第152回:3年予約が取れない名店【長谷川稔】とは?
北海道【リストランテ薫】が1つ星を獲得し話題になった翌年、東京・広尾へ進出した長谷川稔氏。口コミサイトでは史上最速で4.5点超を達成し、3年先まで予約が取れないお店としてフーディーの心をつかんでやまない【長谷川稔】とは一体どんなお店なのか。素材に向き合う料理、そして、いま、もっとも予約が取れない都内屈指の人気店シェフのこだわりに迫った。
素材と徹底的に向き合う男
――ストイックにとことん追求するタイプだとか。
長谷川:そうですね。北海道でやっているときは特に。それしか道が開ける方法がなかったんですよね。
――なるほど。素材にできるだけストレスを与えないんですよね?
長谷川:はい。命を絶つ瞬間からが料理なので、保管している時からストレスを与えないのが一番ですね。基本的に素材は全部、零度の水上に浮かばせています。重力すら与えない。人間のと床ずれと一緒なのでウォーターベッドの感覚です。すると熱伝導率も一定で体温も保てるし、素材に真摯に向き合うことができるんです。
自分の名を冠した“覚悟”
――最初からホームラン級の料理が次から次へ出てくる個性的なスタイルですが、店名にフルネームを付けたのはどんな理由があるんですか?
長谷川:「北海道には帰らない」と覚悟を決めて逃げられない場所をつくったんです。決して自信があるから、とかではなく、自分で追い込んだ。僕がこだわったのはただ一つ、「4名以上はクオリティが下がるから絶対にやらない」という事です。5皿目からクオリティが下がるんですよ。なので、敢えてやらない。その代わり、その4皿には素材への向き合い方から調理まで徹底的にこだわっていますね。
スペシャリテは『金目鯛の鱗焼き』
独学で習得した火入れを活かしたスペシャリテは、なんと1時間半かけて焼き上げるんだとか。3パターンの火入れを施し、蒸す、揚げる、炭焼きという工程をじっくりと経ることで皮目はパリパリに、身はしっとりとジューシーな食感が楽しめる逸品に仕上げ、コースの2皿目に配置。一皿ごとの完成度に驚くとともに、コース全体の個性的な流れはまさに唯一無二の“長谷川稔”ワールドだ。