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アジアの中心となる新食都 福岡の
新旧5名店を訪ねて
Hitosara special

鮨バブルに、注目の新店ラッシュ、
2020年にはアジアNo,1レストランのシェフもやってくる。
いま最も熱く、注目を集める食都であり、
地理的にもアジアの中心にある福岡。
そんな新食都で必ず訪れておきたい新旧5名店がこちら。

Photographs by Hiromasa Otsuka / Text by Shinji Yoshida
Design by form and craft Inc.

  • シェフのスペシャリテ『海の幸のサラダ』。この日はトラフグ、茶ぶりナマコ、蒸しアワビ、
    車エビとともに佐藤自然農園の野菜がたっぷり。さまざまな調理法を施し、魚と野菜をこれでもかと楽しませてくれる

    GEORGES MARCEAU ジョルジュ マルソー

    シェフ自らが放血神経締め!
    素材力を追求する福岡フレンチの雄

     朝8時、【GEORGES MARCEAU】の店脇に一台のトラックが横付けされる。出勤途中のビジネスマンから不思議そうな視線を浴びつつ、荷台から次々と降ろされる活魚。そのまま厨房へと運ばれるかと思えば、次の瞬間、目を疑うような光景が繰り広げられた。裏口からシェフの小西晃治氏が現れ、手にした鎌を一閃。魚を気絶させ、エラに包丁を入れて、血を抜くのである。さらに魚は厨房へと運ばれ、専用のワイヤーを使い、次々と神経締めに…。
     放血は腐敗の元となる血を抜き、神経締めは死後硬直を遅らせ、熟成させやすくするために行うが、本来であれば、漁師や鮮魚店が行う仕事。それをなぜシェフ自ら行うのか。
     「漁師さんや魚屋さんは、何百、何千という魚に対して下処理を施し、かつ手早さも求められます。それゆえ、個体一つひとつに向き合える時間がどうしても短くなるんです。ならば、自分でやろう、と」
     小西氏がそれほどまでに魚にこだわるには訳もある。それは、20年前に店をオープンした頃の話。修業時代に学んだ全ての力を出そうとクラシカル一直線で勝負してきた料理が、福岡という土地に受け入れられなかった過去があったから。
     「福岡は食材が豊かでいいものばかり。そこら辺の居酒屋に行ったってリーズナブルに美味しい魚に出会えます。そんな土地でクラシカルなフレンチをやったって受けるはずがなかったんです。だったら、ここで食べる意味のあるフレンチをやろうとなりまして」
     スペシャリテの『海の幸のサラダ』はそんな小西氏の食材へのこだわりが詰まったひと皿。放血神経締めにされた鮮魚が出れば、野菜は大分の佐藤自然農園のものを使用。それらの魚や野菜にフレンチならではの仕事が施され、ひと皿のなかでそれぞれが個を主張しながら、見事な調和を見せるのだ。ほかのフレンチでは真似できない、この素材力。そこにシェフのテクニックが加わるのだから、福岡でフレンチをいただく意義がある。

    • 週に3回ほど、唐津の港より活魚が届く。この日だけは朝8時からスタッフが総出となって魚と向き合う。ほかのフレンチではお目にかかれない光景だ
    • 届いた魚は小西氏自ら放血し、神経締め。脊髄に穴をあけて針を通すのが一般的な神経締めだが、魚に負担をかけぬよう、小西氏は眉間から針を入れる
    • 『唐津産 黒アワビのステーキ 4種の調理法で仕上げた野菜 オマール海老のコンソメ』。フュメ・ド・ポワソンに漬け込んだアワビをバターで蒸し焼きにした

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