1. ヒトサラ

【クラフトビール】
世界大会常連ブルワリーに聞く
ドイツスタイルビールの
ABC

近年ファンを増やしているクラフトビール。さまざまなタイプがある中、ホップ、麦芽、水、酵母のみを使いながらも多彩なビールが楽しめる「ドイツスタイルビール」にはたくさんの魅力が詰まっています。ドイツスタイルビールの世界大会で何度も受賞を経験している「富士桜高原麦酒」で、その美味しさの秘密に迫ります。

ドイツスタイルビールの多彩なおいしさとは?

「誰もが知るビール大国・ドイツ。国民1人あたりのビール消費量はなんと年間104.2リットル(2016年キリン調べ)に上ります。そんなドイツが生んだビールには、どんな魅力があるのでしょうか。富士桜高原麦酒の醸造士・荒井竜彦さんにうかがいました。

富士桜高原麦酒の醸造士・荒井竜彦さん 富士桜高原麦酒の醸造士・荒井竜彦さん
まず、ドイツスタイルビールは、普通のビールとどう違うんですか?
ビールと言われてイメージするのは、黄色くて澄んでいて、冷やして飲むものですよね。日本で飲まれているビールのほとんどは、「ピルスナー」というタイプ。ですが、ドイツスタイルビールの種類はとても多く、その味わいはとても振れ幅が大きいんですよ。色や香り、発酵の方法が異なる様々なタイプのビールが各地にあります。
ドイツでは、ビールが生活の中に根付いています。朝起きて、カフェで新聞を読みながらビールを飲む光景が見られたり、自転車乗りの喉を潤すために生まれた「ラドラー」というレモンビアカクテルがあったりします。何百年もの歴史に裏打ちされた「ビール文化」が醸成され、多種多様なビールが生まれてきたのだと思います。
ドイツスタイルのビールづくりには決まりがあるそうですね。
はい。ドイツ国内で生産・流通されるビールは、「ビール純粋令」という法律が定める原料であるホップ・麦芽・水・酵母だけしか使うことができません。「純粋令」は500年近い歴史があり、ドイツではこの伝統を守り続けているのです。弊社でも、副原料を一切使わないビール造りを行っています。

醸造所に潜入!ドイツスタイルビールのつくりかた

続いて、ドイツスタイルの良き伝統を生かしたビールづくりを行っている富士桜高原麦酒の醸造所に潜入。ここでは、どんなふうにビールづくりが行われているのでしょうか。

「麦芽」(モルト)
たった4種類の原料で、どうやってビールをつくるんですか?
醸造所をご案内しながら説明しますね。原料のひとつが、麦を発芽させて乾燥させた「麦芽」(モルト)です。弊社ではドイツから輸入しています。一番多く使われるのは大麦ですが、小麦を使うものもあります。麦芽をローストしたり燻煙したりするタイプのビールもあります。
この麦芽を粉砕して醸造に最適な大きさにするところから、ビールづくりは始まります。カレーづくりで野菜を丸ごとでなく、カットするのと同じですね。粉砕された麦芽は、こちらの仕込み釜に運ばれます。
仕込み釜
ずいぶん大きな釜ですね!
2200リットルの容量がある釜になっています。まず粉砕した麦芽をお湯と混ぜ、甘い汁をつくり、濾過して麦汁を取り出します。これを数回行ってタンクが麦汁でいっぱいになったら、最後に煮沸をします。ここで添加するのが「ホップ」です。これはホップを凝縮したものですが、ちょっと嗅いでみてください。
すごく華やかな香り!まさにビールの香りです。
ビールの苦みと香りのもとになっているのが、このホップなんです。弊社で使用しているのは15~20種類くらいですね。これらを単体もしくは組み合わせて使用することで、ビールのキャラクターを出すんです。
発酵タンク
そして最後に酵母が入るんですね。
はい。煮沸を終えた麦汁は、急激に冷却されながら発酵タンクに運ばれます。ここで酵母を入れて、空気と接触させることで、麦汁の発酵がはじまります。酵母は、活動しやすい温度になると、麦汁が持つ糖分をさかんに食べ始めます。すると、糖はアルコールと二酸化炭素に分解されます。ビールに炭酸が入っているのはこのためです。
発酵にはどのくらい時間がかかるんですか?
種類によって異なりますが、数日から数週間発酵をさせることで、麦汁がビールに変わります。発酵を終えたビールは、ラガータンク(貯蔵タンク)に移してもう一度発酵をさせ、完成となります。ビールづくりにはトータルで3週間から5週間くらいかかりますね。これは完成直前のビールです。ちょっとテイスティングしてみてください。
編集佐藤
編集佐藤 編集佐藤:「うっめ・・・」
フレッシュなのに、味わい深いです!それにしても、タンクにはいろんな種類があるんですね。
じつは、ビール酵母には「上面発酵酵母」「下面発酵酵母」の2種類があります。それによってタンクの形状も異なっているんです。
まず、発酵を終えた酵母が上面に浮いてくるのが「上面発酵」です。常温に近い温度で発酵し、香りやコクが豊かなビールになります。歴史がとても長く、エールやヴァイツェンなどがこれに当てはまります。
そして、酵母が下面に沈殿してくるのが「下面発酵」です。低温でじっくり発酵し、すっきりした味わいのビールをつくることができます。19世紀に発見された新しい種類の酵母ですが、今ではこちらのほうが一般的になりました。ピルスナーも下面発酵酵母でつくられています。
ビール造りってとっても奥が深いんですね
はい。ホップや麦芽、酵母に種類によって、色や香り、味わいの表現の仕方がたくさんあります。醸造の過程は、手のかかる子どもを育てるようなものです。ビールは必ず「声」を発していますから、五感でしっかり向き合うことが一番大切です。その声が教えてくれることを生かし、日々実践していくことが、良いビールづくりにつながると考えています。その探求に終わりはありませんが、私たち醸造士もビールと一緒に成長できれば良いなと思います。

