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Le Clarence ル・クラランス
ポスト3ツ星とささやかれる
伝統と革新が融合する美しき館フランクラン・D・ローズヴェルト大通り31番地。シャン・ゼリゼ大通りとセーヌ川に挟まれたシックなエリアにそびえる、かつての貴族の瀟洒な館。窓には温かな光が灯り、美しい制服に身を包む車係が立つエントランスには、CとDを組み合わせたロゴの旗が誇らしげに掲げられている。
ワイン愛好家ならこのロゴを見れば、この建物のオーナーがすぐにわかるだろう。ここは、シャトー・オー・ブリオンやシャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオンを所有するクラランス・ディロンが所有するレストラン、【ル・クラランス】だ。-
ボルドーが誇る名門シャトーが3年前にパリにオープンした【ル・クラランス】は、招聘したシェフの名前でパリの料理界をざわつかせた。
その名はクリストフ・プレ。かつてパリの街はずれで【ビガラード】という小さなレストランを手がけて2ツ星を獲得していた気鋭の注目料理人だ。和の食材はもちろん、世界各国の食文化に興味を持ち、独特のセンスでそれらを組み合わせた個性豊かな料理でパリジャンの味覚を唸らせていた。 -
それが、伝統と格式あるワインシャトーが手がける豪奢なレストランのシェフになった、というので、店とシェフのスタイルのギャップに驚く食通も少なくなかった。しかしそれはすぐに、杞憂だとわかった。
持ち前の好奇心旺盛で自由な感性に、この館が醸し出す重厚でフランスらしいエレガンスがうまく溶け合った料理。それが、今のプレ氏の作品だ。伝統的な調理法やソースを大切にしつつ、あちらこちらに散りばめられた日本やイタリア、スペインなどの風味や香り。そのいずれもが、実に小気味よくかつ的確に利用されている。よくある、流行りだから使ってみよう、ではない、それぞれの風味の特徴を知り尽くしているからこそ可能な、個性豊かなマリアージュなのだ。 -
魅力溢れるプレ氏の料理を引き立てるのは、メゾンが誇るワインたち。古い年代が揃ったオー・ブリオンやラ・ミッション、希少なオー・ブリオンの白も充実。もちろん全て蔵出しだ。これら超一流ワインをグラスでサーヴィスすることも多い。ボランジェ、サロンなど他地域のトップワインメーカーとのコラボディナーも頻繁に開催し、他の店ではあまり見かけない、充実したワイン体験を楽しむこともできる。
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シャトー・オー・ブリオンに雰囲気を似せて内装を施したというサロンも必見。貴族の邸宅のリビングのような美しいウエイティングスペースでアペリティフを取り、ダイニングですばらしいワインとともにエッジのきいたガストロノミーの世界に浸る。ここではぜひゆったりと時間をとって過ごしたい。
【ル・クラランス】は今、パリにおける次期ミシュラン3ツ星候補のひとつとみなされている。2ツ星から3ツ星に上がりかけている店の輝きは、唯一無二の眩しさ。まさにこの瞬間、体験したいレストランだ。
シェフの哲学 クリストフ・プレ氏
料理人として大切なのは、日々、食材に魅惑され、そこからインスピレーションを受けて料理に仕立て、ゲストに喜びと感動を与えること。常に好奇心を広げて感性を研ぎ澄まし、料理の新たな可能性を探り続けたいです。
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Column
2018年世界のベストレストラン50で
ベスト・パティシエに選ばれた
セドリック・グロレ氏にインタビュー
インスタグラムのフォロワー数、100万越え。
【ル・ムーリス】シェフ・パティシエとして活躍する
セドリック・グロレ氏は、今、世界中が注目するパティシエだ。
世界から熱い視線が注がれる、【ル・ムーリス】のシェフ・パティシエ、セドリック・グロレ氏。彼のスペシャリテは、様々なフルーツの形を極薄のホワイトショコラで精密に再現し、そのフルーツのおいしさをジュレやコンフィなどに仕立てて内部にたくみに仕込んだ、”フルーツ”シリーズ。「季節が私を導いてくれます」と語るセドリック氏。四季折々の極上フルーツにインスピレーションを受けたこのシリーズは、美しいヴィジュアルと、シンプルかつ印象的な風味で、食べ手に大きな感動を与える。
ミルフイユやパリブレストといったクラシックなフランス菓子も、彼のもう一つのスペシャリテ。「形や風味は変えない、でも素材にこだわりぬき、一つ一つのパーツを研ぎ澄ませています」。彼の伝統菓子を食べると、その完成度の高さに、ミルフイユやエクレールはこんなにおいしいものだったのか? と、ため息がでる。
ファインダイニング【ル・ダリ】で提供するアフタヌーン・ティも人気だが、2018年春にはホテル内にパティスリーを併設し、店の前には日々長蛇の列。今、パリで最も熱いスイーツスポットになっている。