1. ヒトサラ

架空の「異世界飯」! 異世界ファンタジーの極上料理で満腹感を妄想できるマンガ3選

 ――「異世界飯」。マンガやアニメで見聞きし、その現実ではありえない幻の一品を、豪快に食す姿を妄想したことのある方も多いのではないでしょうか。

「マンガ肉」と呼ばれる、一本の骨に分厚い肉が付いているものにかぶりつくなど、とにかくジューシーで濃厚な味付けを想像させる架空の料理たちを、口いっぱいにかきこむことを夢に見る人もたくさんいると思います。実際、近年では「マンガ肉」を再現しているレストランなんかも目にしますね。

 そこで今回は、そんな「異世界飯」をテーマにして、マンガを3作品セレクトしました。現実にはない食材ながらも、詳しく描かれた調理シーンや、その食欲をそそる繊細な描写に妄想を膨らませ、酔いしれてみてはいかがでしょうか。

『空挺ドラゴンズ』

『空挺ドラゴンズ』

作品データ/『空挺ドラゴンズ』(1刊より抜粋) 作者:桑原太矩 『月刊good! アフタヌーン』連載中、既刊6巻 ©桑原太矩/講談社

 龍が生息する架空の世界で、捕えた龍を解体してその肉や油などを売って旅をする捕龍船、「クィン・ザザ号」の冒険を描くファンタジー作品。自由奔放ですが頼りになる主人公の男性・ミカと個性豊かな乗組員たち、彼らが巨大な龍と戦い、捕獲していくというストーリーになっています。

 しかし、本作では龍との戦いのほかにも、捕えた龍を調理し、食べるシーンが多くみられるのが特徴。実在しない龍という食材ながら、おまけのページでは調理方法が細かく記載されるなど、「異世界飯」ファンにも嬉しい作者のこだわりが感じられるんですよね。今回は、船内に迷い込んだ小型の龍を捕獲し、調理するシーンを紹介します。

大型ばかりが龍じゃない…小型の龍は超高級品!? その味やいかに?

『空挺ドラゴンズ』

「クィン・ザザ号」の新人女性乗組員・タキタは、支度金として船に借金があるため、なかなかひもじい生活を強いられています。そんなある日、船に迷い込んだ見たことのない小さな龍を発見。本作に登場する龍は大型クジラばりに巨大な個体であることが多いため、タキタが目撃した小型の龍はかなりレアな種なんでしょう。

 そんな小型龍を自力で捕まえて、小遣い稼ぎをしようと目論むタキタでしたが…………うまくいかず。船員のなかにその小型龍に噛まれ、体調を崩してしまう被害者が出てしまったため大騒ぎとなり、ミカらと協力して捜索。無事に小型龍を捕獲することができました。

 ところが、ミカいわく「こんなちいさいの油もとれねーし たいした金にならねーよ」とのことで、タキタの小遣い稼ぎの夢はあっけなく撃沈したため、空腹のミカと共に食べることに。

 現実世界におけるイタリア・トスカーナ州で生まれた鳥の調理法“悪魔風”にして、この龍を食べることに決めたタキタら。珍しい種類の龍で、噛まれて体調を崩してしまった被害者がでたため、毒がある危険性も危ぶまれていましたが、毒など気にせず口にするミカは、「皮がバリバリで香ばしくて! 身がホロホロで旨みがじゅわぁって!」と大絶賛。

 ちなみにこの小型龍に毒はなく、倒れてしまった船員はただの働きすぎによる風邪だったことが判明。一件落着となりましたが、実はこの小型龍、王室に献上予定の超希少種が別の船から逃げ出していたらしく、そのお値段は「20億」だったとか……。もし食べずに売っていれば……。タキタの借金返済はまだ先になりそうです。

龍料理から学ぶ…食事ができるありがたみ、美味しく食べられる幸せ

 架空の龍の調理法であるにも関わらず、とにかく詳細に調理法が書き記されている『空挺ドラゴンズ』。壮大で漠然とした“生と死”を根幹とし、人間味や愛情といったスパイスを混ぜ、どこか『ドラゴンクエスト』シリーズや初期のジブリ作品を彷彿させる世界観が魅力です。そして、生き物としての“龍”という存在の設定が非常に細かくされていることが、醍醐味と言えるでしょう。

 ファンタジーな世界観の権化ともいえる龍を、現実にある調味料や調理法で料理していく様は、龍が実在するかのような錯覚さえ起こさせてしまうほど。あまりにも美味しそうに描かれた料理たちに、思わずよだれが出てしまいますね。

 今回紹介したエピソードも含め、生きるために食べること、生活のために狩ることという人類の根幹がテーマとして描かれているのかもしれません。“どうせ食べるのならばより美味しく食べよう”という、作者の信念が込められているようにも感じます。

