トップシェフの技と名店のもてなしに出合うオトナの銀座へ。 | ヒトサラ
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ESqUISSE
- 日本の食材を取り入れ、時にスパイスを加えたり、ハーブでアクセントをきかせたり。フレンチの核心を突きながらも、リオネル氏は自らのインスピレーションや感情、情熱を大切に、それらをひと皿ひと皿に落とし込む
- 『再生』と命名した前菜。発酵など多彩な調理法で仕立てた約25種の野菜の魅力をビビッドに浮かび上がらせる
- この日のメインは仔羊のローストが登場。ここにも黒カルダモン、アニスなどが要所で使われる
- デセールは、チェリージュビレを意識し、チェリーやシソ、バラなど、アントシアニン繋がりの味でまとめた
- 南仏をイメージさせる店内。ランチは自然光が差し込み、ディナーはキャンドルの明かりがテーブルを照らす
情熱、感情、感性を宿した
美味なるキュイジーヌ・ノマド“旅”がなぜ人の心を突き動かすのか。それは、未知なる邂逅がそこに待ち受けているからではないだろうか。キュイジーヌ・ノマド=旅する料理。そう形容される【ESqUISSE】の料理には、エグゼクティブ・シェフ、リオネル・ベカ氏の、そうしたサプライズが必ず潜んでいる。
それは、『再生』と名付けられた前菜ひとつとっても明らかだ。味噌で軽く発酵させたグリーンピースやセロリは、ヨーグルトとフロマージュブランと合わせ、アスパラガスは自家製のミックススパイスでウオッシュしたり……。約25種の野菜を駆使し、思いもよらぬ調理法と食材の組み合わせで、驚嘆をもたらす。ひとつひとつ味わう度に見い出す感動は、まさしく旅のそれと同じなのだ。それでいて、不思議と食材同士が共鳴し合い、料理としての統一感が損なわれることがないのは、リオネル氏の料理に対する確固たる信念があるからだ。
「フランス料理の伝統や技術を重んじるのは当然、使う野菜の品種がファミリーであったり、地域性を共通させたり、一本の筋を通すことが重要。それはサーカスでいう命綱みたいなもので、その信頼があるから料理も冒険できる」と話す。
一方、南仏を彷彿とさせる空間は、いい意味でグランメゾンらしからぬナチュラルな雰囲気が漂う。そう、旅を楽しむには、心身の寛ぎも大切な要素である。 -
ristorante KURODINO
- 自慢の素材である千葉県産カシュー仔豚は、丸ごと仕入れて部位ごとに多彩な料理に。写真はサリエットと呼ばれるハーブで爽やかに仕上げたロースト。カリッと香ばしい皮とジューシーな脂が見事に調和している
- 『セージとローズマリーを練り込んだタリオリーニ』。生ハムとクリームのソースに燻製チーズがコクをプラス
- 【エノテカ ピンキオーリ 東京】ではスーシェフとして活躍した丸山シェフ。繊細かつ斬新な技が光る
- ワインはイタリア以外に全部で12ヶ国の品揃え。銘醸ワインも幅広くオンリスト
- 木の温もりを活かしたインテリアをはじめ、器やカトラリーもいたってシンプル。居心地や使いやすさを追求
名店のDNAを受け継ぎ
さらなる一歩を踏み出すフィレンツェに本店を構え、世界中の食通たちを魅了し続ける名店【エノテカ・ピンキオーリ】。東京店は2010年、惜しまれつつも幕を下ろしたが、そのDNAは同店のソムリエであった黒田敬介氏と彼を敬愛するスタッフたちにより、ここ【クロディーノ】に受け継がれた。マネージャーを務める鷹尾正明氏、そして厨房に立つ丸山孝一シェフも、黒田氏とともに歩み続けてきた人物。店は小箱になり、客席は減ったが、彼らのチームワークはこの店で一層強固になった。
