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  3. 宮古島のレストランがいま熱い!

島の風土が育む美食の旅へ 宮古島の
レストランが
いま熱い!
Hitosara special

伊良部大橋の開通に、下地島空港の新ターミナル開業。
「宮古島バブル」と言われて久しいが、レストランのレベルもここ数年で一気に跳ね上がった宮古島。
いや、昔からそのポテンシャルを秘めていた、といったほうが正しいかもしれない。
宮古島を面白くする個性豊かな5つのレストラン。
宮古ブルーの海と美食を楽しむ旅へ。

Photographs by Yasufumi Manda / Text by Ai Ozaki
Design by form and craft Inc.

  • 神の島と呼ばれる久高島(くだかじま)で獲れるウミヘビ「イラブー」の燻製。
    豚足とともに5時間ほどじっくりと煮込み、泡盛や日本酒の酒粕を加えて仕立てたスープが『オトーリ』スタイルで供される

    Restaurant État d'esprit レストラン エタ デスプリ

    琉球ガストロノミーを世界へ
    若き天才が描く沖縄料理の未来形

     「ようこそ伊良部島へいらっしゃいました」
     シェフが高らかに声を上げると、ゲスト一人ひとりの盃にふわりと磯の香りを漂わせながら白い液体が注がれていく。目の前には、ろうそくの明かりに照らされぬらぬらと光る、真っ黒なウミヘビの燻製。液体の正体は、このウミヘビと豚足を泡盛とともに煮込んだスープだという。車座になって泡盛を回し飲む宮古島の伝統、「オトーリ」のオマージュであり、その名を料理名にも冠したコースの口開けとなる一杯だ。
     東京、パリ、ニースなどの名だたるフレンチの名店で研鑽を積んだシェフの渡真利泰洋氏。5年前、料理長に就任した【Restaurant État d'esprit】も、当初は正統派フレンチの色合いが強かったが、今年劇的な変貌を遂げた。その原動力となったのが「もっと、ここでしか出合えない料理を」との想いだ。ゲストが遠路はるばる島に足を運びたくなる、求心力溢れる料理とは何かを追求。そのために渡真利泰洋氏はまず、どんな食材もあえて島のものを使うと決めた。
     「おいしくないと言われる沖縄の魚も、ちゃんと処理すれば旨くなる。ここでしか獲れない食材で勝負すれば、自ずとオリジナリティも生まれてくるはず」
     たとえば、今、宮古島で害鳥として駆除の対象になっている孔雀もその一つだ。無闇に命を奪うのではなく“食財”として肉と骨からコンソメスープをつくり、アロエを練り込んだ宮古島の素面仕立てに。また金粉を散らして、渡真利氏が研究を重ねている琉球の宮廷料理をイメージした。さらに今後は、そんな島の味を引き立てる個性豊かな泡盛のペアリングもドリンクの主軸に据えていく。
     「もはやフレンチではなく、沖縄料理になりました」と渡真利氏。宮古島の“今”を自由な感性で表現すること。そしてまだ知られざる島の食文化を掘り起こし、未来へ繋げていくこと。新生【Restaurant État d'esprit】の進化に刮目したい。

    • 宮古島出身の渡真利泰洋氏。料理の道を志した当初から、地元で店を開くのが夢だったという
    • 【Restaurant État d'esprit】はリゾートホテル「紺碧ザ・ヴィラオールスイート」内のダイニング。店内からは伊良部の海が見渡せる
    • 元々宮古島にいなかったが、観賞用に持ち込まれ繁殖したことで害鳥に指定された『孔雀』を有効活用したひと皿
    • 新たな試みとして泡盛ペアリングがスタート。イラブチャー(ブダイ科の魚の総称)のひれ酒など、ここでしか飲めない希少な一杯も
  • 木下氏がオーナーを務める恵比寿本店 【AU GAMIN DE TOKIO】同様、全対面型オープンキッチンの鉄板焼きフレンチスタイル。
    カウンター越しの会話、手さばきなど、その一挙手一投足にゲストの熱い視線が注がれる

