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  3. 台湾のトップレストラン6<ファインダイニングの夜明け>

ストリートフードの聖地台湾に起きた ファインダイニングの
夜明け
Hitosara special

巧みなプレゼンテーションを交え、ゲストを楽しませることを突き詰めるファインダイニング全盛の世において、
これほどまでに勢いのある国はあるだろうか。
世界が注目するばかりか、日本のトップシェフ達も台湾への出店を加速。一体、台湾の地で何が起きているのだろう?
今の台湾ファインダイニングを代表する6店をフィルターにして観測すると見えてくるものがあるはずだ。

Photographs by Takahiro Tsuji / Text by Akio Shimanuki , Yoko Utsumi / Coordinate by Yian Chen
Design by form and craft Inc.

  • クコの実とカニの身を使ったサラダ、トウキという植物の根をスライスして乾燥させたものにセルリアックのアイスクリームを合わせた茶碗蒸し。

    logy ロジー

    かの【Florilege】が台北進出!
    日本人の感性が台湾で躍動する

     先に断言しておくが【logy】は、フレンチをルーツに持つ台湾のファインダイニングの中で、日本人が訪れるならおそらく一番旨いと感じる店だ。それは、かの【Florilege】の川手寛康氏が台湾に出した店ということだけが理由ではない。フランス、台湾、日本の良い部分を高次元で纏め上げている料理は、カテゴライズが出来ない一方で、繊細な旨みや香りなど、日本人にとって欠かせないものがすべて捉えられ、絶妙なバランスで成立しているのである。
     川手氏からシェフを任命され【logy】でその腕を振るうのは、【Florilege】の二番手として活躍した田原諒悟氏。オープンの3ヶ月前から台湾に居を移し、オープンの準備とともに、台湾ならではの食材探しに奔走した。その中で田原氏が気付いたのは、台湾では生産者の名前が前面に出てこないということ。そして、その現状を覆したいと、扱う食材はどれも力強く「これってどこで、つくっているの?」と聞きたくなるものばかりを揃える。取材時のメインディッシュだった鶏肉はその最たるもので、台湾北部、新竹市の生産者に「ブレスに負けない鶏を料理に使いたい」とリクエスト。使う油にも合わせて育ててもらっているものだという。
     シェフの個性は調理にも表れている。それを一番感じさせるのが“温と冷のコントラスト”だろう。温かいものは熱々で、冷たいものはしっかり冷たく提供する、というと当たり前のことを、実のところ台湾ではっきりと意識しているレストランは少なく、田原氏も「台湾で一番温かい料理を出すのはウチだと思いますよ」と笑う。これは川手氏の哲学でもあり、共通の考え方だ。他にも、塩味の効かせ方には神経を使い、調理スタッフの塩の振り方も常に目を配らせる。さらには恐るべきことに塩味だけを扱うスタッフもいるのだという。そんな繊細な仕事の積み重ねは、確実に台湾の料理業界に影響を与えていくに違いない。現に、まだオープンして1年未満ながら、既に予約難関店となっていることからもその片鱗が窺える。
     ベースにしているのはフレンチだが、使う食材はすべて台湾産、包丁の技術や調理などに日本の良い部分も持ち込んだ【logy】の料理は、ここでしか味わえないものだ。【Florilege】とはまた異なるアプローチを存分に楽しんでみてほしい。

    • イタリアのピエモンテ、アルトアディジェ、カンパーニャで修業をしたのちに、東京・青山の【Florilege】でスーシェフを務めた田原諒悟氏
    • アオリイカ、タケノコ、カラスミ、アイスプラントをヤギのミルクの自家製ヨーグルトとオイルで纏めたひと品。明確な塩分はほぼカラスミだけだというが、そこにアイスプラントの塩味が加わることですべてを調和させた
    • 苦茶油(カメリアオイル)を主役にしたいと考え出された料理。新竹産の鶏肉はこのオイルに合わせて育てられる。ソースは鶏のジュに甜麺醤とオイルを合わせたもの。つけ合わせには台湾産のキノコと豚の血を使ったニョッキ。
    シェフの流儀 田原諒悟氏

    温と冷のコントラストはもちろんのこと、キレ味をテーマとした料理を心がけているという田原氏。「料理が舌の上にのる面積などもすべて計算してお出ししています」と、科学的なアプローチも駆使して料理を提供する。これぞ、日本人シェフならではの感覚と言えるだろう

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