1. ヒトサラ

【必修】じつはシンプル!会席料理を2倍楽しむ基礎知識

予約ができるお店一覧

会席料理と聞くと、「決まりが多くて難しそう」というイメージを持つ人も少なくないはず。しかし実際は決まりごとはほとんどなく、和食の魅力がぎっしり詰まっているのです。今回は、山梨県富士吉田市にある割烹「酒と肴 山吹」の渡辺健太郎さん(32歳)にご協力いただき、会席料理の楽しみ方についてクローズアップします。
取材に協力いただいた「酒と肴 山吹」の店主・渡辺健太郎さん 取材に協力いただいた「酒と肴 山吹」の店主・渡辺健太郎さん

【その1】会席料理の楽しみ方3カ条

会席料理の楽しみ方3カ条

お茶を楽しむための「茶懐石」に対し、「会席」はお酒を楽しむための料理。じつは、「一汁三菜」を基本とした献立であること以外に細かい決まりはありません。原則は、一品一品、順番に出てくる料理をじっくり味わえばよいのです。ここでは、会席をさらにおいしく味わうために知っておきたい、「会席料理の楽しみ方3カ条」を紹介します。

1つめは、ズバリ「お魚」。お刺身をはじめ、日本独自の和食はお魚を中心に発達してきたといえます。「魚って本当に難しい。素材の良し悪しの見極め方、身を下ろす技術、そして調理法、どれをとっても難しいんです」と渡辺さん。だからこそ、お魚料理には料理人のさまざまな手仕事や工夫が隠されています。そこに注目すれば、会席をもっと楽しめるはずです。

2つめは「四季」。会席料理は、季節ごとに献立が変わっていきます。その時々の旬の食材をふんだんに使い、季節の移ろいを五感で感じ取れるように調理するのが、料理人の技の見せどころ。「とにかく目でも料理を楽しんでいただけるように、季節それぞれの彩りを意識しています。あとは、あまり食材を『いじりすぎない』ということでしょうか。旬の食材それぞれが持った旨みを引き出すことを大事にしていますね」(渡辺さん)。

最後は、「器」。ちょっと意外かもしれませんが、この器もまた、会席の醍醐味と言えるでしょう。洋食のコースは白い磁器やガラスの器で統一されることが多いのですが、和会席では陶器を中心に色や形、手触りに個性がある様々な器が登場します。渡辺さんも、料理の色味と季節に合わせた器を選んで、その料理にぴったりの器になるようにしているそうです。

【その2】8品で学ぶ、会席料理の奥深さ

8品で学ぶ、会席料理の奥深さ

会席を楽しむ3つのポイントがわかったら、次は料理の順番や内容に込められた意味を考えてみます。渡辺さんにつくっていただいた、秋をテーマにした8品の会席料理を例に見ていきましょう。
※ここで示すのは会席料理の一例です。お店や料理人によって、順番や内容が異なります。

1.先付(さきづけ)

8品で学ぶ、会席料理の奥深さ

お酒と一緒に楽しむ会席料理のトップバッターは「先付」。素材を生かした淡泊な味わいのものが供されます。乾杯をしたら、まず先付を肴にしてください。より一層お酒の味が引き立ちます。写真は胡麻豆腐の山葵添え。しっかりとした胡麻の風味ともっちりとした食感が絶妙です。

2.前菜

8品で学ぶ、会席料理の奥深さ

続いては「前菜」。会席料理の中で、最も季節を感じられる一品です。旬の野菜を中心に、彩り豊かな料理が5-8種類ほど揃うのが通常。食べるのがもったいないような、目でも楽しめる品々です。写真は、あんきもポン酢、むかごの塩蒸し、きのこと春菊のおひたし、茄子の玉みそ田楽、さつまいも甘露煮、てまり寿司の6品。趣向を凝らした品々にさりげなく添えられたモミジが、秋の味覚を演出しています。

3.お造り

8品で学ぶ、会席料理の奥深さ

和食の醍醐味とも言える「お造り(刺身)」。一汁三菜のひとつで、「向付(むこうづけ)」と呼ぶこともあります。その日最も良いお魚が一品だけ登場する場合もありますが、3点盛りなど複数のお魚が乗っている場合は白身から赤身の順番で頂きましょう。写真は、真鯛、甘えび、まぐろ、赤貝のお刺身。鮮度を追究する、料理人の丁寧な仕事が光ります。

4.温物(ぬくもの・あつもの)

8品で学ぶ、会席料理の奥深さ

ここからは、料理も中盤に入ってきます。「温物」は、煮物・炊き合わせとも呼ばれる一汁三菜の一つ。野菜を使った暖かい汁気のある煮物料理です。繊細で料理人の技術が求められる料理でもあります。写真は、鴨と里芋の治部煮。鴨の旨みが溶け込んだとろみのある汁が、ほくほくとした里芋に絡む味わい深い逸品です。

5.焼き物

8品で学ぶ、会席料理の奥深さ

「焼き物」も、一汁三菜の一つ。献立のメイン料理のひとつでもあります。旬の魚をシンプルに焼いて供されることが多く、醤油漬けやみそ漬けといった漬け魚が登場することもあります。写真は、ぶりの照り焼き。ふっくらしたぶりの味わいを、甘辛いタレが引き立てています。

6.強肴(しいざかな)

8品で学ぶ、会席料理の奥深さ

ちょっと読み方の難しい「強肴」は、いわば料理人のダメ押しメニュー。「預け鉢(あずけばち)」とも言い、一汁三菜に加えておすすめしたい「もう一品」でもてなします。この強肴が実質的なメイン料理となっている場合もあります。写真は、三沢牛のサーロイン。脂がたっぷり乗ったサーロインを、塩と山葵でシンプルに頂く、素材の味が生きた絶品です。

7.食事

8品で学ぶ、会席料理の奥深さ

コースもいよいよ終盤です。「食事」は、言わば締めの料理。混ぜご飯や寿司などの「御飯物」、味噌汁やすまし汁などの「止め椀」、そして「香の物(漬物)」の3品で構成される場合がほとんどです。写真は、舞茸の混ぜご飯、あおさの味噌汁、胡瓜と山芋の漬物。香り高い舞茸ご飯でさっぱりと締めることができます。

8.水菓子

8品で学ぶ、会席料理の奥深さ

もとは果物を意味する「水菓子」。会席におけるデザートです。生の果物のほか、あんみつや羊かんといった和菓子、シャーベットやアイスクリームなどの洋菓子が登場することもあります。写真は、抹茶のアイスクリーム。添えられた栗の甘みと抹茶の渋みが絶妙に溶け合います。

まとめ

素材本来の味わいや四季の彩りなど、五感で楽しめる会席料理。その裏には、料理人のこだわりや工夫、おもてなしの精神が秘められているのです。心のこもった料理とともに、大切な人たちとお酒を酌み交わして絆を深めてみてはいかがでしょうか。
「ヒトサラ」では、全国の会席料理のお店を多数紹介しています。
予約ができるお店はこちらから。

取材協力
酒と肴 山吹
撮影・編集
佐藤史親

Back to Top