憧れの一軒家レストラン | ヒトサラ
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小笠原伯爵邸
- メインダイニングは、かつて伯爵夫妻の寝室と書斎として使われていた場所。窓の外には樹齢500年のオリーブの木。それぞれの部屋に潜むストーリーや、細部に施された装飾など、空間すべてが素敵な話題を提供してくれる
- 名店で培った技術と、飽くなき食への探究心がシェフの持ち味。洗練された感性で、新たな料理を創作する
- 『特選牛ロースの備長炭焼き』。生のイチジクと甘みのある芽キャベツ、シェリー酒のソースとともに
- 『毛ガニとコールラビのラグー』海と山の幸を合わせるのもシェフの得意技。ハニートリュフの香りも絶妙
- スペインのブドウ畑に足を運んで実現したオリジナルワイン。世界中でこちらでしか味わえない逸品
重厚なスペイン様式の邸宅で味わう
贅を尽くしたスペイン料理舞台は昭和初期に小笠原長幹伯爵の邸宅として建てられたスペイン様式の洋館、ゆえに店名は【小笠原伯爵邸】。往時をしのばせる趣深い空間と一流の調度品に囲まれながら、自慢の料理に舌鼓。その体験は、まるで迎賓館での晩餐のような上質な時間へとゲストを誘ってくれることだろう。
食卓を飾るのは、贅を尽くしたモダンスパニッシュ。北海道の鮮魚や京野菜といった日本の旬素材も、気鋭のシェフ・ゴンサロ=アルバレス氏の手で目にも美しいスペイン料理に変えられるのだ。とくに国産食材とスペイン料理という未知なる組み合わせの緩衝材として、シェフが重視するのが酸味の演出。シェリーやビネガーで、あるいはフレッシュフルーツで。さまざまな料理に忍ばせる酸味は、舌が“酸っぱい”と感じる直前のソフトな風味。それが食材と料理を歩み寄らせ、かつワインとの相性も数段引き上げてくれるのである。
「料理を見て、季節を感じてもらえるとうれしい」と、ときには雪に見立てたエスプーマに料理を潜ませるなどの遊び心でサプライズを演出する。スペインの名店で磨いた技術は、日本の四季や食材と出合うことで、さらなる高みへと登っていく。 -
マノーワール・ディノ
- 井上氏の【銀座レカン】料理長時代からのスペシャリテ『仔羊のパイ包み焼き マリアカラス』。フランス【マキシム・ド・パリ】での修業時代、頻繁に店へ訪れ仔羊を好んで食べたというオペラ歌手マリア・カラスに因んだひと皿
- 青森県・大間産の黒アワビを贅沢に使った『煮アワビの冷製とスッポンのジュレ キャビアと共に』
- 庭園を配した優雅な邸宅レストラン。店内にはマダムである井上みほ氏自ら作曲した音楽がしっとりと流れる
- 井上氏が絶対の信頼を置く阿部シェフ。井上氏の教え、伝統の味を大切にしつつも自らの色も料理に重ねていく
- 『オマール海老のナージュ仕立て』。蛤と浅利のジュにノイリー酒とペルノー酒、オマール海老の旨みが重なる
『マリアカラス』に代表される
庭園を眺め味わう伝統の美味誰がここを表参道の一角だと思うだろう。かつて外資系企業のゲストハウスとして使われていた贅沢な邸宅。店内へ足を踏み入れれば、柔らかな陽光が差し込み、ガラス窓には四季が移ろう見事な庭園が映し出される。木々が風にそよぐ音、野鳥のさえずりに安らげば、席に通される頃には、都会のせわしなさは後ずさりし、誰もが別荘地にでも訪れたかのような寛ぎを見出すことだろう。
ただ、それも料理を目の前にすれば、単なるエピローグにすぎないことに気づく。そう、ここは日本におけるフランス料理界の重鎮【シェ・イノ】のオーナーでもある井上旭氏がオーナーシェフを務めるレストランなのだ。
井上氏といえば、ソースの神様と称されるジャン・トロワグロに師事し、日本にフレンチの礎を築き上げた人物。その味は、料理長として阿部彰氏が厨房に立つ今もこの店の変わらぬ伝統となっている。
「料理の美味しさの8割はソースで決まってしまいます。だから、そのベースとなるフォンを如何に丁寧にクリアに仕上げるかを一番に考えています」と阿部氏は力を込める。井上氏直伝の40年来のスペシャリテである『仔羊のパイ包み焼き マリアカラス』のペリグーソースも、『オマール海老のナージュ仕立て』に使うジュ・ド・オマールもそう。贅沢な庭園付きの一軒家レストランで楽しむのは、滋味深きソースを味わう料理といっても過言ではない。 -
オーベルジュ・ド・リル トーキョー
- 冬季限定の『蝦夷鹿背肉のポワレ 季節の果実のコンポートとスペッツレ』。鹿骨のフォンにシナモンやアニス、ナツメグなどのスパイス、赤ワインなどを合わせて仕立てる、複雑味のあるソースが、シンプルなポワレによく合う
- 『鵞鳥のフォアグラのテリーヌ』は、ギャルソンがゲストの目の前でサーブするスタイルで本店同様の逸品
- 『グルヌイユのムースリーヌ“ポールエーベルラン”』。本店のスペシャリテだが、ソースは軽めに仕上げた
