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アジアの中心となる新食都 福岡の
新旧5名店を訪ねて
Hitosara special

鮨バブルに、注目の新店ラッシュ、
2020年にはアジアNo,1レストランのシェフもやってくる。
いま最も熱く、注目を集める食都であり、
地理的にもアジアの中心にある福岡。
そんな新食都で必ず訪れておきたい新旧5名店がこちら。

Photographs by Hiromasa Otsuka / Text by Shinji Yoshida
Design by form and craft Inc.

  • 店内に個室をつくらなかったのも井本氏のカウンターへのこだわり。
    店内は極限までシンプルな内装にして、ゲスト、料理、手仕事が際立つ空間にした

    井本 いもと

    ライブ感、距離感、緊張感……
    その全てで心を掴むカウンター割烹

     薬院のはずれ、御所ケ谷という高級住宅地の一角に、実に端正な佇まいの店がある。それが、店主・井本達也氏が京都の割烹で培った料理ともてなしを求め、県外からも多くの美食家たちがやってくる日本料理店【井本】だ。
     「どうしても西中洲などの雰囲気が苦手でここを選びました」と笑う井本氏。2015年のオープン当初は、飲食店も少ないこの場所柄、なかなか客が入らない時代もあったそうだが、京都の【祇園 川上】で培った仕事を落とし込んだ料理は、やがて評判を呼び、地元福岡だけではなく県外へも広く知れ渡るようになった。
     「京都でやっていたから京料理と思われがちなんですが、自分がこだわりたいのは割烹料理。お客様のリアクションがわかるライブ感ある仕事ですね。だから板場は2段下げて手元をフラットにして見やすくしています」
     これが実に痛快。料理がつくられていく様を視覚的に楽しめると同時に、仕事をさらけ出すことで、ゲストに安心感をもたらすのである。それは、「下手な仕事などしていません。どうぞ見てください」と言わんばかりの井本氏の矜持でもある。
     そうして視覚的に楽しませつつ、ゲストの期待を高ぶらせて供される料理は、やはり大きなインパクトを与える。例えば、北九州の合馬の朝掘りタケノコは、カウンターにある炉を使って炭火で香ばしく焼き上げてから、たっぷりの鰹節と木の芽を添えて、春の香りを運ぶ。刺し身は、白甘鯛を軽く昆布締めし、松笠揚げにした衣をのせつつ、このこ(なまこの卵巣)を添えることで、白甘鯛をいろんな味わい方で楽しめるよう仕事を施す。
     このカウンターはまさに舞台といっていい。井本氏の一挙手一投足に目を奪われ、心を惹きつけられる。日本料理は楽しいものだと、改めて教えてくれる。

    • この日の椀は、玄界灘のトラフグの白子を京都の白味噌仕立てに。白子は炭火で表面を香ばしく焼き上げ、上にはうるいと柚子を添えた
    • 合馬の朝掘りのタケノコは、炭火で焼き上げる一方、穂先は刺し身にして上に添えた。焼くことで甘さが際立ち、生はフレッシュな味わい
    • 日本酒は福岡県や佐賀県を中心に15種ほど。キレがある酒が多いが、その中にも香りや旨みに幅のあるものをセレクトしている

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