    Grand Bleu Gamin グラン ブルー ギャマン

    海の碧さに魅入られるように
    自由な発想で料理の深淵に挑む

     伝説的フリーダイバー、ジャック・マイヨールをモデルにした映画『グラン・ブルー』。1990年、当時18歳だった木下威征氏が修業先で訪れた南仏の街が、そのロケ地だった。旧市街の美しい街並みと透き通るような碧い海に胸打たれ、「いつかその名を自分の店につけたい」と抱いた夢が30年を経て、ついに実現する。しかも単なるレストランではない。木下氏自身も初の試みとなる、5部屋のプライベートヴィラを備えたオーベルジュ、その名も【Grand Bleu Gamin】だ。
     「今までの宮古島にない、新しい食材を」。それがオープン1年前から木下氏が着々と進めてきた壮大なる“仕込み”だ。たとえば、めぼしい生産者に声をかけ、市場に出していない野菜をつくって欲しいと依頼。これまで島になかったルッコラも、種を渡して栽培してもらうよう徹底した。「ないものは自分でつくっていく」。フロンティア精神溢れる木下氏らしいエピソードといえる。
     レストランはオープン11年目となる恵比寿の本店【AU GAMIN DE TOKIO】のスタイルを踏襲。ライブ感溢れるオープンキッチンから繰り出されるのは、フレンチをベースに宮古島の食材を取り入れた、独創性豊かな“木下料理”だ。代表的なひと皿『とうもろこしのムースと生うに』は、オニオンチップになるまで焦がした宮古島産玉葱を練り込んだクッキーを合わせて。はたまた『車海老のサイフォンスープ』では、島で養殖する車海老の頭をオーブンでカリカリに焼き上げ粉砕。鰹節とともにサイフォンでドリップし、エビの風味が溶け込む一番出汁を取ることで魚介の旨みが複雑に絡み合い、かつ限りなくクリアな味わいのスープを生み出している。
     しかしながら、まだまだ“木下イズム”の真髄からは遠いと本人は言う。
     「メニューはまだ完成形じゃない。もっととらわれず、ただただ自由に。究極、何も決めずに、その日の天気やお客様の求めるものにあわせて即興でつくっていくスタイルがいいのかもしれない」
     己のスタイルを追い求めて、料理という名の海に、木下氏はどこまでも深く深く潜っていく。

    • 軽く塩で締めて、シャーベット状になる寸前まで冷やしたイカと島アロエに、白バルサミコをあえてさっぱりと仕上げた一品
    • フランス産フォアグラと紅はるかの相性が抜群のテリーヌ。アーモンドはちみつソースとともに
    • 本店の『サイフォントマトラーメン』の進化版。こちらでは鰹節と車海老で出汁を取ったスープにカッペリーニを加える
    • 【Grand Bleu Gamin】は全5部屋からなる全室プール付きのプライベートヴィラ。ビーチからも近く、贅沢な寛ぎのひと時を過ごせる
  • 岩手県出身の桑田登氏。漁師の父と、農家を営む祖母を間近に見て育つ。幼い頃から川や海で釣りなどをして遊ぶのが好きで、
    そんな環境のなか魚への愛が育まれた。紆余曲折がありながらも9年前に【Fish taverna sambo】をオープンした

    Fish taverna sambo フィッシュ タヴェルナ サンボ

    店主自ら獲ってさばいて調理して
    魚好きによる、魚好きのための店

     「ずっと漁師だったオヤジの背中を見てきたんで、子どもの頃から魚が好きでした。ただ、『お前には無理だ』と言われて、跡を継ぐのは諦めたんです」
     そう語るのは【Fish taverna sambo】の店主・桑田登氏。その悔しさから一旗あげようと地元・岩手から遠く離れた宮古島へ移住したのは24歳のとき。ダイビングのインストラクターをしながら夜は飲食店で働く生活のなかで、次第に桑田氏は料理の楽しさに目覚めていく。修業を積みながら何千匹、何万匹という魚を捌き、気がつけば宮古島の魚の虜になっている自分がいた。オヤジに「お前には無理だ」と言われてから20年。独学で腕を磨き、がむしゃらに働いた末に、ようやく自分の居場所を見つけた気がした。その答えが【Fish taverna sambo】だった。
     ジャンルでいえばイタリアンだが、桑田氏は頑なにそれを否定する。「イタリアンだなんて、その道の方に怒られます。僕はただ、魚のありのままのおいしさを、生き様を伝えたいだけですから」
     そんな桑田氏の魚への愛情が顕著に感じられるのが『カルパッチョの盛り合わせ』だ。日によって異なる数種類の魚を、神経締めなどそれぞれに適した方法で処理して、旨みを最大限引き出すオイルとトッピングを合わせる。アカイカにはイカ墨でつくった塩をかけ、てぃらじゃ(コマ貝)にはアーサ(海藻)という旬の食材同士を合わせて。かと思えば、沖縄の高級魚のひとつ、シマアオダイは「捌いたらお腹らからエビが出てきたので」と仕上げに車エビの足をちょこんとのせる。
     「お腹の中を見ると、その魚の個性が分かるんですよ。エビが好きな子、貝が好きな子、雲丹が好きな子……。そう思って食べると、味わいも違ってくる気がしませんか?」と桑田氏は相好を崩す。
     仕込みに追われ、最近ではなかなか好きな釣りや潜りに行けないそうだが、念願の船を手に入れたそう。夢は、お客さんとともに海へ出て宮古の魚をもっと身近に知ってもらうことだ。
     「魚をただ食べるだけに留まらず、生きた命としての存在を直に感じてほしい」
     そう目を輝かす桑田氏の言葉には、父と同じく、海を愛し、魚を愛する想いが溢れていた。