そんなスタッフたちの間で共有されるのは徹底した“ゲスト目線”。たとえばシェフ自らが毎日築地に赴いて仕入れる魚介を中心とした厳選食材。旬素材の持ち味を引き出すモダンイタリアンは、優しくも印象深い味で、ゲストの心に深く刻まれる。あるいは、550アイテムにもおよぶワインリストは、お客様の選び安さを重視して価格別に並べる工夫を凝らしたり、席数を減らすことで細部まで行き届くサービスも然り。木目を基調とした空間も、適度な温かさでゲストを迎えてくれる。
素材感が際立つ料理と、それを引き立てるワイン。心地よい空間と行き届いたサービス。さらに価格も手頃という魅力まで備えているのだから、食の都・銀座の奥深さを、改めて感じずにはいられない。 -
BEIGE ALAIN DUCASSE TOKYO
- インテリアを手がけるのは、世界中のシャネルのブティックを手がける建築家ピーター・マリノ。過度な装飾を控えた洗練された空間が、素材を活かしたシンプルなフランス料理の魅力をいっそう引き立てている
- 濃厚な味わいでありながら素材の旨みも引き立つ『宮崎産尾崎牛 京都 田鶴氏の賀茂茄子 ジロール茸のソテー』
- アラン・デュカスから「私の料理哲学を世界で最も理解し、実践するシェフ」と信頼を寄せられる小島シェフ
- 濃縮された魚介の風味と赤ウニの香りが際立つ『ズッキーニの冷製スープ 唐津産赤ウニと毛ガニ』
- さりげなく配される盆栽や京都の作家による漆器など、日本らしさが空間のアクセントになっている
異なる分野の才能が出会い
新たなる伝説を紡ぐフランス料理の巨匠アラン・デュカスとファッションブランド『シャネル』。異なる分野のトップランナーたる二つの出会いが、銀座の地に一軒のレストランを生んだ。シャネルらしいエレガントな空間で供される、至高の美食。2004年に誕生した【ベージュ アラン・デュカス 東京】は、今なお世界中のグルメ達を魅了し続ける名店だ。
現在、厨房を任される総料理長・小島景シェフは、名だたる店で技術を磨いた人物。「良い素材を見つけることが料理人の一番の務め」というアラン・デュカスの料理哲学に共鳴した、妥協ない素材選びが信条だ。たとえばシェフの代名詞たる鎌倉野菜なら旬の一品を求め、毎朝鎌倉の市場へ。あるいは銘品の噂を耳に挟めば、直接生産者の元へ足を運ぶこともしばしばだ。吟味の末に辿り着いた尾崎牛や唐津のウニ、一級品のみを厳選するフランス産のフォアグラやオマール海老も然り。料理に占める食材の重要性を理解するからこそ、その選定に一切の労を惜しまない。その料理人としての姿勢こそが、本物を知る食通たちの信頼を勝ち得る一因なのである。
素材に、シェフの技に、そして空間に貫かれる哲学、あるいは美学。それはこのレストランが一流であることの、揺るぎない証明なのだ。 -
L’OSIER
- 『シャラン産鴨胸肉のロティ かぼちゃのピューレとレモンコンフィ 夏トリュフ添え グラッセしたプティオニオン フォワ入りのソース』。それぞれの食材の香りと旨み、そして風味が、これ以上ないバランスで調和する逸品
- 吹抜けが印象的なインテリアは、名門ホテルやレストランを手がけるピエール=イヴ・ロション氏によるもの
- 温冷、緩急、食感の変化。一皿だけでなくコース全体をひとつの料理として楽しませるのもシェフの力量の表れ
- 『サラダ菜に包まれた毛蟹のサラダ』。カルダモン風味のホワイトアスパラのロワイヤル、オレンジの酸味を纏ったグリーンアスパラとともに
- 『クリスピーに焼いたすずき 野菜のマティニョンとハーブを詰めたラヴィオル』。キャロットのピューレでリエした軽やかな赤ワインソース
日本のフランス料理の歴史に
