折り目正しい 京都のトップランナー。 | ヒトサラ
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縁
- 18歳から料理の道を志し、【瓢亭】など、数々の名店で腕を揮ってきた鈴木健夫氏。「この歳になると自分に素直な料理が一番だね。嘘をついていては続かないよ」と笑う
- 季節で変わる『お椀』は、ふぐの白子とかぶらのみぞれ、出汁に葛を引いて振る舞ってくれた
- 『からすみの飯蒸し』は、蒸した白米の上にたっぷりのうにと、自家製のからすみをあしらった逸品
- 7席のみの小体な店ながら、その分、鈴木氏の目が行き届き、料理を出すタイミングなど細やかなサービスが実に心地いい
- 鈴木氏が手作りするからすみは、水分を抜きすぎずソフトな食感が特徴。料理ひとつひとつを一から丁寧に作る
縁
予約専用番号:050-5263-1253 お問い合わせ専用番号:075-411-1822 住所:京都府京都市上京区烏丸一条下ル龍前町589
営業:12:00~14:00/18:00~最終入店21:00
休日:木曜、最終水曜 お店の詳細情報を見るつくりたいものを一から
名店の進化が面白い京都を代表する老舗料亭【瓢亭】出身であり、自らの店ではジビエやフォアグラなど型にはまらない素材で、一世を風靡した【縁】。店主・鈴木健夫氏が、移転を考え出したのは、2008年。自身の体調不良をきっかけに、自らの料理観も変化してきたのだという。目の前に遮るものがない空間で、自分一人ですべてのお客さんと対峙できるスペースを模索し、辿り着いたのが京都御苑近くの今の店舗だ。
「必要であれば鴨やうずらも使いますが、この頃はよりシンプルに奇をてらったことはしなくなった。代わりに、ひとつの料理を一からつくることにこだわってきて」
牛乳を用いた日本最古のチーズとも言われる『蘇』はフレッシュマスカルポーネのような鮮烈な味。ウニとからすみの飯蒸しは、からすみからして自家製。ゆずを繰り抜き、半年干したゆべしまで。素材ひとつの成り立ちにまで心を砕く分、料理は至ってシンプルなのだが、その味は驚くべき独自性が光るのだ。
「自分に嘘をつかない。そんな料理を目指す」
堺町にあった旧店舗からの常連はもちろん、今では国内外を問わずその一期一会の味を求め、多くの美食家が訪れる同店。そう、鈴木氏の変化とは、言わば進化なのだ。作りたいものをだけを作り、納得の行く味だけを振る舞う。ここには料理人が理想とする、料理へのオマージュが常に旬と重なり振る舞われているのだ。 -
祇園 大渡
- 江戸後期から明治、現代の作家まで、器にも造形が深い大渡氏。時にラリックやバカラなどの酒器を使うなど、既成概念にこだわらない器選びは、氏の料理観にも共通する
- 『蟹しんじょお椀』。兵庫県浜坂のズワイガニを活きで取り寄せ、塩ゆでした後、すぐに氷詰めに。蟹本来の甘みを引き出す
- 『京北のかぶらのふろふき』。水のみで炊いたかぶらは、まさに透き通るような旨みを存分に楽しませてくれる
- 一軒家の店を探し巡りあったのが、祇園の路地裏にあった民家。静かで落ち着きのある佇まいが大渡氏の料理を引き立てる
- 京都の銘酒から全国のこだわりの蔵元までを揃える日本酒は、酒器を選んで楽しめるのがうれしい
祇園 大渡
予約専用番号:050-5263-1257 お問い合わせ専用番号:075-551-5252 住所:京都府京都市東山区祇園町南側570-265
営業:18:00~最終入店21:00
休日:不定休 お店の詳細情報を見る水でさえも旨みに変える
新進気鋭の料理人京北特産の『かぶらのふろふき』。今、最も勢いにのる京の料理人・大渡真人氏の研ぎ澄まされた感性、さらには味への探究心を如実に表すひと皿がこちらだ。実にシンプルでいて、潔い逸品。まずは皮付きのまま炊いたかぶらの中央を少し繰り抜き、白味噌を5時間練り、キャラメリゼ状になったふろふきを詰める。皮が器代わりとなり、匙を入れるたびジューシーなかぶらの実をしっかりと支えてくれる。そんな美しく澄んだ味わいのかぶらに、実に丹精込めた味噌が寄り添うのだ。