    • この日は9種類の魚を使った『カルパッチョの盛り合わせ』。ベースは塩とオリーブオイルのみ、あとは魚の特徴に合わせてトッピングを
    • 濃厚な甘みの完熟トマトやチコリ、プンタレッラなど。野菜は農園から直接取り寄せるほか、スタッフが手伝いで働く畑の朝採れを使用
    • ワインはすべてナチュール。お互いにやりとりのある、生産者の顔が分かるワイナリーのものを多く取り揃える
    • 店内はカウンター含め全20席の温かみある空間。スタッフ3名で切り盛りするため、入店の人数を制限することも
  • 沖縄の高級魚、トガリエビスのポワレをカブのスープ仕立てで バターでゆっくり火入れして甘みを出したカブを
    魚の出汁とともにミキサーへ。さらに、ヨーグルトを加えることで、ポワレを引き立てるまろやかな味わいに仕立てた

    ビストロ ピエロ ビストロ ピエロ

    いただく命に真摯に向き合い
    ゲストを笑顔へと導くひと皿に

     「素潜り漁もするし、最近では狩猟免許も取得したので、あとは野菜も栽培すれば完璧ですね」
     そうはにかみながら笑うのは、【ビストロ ピエロ】のオーナーシェフ、髙野貞人氏。すべての食材が自給自足とはいかないが、それでも店で出す魚は、知り合いの漁師か髙野氏自身が獲ったものだけを使う。例えば、この日ポワレにして供された宮古島の高級魚として知られるトガリエビスは、数日前に髙野氏自ら獲ってきたもの。鮮度が落ちたから火入れするのでなく、数日間寝かせて旨みを増幅させ、あえてのポワレ。それを可能にするのが、髙野氏の神業ともいうべき仕事だろう。
     「サンゴの下に隠れていることが多いトガリエビスは、人の気配を感じてそっと顔を覗かせることがある。その一瞬を狙い、水中銃でこめかみを一突きするんです」
     素潜り漁では、30メートル近くの深さまで潜ることもあるが、余裕がある時は水面に浮上してくるまでの2〜3分の間に、血抜きと神経締めの下処理まで済ませるというから驚きだ。南の魚ながら、寝かせて旨くなるわけである。
     一事が万事、【ビストロ ピエロ】ではそうした食材が料理となる。それらがおまかせ感覚で供されるのも、この店が愛される理由だろう。「今日は魚と野菜の気分」「ワインとおつまみくらいで」といった具合に、ざっくばらんなリクエストに、髙野氏は最大限の誠意で応えていく。
     そんなゲスト本位なホスピタリティ精神にはちょっとしたエピソードがある。それは髙野氏の調理師専門学校に通っていたときの話。授業の講師を担当していたのが、【Grand Bleu Gamin】の木下威征氏だった。髙野氏はその指導に感銘を受け、働き口を相談。その紹介先が、料理人人生の幕開けとなった。やがて、着々とキャリアを重ねた髙野氏は宮古島へ。店のオープン時に木下氏から贈られたのは、こんな言葉だった。「ピエロであれ」。ゲストを喜ばせることを最も重んじる木下氏の矜持が込められた一言だ。
     胸に光る数々のピエロのバッジは、毎年周年祝いに常連客から贈られたもの。命をいただく食材、接するすべての人に誠実に向き合う髙野氏の料理は、今日も島の誰かを笑顔にしている。

