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未来への答えがここにある SDGsなレストラン Hitosara special

SDGsという言葉が世間に浸透しはじめて久しいが、
飲食業界において、それはもはやつくり手だけの問題ではなく、
食べ手もそれを意識するべき時代が到来している。
ただし、その根底にあるのは、美味しさであり、食事の楽しさだ。
今回はそんな美味しく、楽しいSDGsなレストランをご紹介する。

Photographs by Kayoko Ueda , Takuya Suzuki , Mami Hashimoto /
Text by Koji Okano , Natsuki Shigihara , Ayano Yoshida /
Design by form and craft Inc.

  • 料理はすべて『おまかせコース』より。MSC漁業認証を満たした、アイルランド産クロマグロ赤身のにぎり。
    シャリには、キヌヒカリとコシヒカリを組み合わせ、ブレンド酢で複雑味を加えてた

    波濤

    認証を守ったマグロを仕入れ、
    次代に海の恵みを紡いでいく

     ミシュラン三つ星の日本料理店【神楽坂 石かわ】が手がけた鮨店として、2020年2月に開業した【波濤】。コロナ禍にもかかわらず、たちまち予約困難店となり、その年のミシュラン一つ星を獲得した。大将・熊切大地氏は若干31歳。同じ石川グループの【石かわ】【蓮 三四七】【虎白】で腕を磨いた後、「鮨職人の修業を積みたい」と、代表の石川秀樹氏に直談判した経緯がある。

     「あくまで日本料理店に軸足を置きながら、鮨を組み合わせれば、もっとお客さんにとって美味しく、楽しい場所がつくれると感じたんです」
     石川氏の紹介で入った鮨店【東麻布 天本】も、ミシュラン二つ星。こうして名店の気鋭は江戸前の基礎を学び、次なるステップとして、代表・石川氏に新店の切り盛りを任された。

     つまみ約6皿、にぎり約12カンからなるおまかせコース。『白子とアワビの銀あんかけ』や『伊勢海老の炙り』などのつまみは、鮨店のつまみの範疇を超えた華とボリュームを誇り、日本料理店の矜持とサービス精神が満載だ。
     「加えて料理人として、次代の食のあり方にも思いを馳せねばなりません。店で使うマグロは、持続可能かつ適切に管理された漁業を広めるべく設立された国際機関『Marine Stewardship Council』が認証したもののみを仕入れます」という。にぎりでは、海の資源を守るべく、漁獲量制限など多くの規則を守って、水揚げに励む漁業者たちから引く大西洋クロマグロの赤身と中トロを使っている。
     「将来的には、他の食材に関しても、SDGsの観点を取り入れたいと考えています」
     若き職人が紡ぐ、さらなる持続可能な美味しさの登場が待たれる。

    • この日のつまみには、『白子とアワビの銀あんかけ』が登場。炭火を当てた白子の外見が、まるで焼き餅のよう
    • 熊切大地氏。ともに働く料理人は20代が多く、ここで修業する若人が、次代の日本料理を紡ぐ
    • 席はカウンターのみ(右のテーブルは、待合)。棚には石川氏と熊切氏が全国から集めた古美術品が並ぶ
    ここがSDGs

    地球資源の枯渇が叫ばれるなか、鮨の花形・マグロの漁獲量減少は悩ましい問題。世界もこれを解決すべく、たとえば大西洋クロマグロでは国際機関の加盟国が年に一回集まって、漁獲量の制限を取り決める。厳しい規制に則った業者のみから仕入れるマグロで握る熊切氏の一貫は、未来の海を守るための食なのだ

 

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