「かぶらが旨い時期ですから、あえて水だけで炊いてみました。下御霊神社の水は偉大です」
水で炊く。その澄んだ味わいの理由を聞けば、かぶらの味を堪能してもらうには、なんと出汁も邪魔だというのだ。京都は水がいいことで知られる土地。わざわざ汲みに行き使用する名水・下御霊神社の水は、いまやこの店には無くてはならない食材。だがしかし、大阪で修業した大渡氏が、最初の壁にぶつかったのも、この水の良さだったという。
「京都は水がいいので、出汁が出すぎる。思うような出汁が取れず、試行錯誤の末、辿り着いたのがまぐろ節。あの上品な味わいでやっと納得の出汁ができたんです」
そうまでして研究を重ねた出汁を、時に邪魔だと水で調理してしまう。未だ発展途上。かぶらの澄んだ味と同様に、料理を語る大渡氏の目は真っ直ぐに澄んでいた。 -
室町和久傳
- 接待向けの個室から、中庭を望むテーブル席など、さまざまなタイプの座席を要する【室町和久傳】。ぜひ一度は、カウンター席に座って、料理長・藤山氏の技を目前でながめてみたい
- 『鬼海老おかき揚げ 鯛白子 うに醤油』。おかきをまぶした鬼海老をさっと揚げた逸品は食感も楽しいひと皿に
- 京丹後の地ウニ、タケノコ、鬼海老、地アワビ(黒)など、春を感じる贅沢な食材を惜しげも無くたっぷりと使用
- 常に京都や丹後の旬にこだわり、料理を振る舞ってきた料理長・藤山貴朗氏。さすがの包丁さばき
- 丹後から運ばれた黒あわびを、やわらかく煮て、春の食材と合わせた『黒あわび 筍 菜の花のそうす 木ノ芽』
室町和久傳
予約専用番号:050-5263-1255 お問い合わせ専用番号:075-223-3200 住所:京都府京都市中京区堺町通り御池下ル東側
営業:11:30~最終入店13:30/17:30~最終入店20:00
休日:火曜 お店の詳細情報を見る野趣と繊細の融合が
京料理の真髄を紡ぐ日本を代表する和の名店【室町和久傳】を今、支えるのは藤山貴朗総料理長その人だ。高校卒業後から木屋町の割烹で日本料理を学び、24歳で和久傳の門を叩いた藤山氏。その時の衝撃が今も忘れられないという。
「良い素材を素直に。ちまちませず大胆に。本当に旨いものは、直球こそが正解だと思い知らされました。はじめて和久傳の料理に触れて、素材が持つ野趣と京料理の繊細さの融合こそが、自分の目指すべき道だと素直に思えたんですよ」
その後、名門・【和久傳】という老舗料亭の料理道を邁進する藤山氏。向板からはじまり、二番へとめきめき頭角を現し、気がつけば花板として躍進。室町、高台寺、さらには再び室町と、約15年に渡り京都を代表する【和久傳】2店の料理を支えてきた。
「今でもあの頃と考え方は同じ。目指すは野趣と繊細」
そう、京丹後の料理旅館に端を発する【和久傳】の料理とは、いつの時代であっても、野趣と繊細の共存なのだ。浜から直接届けられる魚介や、農家直送の野菜などを用い、華美な装飾は極力省き、その分、繊細な京の味付けで仕上げる。そこには素材への絶対的な自信と、素材を活かすという料理の本質が常に。
和久傳が和久傳であり続ける、そこには京都という文化を守り続ける老舗の矜持が見え隠れする。 -
味ふくしま
- 好奇心旺盛で、気になる生産者がいればその地を訪れることも厭わない、若き料理長・辻義勝氏。「同世代の生産者と日本料理をもっと盛り上げていきたい」と力強く語る
- 『八寸』。この日は、うなぎ八幡巻き、わらびいか、琵琶湖のもろこ、金柑の蜜煮、ふきのとう味噌、菜の花の辛子和え
- 藁で炙りたて、香り高いまま食膳に運ばれる『かつおのたたき』。すっきりとしたかつおの味を存分に楽しめる
- 無垢の檜のカウンターは、贅沢に一枚板を使用。凛とした佇まいの空間にも、【味ふくしま】の世界観が表現されている
- 料理長の辻義勝氏と、女将の福島知子さん。ふたりの絶妙な距離感でお茶屋が営む割烹を盛り上げている
味ふくしま
予約専用番号:050-5263-1254 お問い合わせ専用番号:075-561-4848 住所:京都府京都市東山区祇園町南側570
営業:11:30~最終入店13:00/17:00~最終入店20:00
