1. ヒトサラ

グルメガイドとしてもお役立ち! 地方の実在店を厳選紹介しているマンガ3選

 日本各地に旅行や出張で出かけた際、ガイド本やグルメサイトを参考にして地方グルメを満喫するという方も多いでしょう。日本は世界的に見れば決して大きな国ではありませんが、南北に約3,000kmもある縦長の国土を有し、それぞれの地域の特色を活かしたグルメが豊富ですよね。

 そこで今回は、各地域のグルメに特化したマンガを3作ピックアップ。北海道、東北、広島の3エリアにフィーチャーしたそれぞれの作品を紹介していきます。いずれの作品も、その地域の実在店(もしくは実在店をモデルにした店)を数多く掲載しているので、旅行や出張で訪れた際のグルメガイドとしても役立つはずですよ。

  ※本コラムの情報は各単行本発売当時のものです。現在は取り扱っていないメニューがある可能性や、料金が変更されている可能性などがあります。ご了承ください。

『札幌乙女ごはん。』

『札幌乙女ごはん。』

作品データ/『札幌乙女ごはん。』(1巻より抜粋) 作者:松本あやか 編集:エアーダイブ 全3巻 ©松本あやか・エアーダイブ/Dybooks

 タイトルにあるとおり、札幌の実在店を数多く紹介した作品。けれど、本作の特徴はストーリーマンガとしてもきちんと成立しているところなんです。

 札幌在住の主人公は、長年付き合ってきた恋人にフラれてしまったアラサー女子。元気づけようと親友2人が連れてきてくれたラーメン屋で、親友のやさしさとラーメンの美味しさに癒され、美食に目覚めるというお話です。“食”だけでなく、仕事も恋も遊びも盛りだくさんで、前向きに貪欲にがんばるキラキラ女子たちを描いていきます。

失恋の痛手を癒してくれたのは友情と『弟子屈ラーメン』だった

『札幌乙女ごはん。』

 第1話冒頭で、6年間付き合っていた彼氏に突然別れを告げられた主人公・早織。落ち込んでいた早織を、高校時代の茶道部仲間だった親友と後輩が合コンに誘ってくれましたが、“完全なるハズレ合コン”でした。

 ハズレ合コンの憂さ晴らしにカラオケに行き、その後、シメのラーメンを食べに行く3人。さっぽろラーメン横丁にある『弟子屈ラーメン』に初めて訪れた早織は、「魚介しぼり醤油ラーメン」(800円、税込)の美味しさに感動!

 親友や後輩も、炙りチャーシューやあっさりめのスープを絶賛していましたが、早織は実食中に、「んーーーーっ!! スープによく絡む太ちぢれ麺!! 魚介のダシが効いたスープに合う!!」、「それはまっすぐお腹に落ちていって からっぽだった私を少しだけ満たしてくれた」とモノローグで熱弁するほど。“心が元気になる『ごはん』”に胸打たれるのでした。

 ちなみに第2話では、ドSな年上上司である企画課チーフ・杉原(33歳)とのラブコメ展開も!

 旅行会社社員である早織はある日、杉原にバスツアーの企画書を提出するも、ガミガミと厳しくダメ出しされてしまいます。リベンジで再提出した企画書も却下され、落ち込んでいましたが、そんな彼女を杉原が『生ラムジンギスカン 山小屋』に連れていってくれるのです。

「ラム肉」(1人前900円、税別)に舌鼓を打ち、元気を取り戻した早織が、「以外に優しい所もあるんですね 杉原チーフって!!」と伝えると、杉原は「…別に 誰にでもってわけじゃねぇよ」とボソリとつぶやき、赤面…! ドS上司のツンデレな一面にときめく早織なのでした。

札幌グルメを軸に、恋あり友情あり仕事ありの“大人の物語”

『札幌乙女ごはん。』

 先ほどご紹介した第1話で、高校からの親友と後輩にラーメン屋に連れて行ってもらった際、早織はふとこう気付きます。

「人間おいしいものの前ではクヨクヨ悩めない」と。

 この言葉こそ、本作の裏テーマなのかもしれませんね。

 実際、落ち込んでいた早織は、『弟子屈ラーメン』のラーメンで、『生ラムジンギスカン 山小屋』のラム肉で、元気を取り戻していました。

 そして、本作の見どころはただのグルメマンガではなく、早織を中心としたキャラたちのストーリーもしっかり描かれているというところ。ドS上司と恋に落ちる展開は王道と言えば王道ですが、それゆえに安定のドキドキ感が味わえるんですよね。

 ちなみに高校からの親友と後輩の単独エピソードもあり、彼女たちの恋や仕事にもスポットが当たっていくので、感情移入しやすいキャラがきっと登場するはず。札幌グルメを軸に、恋あり友情あり仕事ありの“大人のストーリー”が展開していくわけですね。

  もちろん登場するお店はすべて実在店。しかもグルメ店だけでなく、一例ですがカラオケ店『mash(マッシュ)』、屋上観覧車で有名な大型アミューズメント施設『nORBESA(ノルベサ)』といった、札幌の実際にある人気スポットも、劇中で登場人物たちが訪れる形で、物語の中に自然と組み込まれています。

  つまり、本作は恋愛ストーリーマンガとして楽しめるだけでなく、札幌のグルメガイド、レジャーガイドにもなるという一石三鳥の作品なんですよね。早織たちの恋の進展にときめき、憧れたら、ついつい本作片手に札幌旅行に行きたくなってしまうかも…!

