酒は冬につくる!「寒造り」でひもとく日本酒の製法
写真:井出醸造店 井出與五右衞門社長(右)と初沢則孝杜氏
- まず、この酒蔵について教えてください。
- 社長・井出與五右衞門(よごえもん)さん 約300年前、当家11代目が味噌・醤油の醸造を開始し、創業しました。そして江戸末期の1850年ごろに、16代目当主の井出與五右衞門が日本酒の醸造を開始し、今に至ります。私で21代目となります。
- とても長い歴史があるんですね。どのような酒造りをされているのでしょうか。
- 井出社長 すべてのお酒は冬につくります。「寒造り」と呼ばれる方法で、温度が低く雑菌の少ない環境で醸造できることと、秋にできたお米を品質を変えずに仕込むことができることが主な理由です。2000年といわれる日本酒づくりの歴史の中で、先人たちが試行錯誤を繰り返して成立した伝統的な仕込み方です。
- 具体的にはどのような作業になるのですか。
- 杜氏(とうじ)・初沢則孝さん その点は、製造の責任者である私からご説明します。10月、醸造に使う器具はもちろん、壁や天井などすべてを清掃するところから酒造りは始まります。仕込みにかかるのは11月から。原料になる米は、麹菌を増殖させるために使う「麹米」と、蒸したあと直接仕込みに使われる「掛け米」に分かれます。まず、麹米でつくった「米麹」と酵母などを仕込み水に入れます。麹菌の働きで米のデンプンが糖に分解され、それを酵母が食べて発酵し、アルコールがつくられます。酵母を増殖させたうえで、掛け米と米麹を数回に分けて仕込み、そこから20~30日でお酒ができあがるのです。そこから3月にかけて繰り返し仕込みを行っています。