 現代の日本では簡単に食材が手に入り、ほとんどの人が1日3食を何不自由なく得られる時代ですから、食事に対するありがたみや感謝をつい忘れてしまっても仕方がないかもしれません。もしかすると、そんな時代だからこそ、いつでも食事がとれるとはどういうことかを、もう一度考えようと作者は訴えているのかもしれませんね。

 美味しい料理を食べられるということは、それだけで幸せなことです。日本で暮らしていれば、いつでもどこでも美味しいご飯が食べられることが多いですが、マンガの世界だけでなく、現実世界にもそのような贅沢が出来ていない人がいることも事実です。

 本作で描かれる垂涎の龍料理に想いを馳せつつ、そんな龍を捕獲するミカたちの生き様や命懸けの捕獲劇を見れば、“美味しい食事が食べられる”という幸せを、改めて噛みしめられるのではないでしょうか。

『ダンジョン飯』

『ダンジョン飯』

作品データ/『ダンジョン飯』(1巻より抜粋) 作者:久井涼子 『ハルタ』連載中、既刊7巻 ©久井涼子/KADOKAWA / エンターブレイン

 ダンジョンの最深部で「レッドドラゴン」に勝負を挑んだ主人公・ライオスとそのパーティーでしただが、圧倒的な力を見せるレッドドラゴンに敗北。ライオスの妹であるファリンはドラゴンに食べられそうになりながらも、自身が犠牲になって魔法でライオスたちを離脱させます。ドラゴンがファリンを消化してしまう前に救出できれば、魔法などで生き返らせることができるため、ライオス含む三人は再びダンジョンに潜り…!

 食料すら満足に用意できないままダンジョンに飛び込んだため、中に生息している魔物を、料理して食べていくというストーリー。ここでは、ダンジョン内で出会ったドワーフの老人・センシと共に、「マンドレイク」を料理するエピソードを紹介しましょう。

「マンドレイク」は叫ばせてから食うべし! 偶然が生んだ絶品料理

『ダンジョン飯』

 体力・腕力のなさから、道中を急ぐパーティーのなかでやや足を引っ張ってしまっていたエルフで魔法使いのマルシル。彼女の休憩がてら、近くに生息するマンドレイクを獲って食料にしようとライオスたちは話し合います。しかし、足手まといになってしまった負い目もあり、魔術や薬学の基礎として学ぶマンドレイク狩りに、専門家であるマルシルは積極的に参加を申し出ました。

 マンドレイクは草の根っこのような魔物で、引っこ抜くと大声で悲鳴を上げ、それを聞くと精神異常を起こすことや、最悪の場合死に至ることもあるという厄介な相手。しかし、マルシルの持つ専門書に書かれている方法で捕獲するのは、現実的に不可能でした。

 そこで、長年ダンジョンで生活するセンシは、引っこ抜いて叫ぶ前の一瞬で首を落とすという方法を実践。この方法であれば簡単に食材としてマンドレイクをゲットできるのですが、なんとか役に立って見返したいマルシルは、専門書の内容に近い方法を実践し、なんとか一匹のマンドレイクを捕獲します。

 いざ調理の際、ある違和感に気づいたセンシ。それは首の付いたマンドレイク、つまりマルシルが獲ったものだけ色合いが違うということでした。そしてマンドレイクをオムレツにして食べてみると、首の付いたマンドレイクのほうが、渋みがなく、まろやかで美味しいということがわかったのです…!

ゲテモノ魔物を食べるその姿、まるで現実の人類の料理史そのもの!?

『ダンジョン飯』

 マルシルが苦労して捕獲した首付きマンドレイクのほうが、美味しいことに気づいた一行。効率ばかりを求めて、手早くマンドレイクを獲ってきたセンシは、手間暇をかけるほど味が良くなるという料理の本質を再確認しました。そしてその大切なことを思い出させてくれたマルシルに、栄養豊富そうだからと、一番グロテスクなマンドレイクの頭を差し出したのでした。

 このエピソードは、マルシルが「いらんわーーッ」と泣き叫んでオチがつきましたが、彼らは他にも、「スライム」、「人喰い植物」「動く鎧」といった魔物など、食べるのに抵抗のある見た目をしたゲテモノを食べながら、ダンジョンを踏破していきます。

 ゲテモノなんて絶対に食べたくない! …という人が大半だとは思いますが、私たちも実は普段から、なかなかのビジュアルをした生き物を食べていること、お気付きですか?