『流浪のグルメ 東北めし』

『流浪のグルメ 東北めし』

作品データ/『流浪のグルメ 東北めし』(1巻より抜粋) 作者:土山しげる 全3巻 ©土山しげる/双葉社

『喰いしん坊! 』や『野武士のグルメ』(原作・久住昌之)など、多くのグルメマンガを世に放ったマンガ家が、東北地方のグルメ店(実在店をモデルとした架空の店)を紹介していく本作。作者の力強い劇画調の圧倒的画力で、“食べる東北”を描いていきます。

 主人公である食通トラックドライバー・ハンター錠二が、さまざまな人物たちと出会い、東北グルメをナビゲートするというストーリー。破天荒な錠二がなかば強引に店を紹介し、最初は半信半疑で訪れるキャラクターも多いのですが、もれなく東北グルメの魅力にハマッていくのです!

食通トラックドライバー・ハンター錠二による破天荒なススメ

『流浪のグルメ 東北めし』

 仙台駅近くで、財布を失くして途方に暮れている一人旅の男に出会った食通トラックドライバー・ハンター錠二。その男は仙台で牛タン定食などを食べるため、節約生活とバイトで貯めた資金で、東京から来ていたそうなんです。

 空腹のあまりへたり込んでしまう男に同情した錠二は、彼をトラックの助手席に乗せ大衆食堂『半口屋』(モデルは実在の『半田屋』)で奢ってあげます。その後、男の財布は無事に見つかるものの、錠二は「牛タンは最終日に食え! これより滞在中の食事は俺が指示をする!」と一方的に指図し、2日間の飯コースを記したメモを渡すのでした。

 例えば、メモには『昇龍萬寿山』(モデルは実在の『成龍萬寿山』)で「水煮肉片(スイジューローペン)」や「上海ラーメン」を食べること、「『珈須多夢(カスタム)』(モデルは実在の『珈巣多夢』)で「バタートーストセット」を食べることが指示されており、男はその指示通りにグルメ旅行を続け、大満足。心の中で錠二に感謝するのでした。

 最後に再び男の前に現れた錠二は、東京へ帰る新幹線の車内で開けろと伝え、手土産を渡します。そこには「俺が仙台で一番うまいと思う牛タン屋の弁当だ 味わって食べてくれ 錠二」という手紙と一緒に、牛タン弁当が入っていたのでした…って、シブかっこよすぎですよね!!

  錠二はこんなふうに旅行者などの前にフラッと現れ、東北グルメの宣教師のような立ち回りで、食に迷える者たちを導いていくのです…!

あえてのオシャレ度外視! 通好みするコスパ最高の仙台グルメ

『流浪のグルメ 東北めし』

 まず読者は、錠二のいでたちに度肝を抜かされることでしょう。金髪のロン毛にテンガロンハット、真っ黒のサングラスにフリンジ付きのウエスタンシャツ――そう、まるでアメリカ西部開拓時代のガンマンのような風貌なのです!

 あえて誤解を恐れずに言うなら、このマンガも、このマンガの主人公である錠二も、そしてこのマンガで紹介される店(実在店をモデルにした架空の店)も、すべてが“漢(オトコ)”向け!! いかにもインスタ映えしそうなオシャレさは度外視で、“美味くて安いことが正義”と言わんばかりラインナップとなっています。

 しかも、牛タンや海鮮丼といったメジャーどころの有名店はきちんと紹介しつつも、知る人ぞ知る店も多数取り上げているんですよね。

 一例を挙げるとすると、『そば 神田屋』(モデルは実在の『そばの神田』)の「イカゲソかき揚げそば」や、『とんかつ叶屋』(モデルは実在の『とんかつ叶』)の「味噌かつ」なども紹介。東北の地元民から愛されているような店ばかりで、味が確かなのは当然として値段が驚くほど安く、コスパが最強という料理がバンバン掲載されているのも特徴です。

 ちなみに次のエピソードでは、旅行に来ていたカップルを『塩釜水産物仲卸市場』に連れていき、数百円という激安のホタテやカキを自由焼炉(購入した食材をセルフで焼くことができるスペース)で振舞ったり、市場の向かいにある食事処『信光』(モデルは実在の『伸光』)で、うに・いくら・まぐろの豪華な「三食丼」をおすすめしたりもしていました。

 ということでこの『流浪のグルメ 東北めし』、便宜上、“漢”向けと書きましたが、東北で極上美味の料理、コスパ最高の料理をガッツリ食べたいという方ならば、老若男女必読の作品であることは間違いないでしょう。錠二メモにあった2日間の仙台グルメコース、再現してみてもいいかもしれませんね!

