渡辺さんに調理してもらう【なかやま牧場】の肉は神石牛の違う部位を2種。もも肉の中に位置するしんたまの一部で、肉質の繊細な赤身肉「カメノコ」と、牛の肩の部分にある希少部位で、焼肉でもおなじみの「ミスジ」の塊を用意してくれた。【なかやま牧場】の「カメノコ」は以前から店で使っているが、「ミスジ」を扱うのは今回が初めてだという。

 どちらの肉も、店で10日間ほど熟成してからスタンバイ。「いつも【なかやま牧場】さんと相談しながら、雌限定で、うちの料理に適した部位のお肉を仕入れています。他の牧場のものに比べてドリップも少なく、それでいて柔らかくてジューシーなのが特徴ですね。カットした時の断面も美しくて、素晴らしいです。ミスジもサシの入り方もキレイですね」と渡辺さん。また、【なかやま牧場】では屠畜してからすぐに加工場に運ばれ、カット後出荷するため、鮮度のいいものが店に届く。その新鮮な状態から、肉の状態を見極めて自分の店で寝かせることによって目指す味わいに持っていけるのも使いやすいポイントだと話してくれた。

それぞれに合った調理法で、みずみずしさと旨味を存分に味わう

薄くスライスした「カメノコ」を軽く炙って仕上げる『マッシュルームと牛肉のカルパッチョ』(1,680円)

 まずは赤身肉のカメノコを、カルパッチョに。「脂の少ない赤身肉の部分なのに、とても柔らかいのが【なかやま牧場】のカメノコの特徴です。その良さを存分に味わっていただけるのが、このカルパッチョ。最近はヘルシーな赤身肉が注目されていることもあり、人気の一品ですね」と渡辺さん。薄くスライスしたカメノコに、静岡県富士市のマッシュルーム農園【長谷川農産】のマッシュルームをたっぷりと乗せ、熱したオリーブオイルをかけて仕上げる。味付けは塩・コショウとレモンのみ。マッシュルームの香りをまとったカメノコはとろけるほどに柔らかく、ほんのりとした酸味とともに心地よい甘味が感じられる。シェフ曰く、「【なかやま牧場】のカメノコは少し厚めに切ると柔らかさが際立ち、肉の味をしっかりと楽しめる」のだという。【なかやま牧場】が目指す、“やさしい味わい”をまさに実感できる一皿だ。

焼きあがったミスジは、カットしてもドリップが出ず、しっとりとしていて美しいピンク色

 続いて、渡辺さんも今回初めて調理するというミスジは、大きな塊のままグリルに。【ロデオ】ならではの大きな焼き台で、焼く、休ませる、を繰り返し、炭火で40分ほどかけてじっくりと焼いていく。「【なかやま牧場】のお肉はみずみずしくてジューシーですから、湿り気のある火が出る薪よりも、乾いた火が出る炭で、余分な水分は飛ばしながら焼くのが良いと思います。余分な脂も落としながら、このみずみずしさと旨味を逃さないように、時間をかけてゆっくりと焼いていきます。これだけサシが入った【なかやま牧場】のお肉を使うのは初めてですが、断面を見ると脂もきれいですね。店で10日ほど熟成させたことで、旨味もさらに凝縮されていると思います。これからどのように焼きあがるか、私も楽しみです」。

『ミスジの炭火焼』(150g 3,980円〜 ※写真は200g)。レモンとマスタードシートのピクルスを添えて

 焼きあがったミスジはカットしても全くドリップが出ず、それでいてしっとりとしている。香ばしく甘い脂の香りと美しいピンク色が食欲をそそる。大きくカットされたお肉を口に運ぶと臭みはまったくなく、口いっぱいにあふれる肉汁はすっきりとしていて、その中で肉の旨味がしっかりと感じられる。200g程度の一皿が、一人でもペロリと食べられてしまうほどの食後感だ。

 渡辺さんも、「お肉によってはニンニク醤油と合わせてお出しするのですが、これは必要ないくらい旨味がしっかりしていますね。でも脂はきれいな味わいで後に残らない。おいしいです」と目を細める。そして、こうしたシンプルに食べたくなる、きれいな味わいの赤身肉はゲストにも評判がいいという。

「最近は、お客様からも”牛肉は赤身肉を食べたい“というリクエストを多くもらうのですが、実は赤身の肉は品種によっては肉質が硬く、炭焼きや薪焼きには難しいものもある。この神石牛の柔らかさとジューシーさ、そして脂のすっきりとした口溶けは、今の時代のお客様のニーズにあっている味わいですね」。

日々キッチンに立ち、各地のお肉を扱ってきた渡辺さん。今回あらためて【なかやま牧場】の肉の魅力を感じたと話す

 また渡辺シェフが大切にしていることは、その食材がどうつくられているかということを知ること。料理人として、その生産背景は、お客様の健康に直結する仕事だからこそ気になるそう。

「料理人としてお客様に料理を出す立場としては、安心して、自信を持っておすすめできるものを提供したいと思っています。地球環境、飼育環境などにこだわった【なかやま牧場】の肉は質もいいですし、これからも積極的に使っていきたいと思います」。

 地球にも牛にも人にも優しく、そしておいしい牛肉。それは、前ページで紹介したように、たゆまぬ企業努力のもとにつくられている。時代の急激な変化にともなう人々の嗜好の変化、環境問題。知らないうちに私たちはそうした渦中で生きている。「アニマルウェルフェア」という言葉はこれから食の未来をつくるうえでのキーワードとして、少しずつ光があたってくるだろう。
 けれど、その言葉だけを難しく考えるのは本末転倒。育てられる牛から働く人、そして料理する人から食べる人までみんなが幸せになることを実直に考えれば、おのずとその理念は実践されていくのだ。それは、【なかやま牧場】のおいしい肉を食べれば、だれもが笑顔で納得するに違いない。

ロデオ

ロデオ

電話 03-6451-2262
住所 東京都目黒区中目黒3-5-1 中目黒プレアタワー1F
アクセス 日比谷線・東急東横線「中目黒」駅から徒歩5分
営業時間 [月〜金]18:00〜24:00、[土]17:00〜24:00、[日祝]17:00~23:00
定休日 無休

写真/今清水隆宏 取材・文/河崎志乃

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