『空挺ドラゴンズ』
作品データ/『空挺ドラゴンズ』(1刊より抜粋) 作者:桑原太矩 『月刊good! アフタヌーン』連載中、既刊6巻 ©桑原太矩/講談社
龍が生息する架空の世界で、捕えた龍を解体してその肉や油などを売って旅をする捕龍船、「クィン・ザザ号」の冒険を描くファンタジー作品。自由奔放ですが頼りになる主人公の男性・ミカと個性豊かな乗組員たち、彼らが巨大な龍と戦い、捕獲していくというストーリーになっています。
しかし、本作では龍との戦いのほかにも、捕えた龍を調理し、食べるシーンが多くみられるのが特徴。実在しない龍という食材ながら、おまけのページでは調理方法が細かく記載されるなど、「異世界飯」ファンにも嬉しい作者のこだわりが感じられるんですよね。今回は、船内に迷い込んだ小型の龍を捕獲し、調理するシーンを紹介します。
大型ばかりが龍じゃない…小型の龍は超高級品!? その味やいかに?
「クィン・ザザ号」の新人女性乗組員・タキタは、支度金として船に借金があるため、なかなかひもじい生活を強いられています。そんなある日、船に迷い込んだ見たことのない小さな龍を発見。本作に登場する龍は大型クジラばりに巨大な個体であることが多いため、タキタが目撃した小型の龍はかなりレアな種なんでしょう。
そんな小型龍を自力で捕まえて、小遣い稼ぎをしようと目論むタキタでしたが…………うまくいかず。船員のなかにその小型龍に噛まれ、体調を崩してしまう被害者が出てしまったため大騒ぎとなり、ミカらと協力して捜索。無事に小型龍を捕獲することができました。
ところが、ミカいわく「こんなちいさいの油もとれねーし たいした金にならねーよ」とのことで、タキタの小遣い稼ぎの夢はあっけなく撃沈したため、空腹のミカと共に食べることに。
現実世界におけるイタリア・トスカーナ州で生まれた鳥の調理法“悪魔風”にして、この龍を食べることに決めたタキタら。珍しい種類の龍で、噛まれて体調を崩してしまった被害者がでたため、毒がある危険性も危ぶまれていましたが、毒など気にせず口にするミカは、「皮がバリバリで香ばしくて! 身がホロホロで旨みがじゅわぁって!」と大絶賛。
ちなみにこの小型龍に毒はなく、倒れてしまった船員はただの働きすぎによる風邪だったことが判明。一件落着となりましたが、実はこの小型龍、王室に献上予定の超希少種が別の船から逃げ出していたらしく、そのお値段は「20億」だったとか……。もし食べずに売っていれば……。タキタの借金返済はまだ先になりそうです。
龍料理から学ぶ…食事ができるありがたみ、美味しく食べられる幸せ
架空の龍の調理法であるにも関わらず、とにかく詳細に調理法が書き記されている『空挺ドラゴンズ』。壮大で漠然とした“生と死”を根幹とし、人間味や愛情といったスパイスを混ぜ、どこか『ドラゴンクエスト』シリーズや初期のジブリ作品を彷彿させる世界観が魅力です。そして、生き物としての“龍”という存在の設定が非常に細かくされていることが、醍醐味と言えるでしょう。
ファンタジーな世界観の権化ともいえる龍を、現実にある調味料や調理法で料理していく様は、龍が実在するかのような錯覚さえ起こさせてしまうほど。あまりにも美味しそうに描かれた料理たちに、思わずよだれが出てしまいますね。
今回紹介したエピソードも含め、生きるために食べること、生活のために狩ることという人類の根幹がテーマとして描かれているのかもしれません。“どうせ食べるのならばより美味しく食べよう”という、作者の信念が込められているようにも感じます。
現代の日本では簡単に食材が手に入り、ほとんどの人が1日3食を何不自由なく得られる時代ですから、食事に対するありがたみや感謝をつい忘れてしまっても仕方がないかもしれません。もしかすると、そんな時代だからこそ、いつでも食事がとれるとはどういうことかを、もう一度考えようと作者は訴えているのかもしれませんね。
美味しい料理を食べられるということは、それだけで幸せなことです。日本で暮らしていれば、いつでもどこでも美味しいご飯が食べられることが多いですが、マンガの世界だけでなく、現実世界にもそのような贅沢が出来ていない人がいることも事実です。
本作で描かれる垂涎の龍料理に想いを馳せつつ、そんな龍を捕獲するミカたちの生き様や命懸けの捕獲劇を見れば、“美味しい食事が食べられる”という幸せを、改めて噛みしめられるのではないでしょうか。