 いまや美味な食材として広く認知されているタコ、イカ、ナマコ、ウニ、アンコウなども、かなり独特のフォルムをしており、最初に食べるのはかなり勇気のいる行動だったのではないでしょうか。また、フグなどの毒のある食材は、その特性が解明される前に食べて亡くなってしまっている方もいるでしょうが、先人たちがどの部位に毒があるのかを調べ、食べられる部分を見つけ出せたことで、今では高級食材となっているわけです。

 このことから、現在ゲテモノ料理としてときどき食べられているカエルやサソリや昆虫なども、当たり前にスーパーや食卓に並んでいる未来が来ていてもおかしくないと言えるでしょう。

 ――過去の料理人や料理研究家の勇気と根気のうえに、いまの私たちの食文化は成り立っているわけです。そう、つまり、魔物というゲテモノを必死に料理して食べている主人公たちを通じて、現実の人類の料理史に刻まれる先人たちの葛藤や努力を知ることができるのが、この『ダンジョン飯』という作品なのかもしれませんね。

『異世界食堂』

『異世界食堂』

作品データ/『異世界食堂』(1巻より抜粋) 原作:犬塚惇平 漫画:九月タカアキ キャラクター原案:エナミカツミ 『ヤングガンガン』連載、既刊3巻 ©犬塚惇平・九月タカアキ・エナミカツミ/スクウェア・エニックス

 一週間に一度、毎週土曜日に異世界へと繋がる食堂「ねこや」。本来は異世界ではなく日本に存在するお店ですが、そんな「ねこや」には、ドワーフやリザードマンなど多くの異種族が訪れます。どんな種族が来てもいつもとなにも変わらずに、陽気に最高の料理を提供する店主。そんな料理に惹かれて、異世界の住人たちが「ねこや」の常連となっているようです。

 今回紹介するのは、森に生息する気高い種族・エルフが、「ねこや」に来店したときのエピソード。森で生活するエルフたちにとって動物は友達であるため、食べないのはもちろん、その卵や乳にも手を付けることはありません。そんなエルフの森で一番の料理研究家と言われるファルダニアが、「ねこや」店主に出した条件とは…?

肉も魚も卵も乳も食べないエルフが作る異世界系ヘルシー野菜スープ

『異世界食堂』

 本作は、異世界の住人たちが人間界にある「ねこや」の料理を食べるという逆転設定のため、異世界飯が出ることは少ないのですが、エルフであるファルダニアが調理する異世界スープが登場するシーンがあります。

 普段、野菜を中心とした食生活を送っているエルフたち。ファルダニアがスープを作る描写では、塩気が多かった場合には水分を多く含む野菜を足したり、香り付けにハーブを入れたりしており、エルフがヘルシーな料理を食べていることがわかります。

 さて、そんな料理に自信を持つファルダニアは、たまたま発見した「ねこや」に入りますが、メニューに載っているのは肉や魚を使った料理ばかり。注文できる料理がないものの、黙って席を立つのも申し訳なく思ったファルダニアは、無理難題を押し付けるのでした。

「肉も魚も卵も乳も入っていない料理があるならそれを」

「ないなら特に何もいらない すぐに出ていくわ」

 言った後に「ちょっと意地悪言い過ぎたかしら」と反省するファルダニアですが、それだけ自分の食事が森の外のものとは合わないことを自覚していたのでしょう。できるはずもないと思って席を立とうとしたファルダニアを店主は呼び止め、提供した料理――それはトーフステーキでした。

言葉や文化も関係ない、種族の壁を越えて繋がれる共通言語「料理」

『異世界食堂』

 野菜中心のヘルシーだけれど簡素な料理をずっと食べ続けてきたファルダニアにとって、こんがりと焦げ目のついた表面にふわふわの食感の豆腐、それと絶妙にマッチするポン酢のハーモニーとの出会いはかなりの衝撃だったようで、しっかり完食。「私の人生は変わった」とまで思わせたようです。かなりのツンデレなようで表には出しませんが…。

『異世界食堂』は、マンガですから基本的にどの種族も日本語を話していますが、料理というたった一つのファクターで、種族を超えた強い繋がりを生み出す様子が鮮明に描かれています。

 国際化の進む現代において、このエピソードから学べる教訓は多いのではないでしょうか? 例え生まれた国が違っても、言語という壁があっても、一つの共感できるものがあれば人と人は繋がることが出来るはず。それはなにも難しいことではなく、お互いに少しずつ歩み寄ることで実現するものなのではないでしょうか。

 もちろん、料理だけではなく、スポーツや音楽を通しても気持ちを共有することはできるでしょう。大切なのはきっと、言葉や文化の違いに臆することなく、一歩踏み出す勇気なのだと、本作から学ぶことができそうですよね。

 また、『異世界食堂』は他の2作品とは違い、人間界の料理を異世界の住人に振る舞っていますから、作中にはメンチカツやビーフシチューなど、私たちが普段口にしている馴染みのある料理ばかりが登場します。そういった我々にとって“当たり前の料理”を、異世界の住人たちが驚きとともに感動し、絶賛している姿を見ると、なぜか嬉しくなっちゃうんですよね。普段食べ慣れていて大きな感動はなくなってしまっている料理も、『異世界食堂』を読むことで、その魅力を再確認できるのではないでしょうか。

※情報は記事公開日時点のものです

Back to Top