【エディション・コウジ・シモムラ】下村浩司シェフが魅了された理由
太古の昔から人類が魅了されてきた牡蠣。危険と隣合わせの美味を敢えて選び取り、その魅力を追求し続ける下村浩司さん。オープン以来12年、1日も欠かさず『牡蠣のポシェ
海水と柑橘風味の海水のジュレ 岩海苔』をオードブルとして作り続けている。
「シンプルな料理ですから、牡蠣の品質が何より大切。味わいを追求することはもちろん、まず、安全性を確保しなくてはなりません。独立前に料理長を務めていた【レストラン
FEU】の時代にはフランス産の牡蠣を使用していました。けれど、日本でフレンチをやるからには、日本の食材を追求したいと、国産の牡蠣を探しました。各地のものを食べ比べ、数年間は広島産の牡蠣に限定して使っていました」。


そんなとき、「ガイアの夜明け」で、くにさきOYSTERのドキュメンタリーを目にし、矢も楯もたまらず、ヤンマーマリンファームへ電話し、養殖の現場を見せてほしいと頼み、すぐに大分へ飛んだという。
「徹底した安全管理と、愛情を持って牡蠣を育て、より味わいの濃い、歯応えのいい牡蠣を作ろうとする、たゆまぬ努力を目の当たりにし、すぐに『使わせてください』と頼みました」。

通常、マリンファームの牡蠣は1年で出荷するが、下村さんは、より大きな牡蠣はできないのだろうかと所長の加藤さんと相談。1年半かけて1.5倍の大きさにまで育ててもらい、シモムラスペシャルとして使用している。オードブルの牡蠣のポシェは1個で完結する料理であるから、食べ応えと満足感が必要なのだ。


また、シモムラスペシャルを扱うなかで出来上がったのが『牡蠣のベーニエ』。これは、くにさきOYSTERの色の黒さを前面に出し、竹炭の粉を加えて黒くしたベーニエ生地をつけて揚げ、カリフラワーのヴルーテを添えた料理。”サクッ”とした食感で歯切れのいい、くにさきOYSTERを包んだ一皿だ。
ベーニエの発祥は、フランスの牡蠣の名産地ブルターニュ。同じく干潟で牡蠣を養殖する先達へ、経緯を表したというバックストーリーを持つ。至高の素材との出会いがシモムラさんのクリエイションをかきたててやまないのである。


電話 | 03-5549-4562 |
住所 | 東京都港区六本木3丁目1−1 |
営業時間 | 12:00~13:30LO、 18:00~21:00LO |
定休日 | 不定休 |
料理 | 昼コース6,000円〜、夜コース15,000円〜 |
【Ode】生井裕介シェフ

「国東の現場を訪ね、所長の加藤さんの牡蠣作りの情熱に感動しました。ミルキーというよりも、歯応えのある食感を大切にした作りや、ツルンとした一口で食べられる、こぶりのサイズを目指して、一年で育てているところに、たいへんに共感を持ちました。ぜひ、使わせていただきたいとお願いしたんです。今は、生の食感を失わないように56℃~60℃で火を入れます。そうすることで、生の食感は保ちながらも、生にはないたんぱく質の凝縮した風味を少しだけ引き出すことができます。それをいったん冷やし、まわりを塩味をつけた牛乳のジュレでコーティングして供しています。その心は、ですか? 牡蠣が海のミルクだから、まわりを陸(おか)のミルクでコーティングしようと思いました」
電話 050-5340-6855
住所 東京都渋谷区広尾5-1-32 ST広尾2F
営業時間 12:00~13:00(最終入店)、18:00~21:00(最終入店)
定休 日曜・祝日
料理 昼コース6,000円、夜コース14,000円
(2019年4月から昼コース7,000円、夜コース15,000円に変更)
【ル・ブルギニオン】菊地美升シェフ

「とにかく、味がおいしい、と思いました。小さいんですけれど、旨みがつまっていて、海のミネラルをすごく感じます。食感も引き締まっていて、ある意味、とても牡蠣らしい牡蠣ですね。うちでは今、5個をそれぞれ殻に盛り、一つ目はエシャロットのみじん切りと赤ワインヴィネガー、二つ目はカリフラワーのムースと岩海苔・海水のジュレ、三つ目はラルド
コロナタ、四つ目はレモンとレモンの泡、最後の一つは粒マスタードマヨネーズをのせてお出ししています。やはり、生で食べていただきたいですね。でも、実はまかないでは何個かいっしょに牡蠣フライにしていますが、これがめちゃくちゃ美味しい。役得ですね(笑)。」
電話 03-5772-6244
住所 東京都港区西麻布3-3-1
営業時間 11:30~13:00LO、18:00~21:00LO
定休 水曜日、第2火曜
料理 昼コース5,000円、夜コース12,000円
撮影/今清水隆宏、角田進、岡本裕介 取材・文/小松宏子