燦然と輝く最高峰の名店1973年に銀座の地に誕生して以来、最高級フランス料理を供するレストランとして日本の美食シーンをリードする【ロオジエ】。2013年に資生堂本社ビルの建替えに伴う2年半の休業から再オープンを果たした後も、その根本が揺らぐことはなかった。すなわち、無類の料理、サービス、空間を備える最高峰のレストランだ。
新生【ロオジエ】のスタートに当たりエグゼクティブシェフに迎えたのは、オリヴィエ・シェニョン氏。18歳にして権威ある欧州の料理コンクールで優勝、その後も数々のレストランで経験を積み、料理界で脚光を浴びる気鋭のシェフである。経験に裏付けられた伝統的なフランス料理の技法、そして確立された技術の上に成り立つイノベーティブな発想。両者を兼ね備えた気鋭のシェフの元、40余年の歴史を持つ同店は、今なおさらなる進化を続けているのだ。
香りまで計算されつくされたアミューズ・ブーシュ、目を奪うほどに美しいアントレ、クラシカルで重厚な肉料理もあれば、油やバターを控えた軽やかな魚料理も登場する。緩急自在、あらゆる手法で舌を楽しませるコースは、訪れるゲスト全員に、長く消えることのない余韻を残す。 -
ファロ資生堂
- イタリア語で灯台(ファロ)を意味する店名を冠した同店は、大きく取られたガラス窓から銀座の街並みを一望のもとに。優雅で洗練された空間はハレの日の食事にもぴったり
- 夏の旬を感じる『毛蟹とグリーンアスパラガスのサラダ仕立て 枝豆のソースと青柚子のザバイオーネ』
- 『ブレス産小鳩のロースト 蕎麦の実とジロール茸のソテー 黒胡椒ソース』。鳩の内蔵もソテーして中に詰める
- コースの最後にはドルチェのワゴンサービスが好評。常時8~9種類から好きなものを好きなだけ選べる
- ピエモンテやトスカーナを中心に、イタリア全州のワインを揃える。日本ではここだけで提供のワインなども
ファロ資生堂
03-3572-3911 住所:東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル10F
営業:11:30~L.O.14:30/17:30~L.O.21:30
休日:日曜
(月曜が祝日の場合は営業、祝日不定休)旬の食材の力が漲る
モダンイタリアンの雄「特にこだわりではないんです。食材を大切にすることは料理人としては当たり前のことだと思います」
ミシュランガイドにて7年連続で、星を獲得した【ファロ資生堂】のシェフ・中尾崇宏氏はそう笑う。それはもちろんそうなのだが、その次元が違うのだ。毎日、築地に通い食材を吟味し、顔見知りの料理人と情報交換するのを日課とし、さらに野菜は馴染みの八百屋が店へ運んでくれるものから、野菜の表情を見ながら厳選。そうしてひとつひとつ丁寧に選び、生み出される料理は銀座の地で日本の四季を表現する。季節のものが美味しいのは当たり前なのだが、そのもう一歩先、旨味を蓄えた料理が奏でる味わいは、力が漲っているのだ。
夏であれば、水と塩のみでつくられた枝豆のピューレ、塩をして焼いただけのウナギに赤ワインソースを絡めたパスタ、芯の部分からも旨味を抽出するトウモロコシなど。極上の素材に、イタリアンの技法でひと手間加えた料理は、盛り付けも華やかに皿の上で開花する。それはまるで「夏を楽しんで」と語りかけてくるようなのだ。
そこに銀座で美食の歴史を紡ぎ続ける資生堂が生み出すサービスと演出。ドルチェのワゴンサービスや、ソムリエが厳選する料理に合わせたバイザグラスでのワインの提案、季節ごとのイタリア郷土料理のフェアなど、楽しみは尽きない。銀座だからこそ味わえるイタリアン。それこそが氏の、そして同店の目指すべき姿だ。
※このページのデータは、2015年8月上旬取材時のものです。メニュー、営業時間、定休日などの情報は変更されることもございますので、あらかじめご了承ください。