鮎好きの私にささる写真でした。渓流で泳ぐ鮎がそのままの形で燻され、立ち上がる煙と湯気の質感がなんとも立体的で、食欲に直結する写真だと思いました。鮎の繊細さはその形や表情にも表れていると思いますが、塩をふられたヒレの立ち具合やふっくらとした体つきを見事にとらえた写真だと思いますので、私はこれを推します。
HITOSARA OISHII PHOTO AWARD
- SPECIAL PRIZE -
燻される鮎
河田 卓也編集部特別賞総評
まさに『シズル感』という言葉が似合う写真です。ふっくらと焼きあがった鮎に煙が立ち上がり、見る人を引き付けます。秋どれ鮎は脂がのり、香りがとても良い魚と言われ、水分が落ちる度にジュワっという音と食欲をそそる香りが写真から広がります。今にも手に取って食べたくなる一枚です。
審査員コメント
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群れ鮎が、燻す煙のなかで仲良く泳ぐビジュアルはじつに壮観で美しく、鮎独特の高貴な香りが立ち上ってくるようです。緑葉の波の上、白い塩をまとった尾がしぶきをあげるように躍動感をもって迫ります。見事にその瞬間を切り取った写真は、ダイレクトに喉の渇きを欲し、胃袋までも刺激してきます。おいしいフォトアワードのコピーにある通り、『美しいは、美味しい』をまさに体現したものがこの鮎の料理に見えました。
受賞者インタビュー
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今回の受賞した作品についてどうおもわれますか?
自分の写真に共感を得られたことは、やっぱり嬉しいです。鮎から立ち上る燻煙を、はっきりと捉えられた作品だと思います。料理が主役であることはもちろんですが、煙のゆらめく形や量、うっすら透けて見える背景の色彩にもこだわり、背景を敢えて黒一色にしないことを意識しながら撮影しました。
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ヒトサラの撮影は河田さんにとってどのようなものですか?
ヒトサラの撮影は、私にとってコミュニケーションの大切さを学ぶ場です。料理人の要望を的確に知り、どのように料理を魅せたいのかを汲み取りながら、常に緊張感をもって撮影に望んでいます。撮影後はエンドユーザーのための写真を一緒に選ぶことで、最後まで料理人が満足できる一枚について知ることを心掛けています。
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河田さんが目指す写真についてお聞かせください。
カメラマンの自己主張による写真ではなく、被写体の良さを引き出す撮影を目指しています。料理の撮影で思うことは、“美味しいそう”ではなく、”美味しい!”と断言できる写真を撮影したいということ。その写真を見ただけで、薫り、味、食感など全てが伝わるような一枚を撮影したいと考えます。
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今後の抱負をお聞かせください。
撮影の技術を磨きながらも、カメラとは離れた経験も積んでいきます。違う世界に触れることが自らの世界を広げ、新たな一枚へと繋がるはずです。目標とする先輩方に、追いつけ追い越せの気持ちで頑張ります。
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この度はおめでとうございます。