第21回:食材を追求する下町シェフの哲学
全国各地から集まる食材を、ベストな状態でいただけるイタリア料理店【パッソ ア パッソ】の有馬シェフ。実直に生産者と向き合い、全国から食材を集めるようになったシェフは、生産者への尊敬の意を絶やさない。自身の仕事は、生産者ともお客様とも顔を合わせ、それを「つなげる」ことだと信条をもつ。食材を追求し続けるシェフに、その原動力を語ってもらった。
人が集まる下町のイタリア料理店
――門前仲町という下町にイタリア料理店を開かれたのはどういう理由ですか。
有馬:お店が小さいため、冷蔵庫も大きいのは用意できなくて、築地市場に毎日行ける距離が一番いいんじゃないかということがひとつ。もうひとつの決め手は、おみこしが出るお祭りが大好きで選びました。お神輿を担ぐことによって、近所にどんな人が住んでいるのかが分かる、それが好きなんです。
――お店の名前の【パッソ ア パッソ】とはどういう意味なんですか。
有馬:日本語でいうと「一歩一歩」という意味です。少しずつお店が成長するといいなという願いを込めました。
人とのつながりから生まれる逸品
――野菜や肉を色々なルートで仕入れられているんですが、食材を仕入れるときはどこに注目されているんですか。
有馬:もちろん商品から入るときもあるんですが、人と人とのやりとりを一番大事にしています。毎回の収穫で常にベストを出すことは難しい。そうなったときに、僕自身が一生懸命つくられた食材をどう調理できるかというのがポイントです。
――人間関係が大事ということですね。
有馬:はい。基本的に生産者さんや猟師さんには悪い人はいないです。なのでまず自分を知ってもらって、しっかりやりとりができて、僕のリクエストを聞いてもらえるように常に考えています。
生産者とお客さんを「つなげる」仕事
――有馬さんの料理哲学をお聞きしたいです。
有馬:僕は生産者からいただく素材がないと仕事ができないので、提供してくれる方たちとお客様を確実につなげることが僕の仕事だと思っています。それは「この熊おいしかったね、どこの?」とお客様に聞いてもらえるような仕事をするということです。