大人の洋食が似合う街 神戸の仏・伊・西料理へ | ヒトサラ
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Recette
- 1960年生まれ。90年続いた実家の鰻屋からフレンチの世界へ。【ル・ポンドシェル】で薫陶を受け、伝統的なフレンチを継承する一方、一日会(ついたちかい)という勉強会の会長も務める
- 野鴨と養鴨を掛け合わせた、珍しいビュルゴー家のクロワゼ鴨。もも肉はコンフィ、胸肉はローストに。
- デザート。焼きガナッシュ、飴細工が見事な苺の飴がけとラングドシャ、マスカルポーネのアイス
- パテ、毛ガニのタルタル、ホワイトアスパラのブランマンジェにエスカベッシュなど、贅沢な前菜
- 神戸の山の手。地下ではあるが、エントランスに面した半個室では、日の光と緑を浴びて麗らかに
神戸フレンチの先駆けであり、
港町を代表する老舗神戸といえば、神戸肉、南京町に代表される中華、そして今回の洋食。そう、関西きっての港町として歴史を重ねてきた街である。特にフレンチのイメージは意外と強い。その中でも老舗と呼べる一軒が【Recette】だ。「フレンチ」ではなく「フランス料理」という呼び名が一般的だった頃から、日本人が最も安心できる味であると同時に、ジビエなど本格的な食材も手がけてきた。オープンよりシェフを務める依田英敏氏は、「20年前はまだジビエは一般的ではなく、同業者からしかオーダーがなかったんですよ」と笑う。
カジュアルフレンチが人気を増し、きちんとダシをとらない店も増えているが、フォンドヴォーもフュメドポワソンも、流行に左右されず、常に丁寧に仕込む。トラディショナルでありながらも、超低温で凍らせて砕く技法を取り入れたり、「一応、試験管もありますよ」と笑う依田シェフは、時代をなおざりにしてはいない。
濃い飴色にするために長時間じっくり炒めた、甘くてちょっとビターな玉ネギのキッシュ、フレッシュな素材とコクのある味付けの毛ガニのタルタルなど、大きなガラス皿に贅沢にちりばめた前菜。カンバスに絵筆を走らせるように、ソースのあしらいで飾られた鴨は、ビュルゴー家のシャラン鴨の中でも稀少なクロワゼだ。胸肉はキメの細かさが際だち、もも肉は豊かな滋味が香る。これぞ神戸フレンチと呼びたい、老舗の一軒。 -
Bec
- 1975年生まれ、神戸出身。この世界に入るまで、実はお酒が飲めなかったという岸本達哉氏。神戸や東京、本場フランスの店で研鑽を重ね、シェフ兼経営者兼皿洗い…として、4年前に同店をオープン
- 田舎風お肉のパテは、ワイン→パテ→ワイン…を永遠に続けたくなる、最高のワインの友
- 余熱を使いじっくり焼いたビュルゴー家のシャラン鴨。切った断面に塩と、25年もののバルサミコを
- 「豆と野菜のスープ」。7種の野菜を生かした、白インゲン豆のスープ。
- カウンターのみだが、角地ならば3~4名でも横並びにならず楽しめる。これも緻密な計算のひとつ
全てを背負いカウンターに立つ。
孤高の料理人の店オープンしてまる4年。さらにその2年前から、店主の岸本達哉氏が心に決めていたことがある。それは「何もかもひとりでやる」ということ。「気持ちを込めて店をつくって料理をつくって、全部自分のせいにしたいんです。ま、人を雇う勇気がないんですが」と岸本氏。たったひとりで店に立つために、店やキッチンのサイズ、形、カウンターの長さ、席数、導線に至るまで、ありとあらゆる要素を考え抜いたという。
そうして出来上がったのが、両サイドが軽いL字で、薄いコの字形のカウンターだ。その真ん中で岸本氏が生み出す料理、その技法は実にトラディショナル。例えば、最低でも10日は寝かすという『田舎風お肉のパテ』は、豚、鶏のレバーなど、フレンチではスタンダードなレシピ。味の肝になる脂とレバーを丁寧に仕込むのはもちろんだが、変わったところといえば、通常の2倍ほどという塩分濃度。だがしかし全くそれを感じさせないのだ。むしろワインの相手にちょうど良い塩梅。寝かせることで、食材と脂、そして塩分が見事に馴染んでいるのだ。
このパテも、鴨も、ワインの共として選りすぐって、生き残ったメニュー。「無性に食べたくなる、呼ばれる味になれば嬉しい」と、不惑の世代を迎えた岸本氏は言う。ワインバーにしては料理が多い店は、誰のせいにもしたくないと、スタンドアローンを貫く店主の誓いの城でもあるのだ。 -
Ca Sento
- 15歳で料理の世界にエントリー。1998年から8年をイタリア、スペインで修業、26歳にしてスペイン・バレンシア【Ca sento】のシェフに。2006年帰国し、2008年に自店をオープン。一昨年にリニューアル