『新久千映の まんぷく広島』

『新久千映の まんぷく広島』

作品データ/『新久千映の まんぷく広島』 作者:新久千映 全1巻 ©新久千映/KADOKAWA/メディアファクトリー

 累計20万部を突破し、アニメ化&ドラマ化も果たしている大ヒット作『ワカコ酒』の作者・新久千映先生が、地元・広島の“ぶちうまグルメ”をひたすら紹介していくエッセイコミック。

 お好み焼きや牡蛎といった有名な広島名物だけでなく、イタリアン、ホルモン、麺類といった知る人ぞ知る絶品グルメも網羅しています。実に30軒以上の名店を、新久先生が実際に訪れた様子がレポートされていて、広島の食文化がぎゅーっと濃縮された一冊となっているんですよ。

『ワカコ酒』のマンガ家が送る、親近感沸きまくりの食レポ

『新久千映の まんぷく広島』

 広島在住の酒好きマンガ家・新久千映先生が、大食らいの編集者・カトー氏から「広島グルメルポマンガを描きませんか?」と提案を受けるところから本作は始まります。主にお店を紹介するナビゲート役として編集制作会社代表の川上さんも加わり、この3人で広島グルメを食べ歩き!

 本作では30軒以上の実在店が、「お好み焼き」、「ご当地麺」、「広島牡蠣」、「アナゴ」、「ホルモン」、「広島イタリアン」、「鉄板居酒屋」、「呉グルメ」、「出張『ワカコ酒』」の9ジャンルに別れて数軒ずつ紹介されています。

 記念すべき1軒目で紹介されているのは、お好み焼き店『いっちゃん 本店』。お好み焼き店では唯一の『ミシュランガイド』掲載店ということで、新久先生はビビリながら入店しますが、店内は清潔感があって大にぎわいなものの、入りやすい雰囲気で一安心。

 新久先生の基本的な絵柄は線が少ないデフォルメされたかわいらしいタッチですが、「肉玉ねぎかけ」(864円、税込)、「スペシャル(肉玉・イカ・エビ)」(1080円、税込)といった料理を紹介する際はリアルタッチで描かれていて、食欲をそそります。

 そして新久節とも言えるような、「なんというか お好み焼きなのにあっさりとしてクリアな味 丁寧に焼かれておるのう」といった、親近感が沸く表現でレポートしてくれるから、まるでその場に同席しているかのような雰囲気も味わえるんですよ。

1ヶ月間ぐらい長期滞在して制覇したいほど広島グルメが凝縮

『新久千映の まんぷく広島』

 本作はエッセイコミックならではポイントが盛りだくさん!

 例えば、1軒目で紹介されたお好み焼き店『いっちゃん 本店』では、カウンター席に座れば、目の前でお好み焼きを焼いてもらえるという醍醐味が味わえることや、オーナーご夫婦の真面目で温和な人柄なども紹介されているんですよね。

 他にも『ホルモン料理専門處 利根屋』では、「こってりホルモンが味噌ベースの酸っぱ辛いタレでさっぱり……はしない」、「ガッツリ『肉食ってます』って感じ!」などと、ストレートな感想で絶賛。また、このお店の大将は一見寡黙で怖そうなイメージ……でありながら、実は人情と男気溢れる方だといった素直なレポートもあり、その店の臨場感もばっちり。料理目当てなのはもちろんですが、店主目当てでも訪れたくなるような読み応えです。

 普通のグルメガイド本では紹介されていないような情報や、紹介されていたとしてもいまいち伝わりづらい情報も、新久先生視点で語られるから、すっと頭に入ってくるんです。きちんと新久先生が1軒1軒丁寧に取材されたんだろうなということがわかるし、料理の解説や店主の人柄などが新久先生ならではの個性的な視点から語られるので、純粋に読み物としても面白いんですよね。

 広島名物と言ってすぐに連想されるお好み焼きや牡蠣だけじゃなく、ご当地麺、ホルモン、イタリアンのような通な情報もたくさん紹介されているから、ちょっとした旅行や出張ぐらいじゃ全てを満喫しきれないほど。思い切って1ヶ月ぐらい広島に長期滞在して、地元の方々と交流しながらプチ広島住民気分を味わいつつ、紹介店を制覇したくなっちゃいますよ!

  新久先生の代表作である『ワカコ酒』の出張版も掲載されているので、『ワカコ酒』ファンも必読の一冊になっています。

※情報は記事公開日時点のものです

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