休日:日曜・最終月曜 お店の詳細情報を見る素材追求はとことん、
京料理の今を感じる名店へ藁で炙った『かつおのたたき』は皮目が温かいうちに。春のお椀である『白魚の玉締め』ならば、毎朝削りたてを届けてもらうまぐろ節で出汁を。『たけのこの青のりあんかけ』も京都のたけのこの名産地・塚原から朝一番で届いたものを。そう、一事が万事そうなのだ。オープン後、1年足らずで星付き店の仲間入りを果たした祇園の【味ふくしま】の若き辻義勝氏は実に素直だ。
「生産者の顔が見えて、自信を持って美味しいと思える素材なら、手を加えずとも絶対に美味しいです」
だからこそ、気になる素材があれば現地へ足を運び、直接生産者と対話を重ねてきた。するとどうだ、食膳にはその時期、もっとも輝く旬が並ぶ。もちろん、他の料理店も「旬を大切に」「極力手を加えずに」とはいうが、この店では、その次元がまったく違うのだ。そんな辻氏の仕事は、京料理の名店【御料理はやし】で培われたと聞き、至極納得してしまう。そう、野菜や食材、出汁の旨みを引き出す名店の技が継承されている。
さらにこの店、お茶屋を営む『福嶋』が開いた割烹なのだ。風情ある祇園花見小路から南へ二筋。端正な数寄屋建築にはじまり、檜が香る一枚板のカウンター、すみずみまで凝らされた店の意匠のそのすべてが華美すぎず、実にしっくりと落ち着く。若き才能と情熱に、京都ならではの美意識が息づく店内、まさしくここでは京料理の今が表現されている。 -
和ごころ泉
- 『八寸』(2人前)。ちらし寿司、赤貝のてっぱい、河内鴨のロース煮と菜種のお浸し、亀岡牛のいちぼを使ったローストビーフ、白花豆の蜜煮、卵のカステラまで、見た目も味も楽しめる渾身の美味が並ぶ
- 『お椀』。桑名のハマグリをしんじょにした逸品。ウドや、木の芽が、器の中に春を添える
- 『黒豆の虎白寒』。黒豆を炒って煮だしてから、ザラメ糖と寒天で固めた。金箔のあしらいも美しい
- 3部屋の個室を用意する【和ごころ泉】。周りを気にせず、食事ができる設計となっている
- 惜しまれつつも1月にその幕を閉じた【桜田】。師の魂を受け継ぐひとりが泉昌樹氏だ
和ごころ泉
予約専用番号:050-5263-1256 お問い合わせ専用番号:075-351-3917 住所:京都府京都市下京区四条新町下ル四条町366 四条敷島ビル1F
営業:11:30~最終入店13:00/17:30~最終入店19:30
休日:水曜 お店の詳細情報を見る京料理は日本の芸術、
素直にそう思える名店へ「休みのたびに作家を訪ねた時期もありました」
料理を彩る見事な器について尋ねれば、400年前の古染付もあれば、人間国宝でもある近藤悠三の陶器もあり、現代作家ものまで、実に楽しそうに語る店主の泉昌樹氏。【和ごころ泉】をオープンするはるか昔、10代の修業時代よりなけなしの給料であっても器はコレクションしてきたのだという。器だけではない、床の間のお軸やお花まで、店を彩るそのすべてで季節を感じてもらうのが日本料理の真髄なのだと、泉氏は力説する。自身の料理もまた、日本料理という芸術を感じてもらうため、古くからあるものこそを大切に、その根本や成り立ちまで、深く掘り下げていくことに注力する。
「現地へ趣き、漁師や農家さんと直接話す。すると、自分にはこういう味が必要だと分かってもらえるんです」
食を突き詰めると、結局は生産者へと辿り着く。誰もが考えつくことだが、直接現地へ行き、生産者と語り求める味を訴える料理人はそうはいまい。枕崎でかつお節の職人と語り、生でも味わえる鴨があると聞けば駆けつける。今では希少品で知られる桑名のハマグリも、自らが築いたコネクションでここでは普通に振る舞われる。
そうして紡がれた料理のひとつひとつ。滋味あふれる味はもちろんなのだが、さらに食べ手のことを考えて隠し包丁を施すなど、実に優しいのだ。心と身体が欲する食事とはたぶん、こういう料理なのだろう。
※このページのデータは、2015年2月上旬取材時のものです。メニュー、営業時間、定休日などの情報は変更されることもございますので、あらかじめご了承ください。