    • 数日前にシェフ自らが獲ってきたトガリエビス。夜行性のため、日中は岩陰などの仄暗い場所に隠れていることが多い
    • さっぱりとした甘みの島のトマトといちご、シェリ―ビネガーやクルミオイルを使ったドレッシングをかけた『島野菜のテリーヌ』
    • 茨城県出身のオーナーシェフ、髙野貞人氏。東京で働いていたが10年前、宮古島のイタリアンに異動。その後、再びフレンチへ転身
    • 入り口の扉を大きく開け放った開放的な店内には、テーブル席と8名がけのカウンター。どことなくレトロな、ほっと一息つける空間
  • 10年前、出身地である京都から宮古島へと移り住み【マラルンガ鉄板焼】の料理長に就任した花岡秀隆氏。
    柔和な人柄と軽快なトークでゲストを温かくもてなす。京料理の老舗で培われた食材の目利きは、ここ宮古島でも発揮される

    マラルンガ鉄板焼 マラルンガてっぱんやき

    京の料理人が南の島で辿り着いた
    五感を揺さぶる島の味わい

     よく「宮古島には四季がない」と言われるが、それは春夏秋冬の境を感じにくいからであって、無論、季節がないわけではない。しかし、【マラルンガ鉄板焼】のシェフ・花岡秀隆氏も、宮古島に来た当初、この季節感の希薄さに愕然としたという。
     「1年中葉っぱは青々としているし、2月に秋桜が咲いてるんですよ。目眩がしました」
     今でこそ笑って見せるが、その戸惑いは想像するに難くない。なにしろ、花岡氏が料理人としてのキャリアをスタートさせたのは京料理の老舗。四季折々の旬を何よりも重んじる、和食の世界に長年身を置いてきたのだ。
     43歳にして初めて関西以外で、しかも宮古島のリゾートホテルの鉄板焼店で働くというのは一世一代の大決断だった。しかし、迷いよりも一料理人として、宮古島の食材への純粋な好奇心が上回った。ゴーヤやオオタニワタリ、宮古ゼンマイといった彩り豊かな島野菜に、近海で獲れる新鮮な魚介類。食材にふれあい、調理していくなかで、一見すると分かりづらい、宮古島の旬も見えてきた。
     素材そのものの旨みをダイレクトに感じてもらうため、野菜はさっと焼き上げ、宮古島産の雪塩やアグー豚を使った肉味噌を添えてシンプルに。メインは、宮古島内だけで月10頭ほどしか流通せず、“幻の和牛”と称される宮古牛。本州の牛と比べるとサシの入りが少なく、さっぱりとした食べごたえ。噛みしめるほどに染み出るその独特の肉の甘みの秘密を、「ミネラル豊富な島の水を与えられて育つからかもしれない」と花岡氏は教えてくれた。
     パチパチと脂の弾ける鉄板の上で、肉厚なシャトーブリアンを切り分けながら、花岡氏は続けた。
     「お客様との交流も鉄板焼の魅力の一つ。珍しい食材を目の当たりにした驚きから会話が生まれる。そこから宮古島の食材の滋味深さを伝えていければ」
     「冬はいみじうさむき。夏は世に知らず暑き。」
     かつて枕草子のなかでそう詠われた京の都から、常夏の宮古島へ。花岡氏もまた、すっかり島に魅入られた料理人の一人なのだ。

    • 年間で150頭ほどしか出荷されない“幻の和牛”宮古牛のなかでも4等級・5等級の希少なフィレ・サーロインを使用
    • 「火を入れることで柔らかさが一番実感できるのが黒鮑」という花岡氏。肝とバター醤油をあわせた濃厚なソースで味付け
    • アルコールは泡盛のほか、ワインを多く取り揃える。なかでも力を入れているのが「KENZO ESTATE」のラインナップだ
    • 高級リゾートホテル「シギラベイサイドスイート アラマンダ」内の、洗練された空間で食事を楽しめる

新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、ご旅行の際には3密の回避やソーシャルディスタンスの確保など、十分に注意し感染予防を心がけください。また、飲食店の営業時間やメニューが一時的に変更になっている場合がございますので事前にご確認いただきますようお願い致します。宮古島の観光について、最新の情報は「沖縄県公式ホームページ」をご覧ください。

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