これだけ覚える!ドイツスタイルビール4選

ドイツスタイルビールの製法を学んだところで、その多彩なビールの表情を見てきましょう。荒井さんの解説で、富士桜高原麦酒のビールを例に、4種類のドイツスタイルビールをセレクトして紹介します。

1.ピルス

ピルス
スタイル
ジャーマン・ピルスナー(下面発酵)
爽快な苦みとキレ
適温
低め

世界中でポピュラーなビールで、日本で流通しているビールの多くがこのタイプです。下面発酵によるクリアなキレと苦みが特徴で、最初の一杯に最適。肉料理や魚料理など、料理を選ばずオールマイティに楽しめます。

2.ヴァイツェン

ヴァイツェン
スタイル
ヘーフェヴァイツェン(下面発酵)
フルーティーでまろやか
適温
やや高め

小麦麦芽を使用した下面発酵のビールです。苦みが強くなく、フルーティーで華やかな香りが特徴。女性にも人気です。多様な料理に合いますが、中華に合わせるのがおすすめ。香りを楽しむため、冷蔵庫から出して少し置いてから飲んでください。

3.ラオホ

ラオホ
スタイル
バンベルクスタイル・ラオホビア(上面発酵)
スモーキー
適温
高め

ドイツ・バンベルグ地方の上面発酵ビール。燻煙した麦芽を使っているため、スモーキーで味わい深いビールです。お酒が好きな方ははまってしまうのだとか。ベーコンとかスモークナッツなどスモーク製品、ラムチョップや焼肉・ホルモンなどと楽しみたい一杯です。

4.シュヴァルツヴァイツェン

ラオホ
スタイル
デュンケルヴァイツェン(上面発酵)
甘くてほろ苦い
適温
高め

「シュヴァルツ」は黒いという意味。ローストした麦芽を使用した上面発酵のビールです。ほろ苦さと多少の酸味の中に甘味がある、複雑な味。あまり冷やさずゆっくり楽しみたいビールです。力強いビールなので、ロースト系の料理や濃厚な味の料理にも合います。読書をしながら、チョコレートなどスイーツと一緒に味わうのもおすすめです。

お気に入りがきっと見つかる!

ドイツビール

「冷やしてゴクゴク飲む、苦い飲み物」というビールのイメージを払拭してしまうほど、さまざまな表情を見せてくれるドイツスタイルビール。たった4種類の原料から、醸造士たちの熱い思いと努力によって日々魅力あふれるビールが生み出されています。身構えずにさまざまなビールに触れることで、きっと自分のお気に入りのスタイルを見つけることができるはず。仲間や家族との楽しい時間を、ドイツスタイルビールと過ごしてください。

東京でドイツスタイルビールが飲めるお店のご紹介
取材協力:富士桜高原麦酒・シルバンズ
https://hitosara.com/fe_393915/
編集
佐藤史親
撮影
中村慎吾

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