- スペインから仕入れる鰯を、丁寧に塩抜きし、加賀太きゅうりをあしらったもの
- いながきファームのトマトを搾り、エスプーマとソースに。甘みと酸味、良いトマトの、全ての味がする
- ルタの葉のジュレと、和歌山のブラッドオレンジのアイス。ルタは花も最後の仕上げに使っている
- 一昨年のリニューアルで、店舗面積はほぼ倍に。中でも美しく保つ厨房のサイズは一気に広がった
料理はひとりではなく、
チームで供するもの自らを「アスリートタイプ」と言う福本伸也シェフ。イタリアとスペインで計8年を修業に費やし、現在神戸唯一の三ツ星店【カセント】の料理にたどり着いた。氏は既存の料理としてくくられることを嫌うが、敢えて最も近いジャンルを挙げるならスペイン料理。「ただ、食べていただいて『いや、ちゃうやん』と思われるかもしれません。同じエビを使っても、スペインのものと日本のものではポテンシャルが違いますから」と笑う。
例えば、地元・いながきファームから送られてくるトマトを使った一品は、濃い甘みと酸味がもつれあって口に広がり、トマトのコクが上あごを撫でていく。当地から塩蔵の状態で取り寄せ、きれいに洗い、塩抜きして、小骨を取り除き、丁寧に仕込むアンチョビは、上等この上ないへしこのよう。人気のオジャは甲殻類のリッチな香りに引きこまれるが、オリーブオイルやニンニクを使っていても味わいは意外とサッパリしていて、「オジャは別腹」と多くの人が言うように、すんなりと胃の腑に落ちていく。料理はどれも、インパクトやパンチ力というよりも、素材の味を隅々まで、ほんの細かいところまで研ぎすませるような味だ。
福本氏は言う。「一流とは、顔が売れることではなく、厨房のダスター1枚がきれいであること」と。それを成すのはひとりではなく、生産者を含めて、店というチームで生み出す。それが唯一無二の、我々の味、ということなのだろう。 -
ラ メゾン ドゥ グラシアニ 神戸北野
- 【タイユバンロブション】や【ザ・リッツ・カールトン大阪】などを経て、料理長に就任した金丸直樹氏。料理は「直球勝負」と語り、厨房を望む窓から手を振ったりという茶目っ気も
- 海老殻のソース、リコピンオイル、レモンビネガーをあしらったオマール海老と白人参のバヴァロア
- ニュージーランド産の仔羊は、もも肉を香ばしくローストに、肩肉は柔らかくトマト煮込みに
- フレンチレストランが本気でつくったリキッド状のチーズケーキ。セロリのソルベを添えた意欲作
- ワインセラー前のウェイティングではシャンパンを嗜みながら、シェフの仕事ぶりを見ることも
北野を代表する洋館は
フレンチの名店なり異人館、旧居留地など、神戸を形容する言葉の数々。その多くは、港町であり、古くから海外の文化に馴染んできた由縁にある。【ラ メゾン ドゥ グラシアニ 神戸北野】はその代表格と言っていい。店の前身はフランス人の貿易商、グラシアニ氏が神戸の自宅として明治41年に建てたもので、この白い洋館は高級住宅地の北野にあって「ザ・神戸」という趣を今に伝えている。
100年の昔に思いを馳せる歴史的建造物、しかも豪邸というイメージを損なわず高級フレンチとしてあるが、シェフの金丸直樹氏は「味は直球勝負、召し上がっている間に、クエスチョンマークが浮かぶような、料理ではありません。考えている間にコースが終わっては意味がないので」と言う。
前菜はキャビアを戴いたオマール海老。その下には白人参のバヴァロアが潜んでいる。コリコリとした歯ごたえの海老の甘み、そして白人参の野菜としての甘み、キャビアの塩味、それぞれの食材が持つ味を尊重した上で、ソースのひとつに加えたレモンビネガーの酸味がバランスをとっている。
難解すぎないその味は、大人はもちろん、例えば、子供連れでも楽しめる。その幅の広さと奥行きの深さは、洋の東西を問わず様々な文化を取り入れ、血肉にしてきた神戸の気風に通じているのかもしれない。そしてまた、店が街に馴染んでいくのだ。 -
Bistrot Enry
ビストロ アンリー
078-221-6777 住所:兵庫県神戸市中央区中山手通3-10-11 内海ビル1F
営業:ランチ11:30~L.O.14:00/ディナー18:00~L.O.21:00
休日:水曜▼ 移転統合しました
詳細は、078-599-7774へ
お問い合わせください
※このページのデータは、2015年8月上旬取材時のものです。メニュー、営業時間、定休日などの情報は変更されることもございますので、あらかじめご了承ください。