- 扉を開けるとメインダイニングが広がる。螺旋階段を下りれば、まるで貴族にでもなったかのような気分
- ワインは約600種類をストックし、そのうち約200種をオンリスト。アルザスの白ワインが豊富に揃う
豪壮な白亜の洋館で堪能する
アルザスの小さな村の名店の美味何とドラマチックな幕開けだろう。エントランスを抜け、扉を開ければ視界に飛び込むのは、階下に広がる優雅なメインダイニング。煌めくシャンデリアに、フランスから買い付けた絵画や暖炉。貴族の邸宅のごとき贅沢な空間は、ゲストの心を一瞬にして鷲づかみにし、異空間へと誘う。
フランス・アルザス地方のイローゼンに創業し、50年近くにわたりミシュランの三ツ星に輝き続ける【オーベルジュ・ド・リル】。その東京支店として誕生した舞台がこの店。それは、世界中の美食家が愛して止まない名店の血筋を受け継ぐに相応しき、豪壮な白亜の洋館である。
そして、視覚的に高ぶった期待感に、料理も呼応する。本店のスペシャリテでもある美味の数々が、東京にいながらにして味わえるのだ。赤ワインベースの複雑味のあるソースが寄り添う蝦夷鹿のポワレは、スペッツレというアルザス地方のパスタを添えて供される。あるいは、ゲストの目の前でサーブする『鵞鳥のフォアグラのテリーヌ』は本店から直送される門外不出のスパイスで味を重ねた逸品。コースでは、アミューズとしてアルザス地方の郷土料理・タルトフランベがひと口サイズとなって登場するなど、シェフ・寺田信一氏ならではの感性や遊び心も申し分ない。豪華絢爛の雰囲気と名店の味は、必ずやゲストの心を満たすはずだ。 -
ミュージアム1999ロアラブッシュ
- 『仔羊背肉のフォカッチャ包み焼き 旨味を凝縮したジュのソースで』。ゆっくりと高温から低温へ。さらにオーブンからの数度の出し入れにより、火入れされた仔羊は、美しいロゼ色に輝き旨みを凝縮
- 総料理長の中嶋寿幸氏。クラシカルな調理法のフランス料理は、日本人ならではの感性を大切に調理するという
- 庭に面するメインダイニングは、当初の洋風建築から増床し生み出されたという。ゆったりと贅沢な空間に
- 『オマール海老と帆立貝のメダイヨンを添えたセップ茸のフラン 冬トリュフの薫りと西洋梨のフィルム』
- ウエイティングルームなどさまざまなスペースにエルテの芸術作品が飾られ、鑑賞できる
エルテの名作と洋館が織りなす
これぞ邸宅フレンチの最高峰表参道駅から徒歩10分ほど、その館は、青山の住宅街にある。辺りを高級住宅が連ねる閑静なエリアの中で、ひときわ存在感を放つ一軒家。お城か、はたまた美術館か。アールデコ様式のアンティークの洋館は、その存在感だけで、ただならぬ雰囲気。さらに館内へと歩みを進めると、“アールデコの父”と呼ばれた芸術家・エルテの作品がそこかしこに。
【ミュージアム1999ロアラブッシュ】とは、そんなエルテの名作を楽しみながら、フランス料理を楽しめるミュージアムレストランであるのだ。昭和初期につくられたという近代建築の邸宅を舞台に、パリの【ルレ・ルイ・トレーズ】や【トゥール・ダルジャン】など、名門と謳われた星付き店で腕をふるってきた総料理長・中嶋寿幸氏の料理が味わえる。
「最近思うのは、日本の食材を豊富に使いつつも、しっかりとフランス料理であること。そして、何よりこれほどの空間は探してもないですからね。それに寄り添う料理でありたい」
中嶋氏が目指すのはレストランとしての総合力。これほどの空間を生かすも殺すも、料理とサービスを含めたトータルの時間なのだと教えてくれる。時期や季節で料理は刻々と変わり、サービスマンとの情報共有で、同じ料理であっても都度盛り付けや味付けは変更を厭わない。そんな柔軟な姿勢は、さりげなくゲストに特別な時を提供してくれるのだ。大切な誰かを喜ばせたい時、この店ほど心強い名店もないだろう。 -
カルネヴィーノ
- シェフのおすすめ肉料理を盛り合わせたスペシャリテの『カルネミスト』。この日は群馬県神津牧場のジャージー牛、最高級の仔羊、北海道白糠町産エゾシカが登場。バルサミコ、バジル、赤ワインのソースがそれぞれの肉を引き立てる
- 住宅だった頃の面影を残す、シンプルなインテリアも特徴。木の温もりに包まれるアットホームな雰囲気
- ワインはイタリアらしさを重視してセレクト。コースに合わせたワインが楽しめるグラスワインコースも
- 手打ちパスタを使う『ズワイガニと九条ねぎのタリオリーニ』。カニとの調和を考え、あえて極細のパスタに
- イタリアンのほか、フレンチの経験も豊かな市川英明シェフ。幅広い知識を活かして肉料理の新たな境地に挑む
カルネヴィーノ
03-5919-2822 住所:東京都新宿区愛住町9-5
営業:11:30~L.O.14:00/18:00~L.O.21:30
(土曜・日曜・祝日11:30~L.O.14:00/
18:00~L.O.21:00 )
休日:月曜肉とワインと閑静な一軒家。
三者が奏でる贅沢なマリアージュ四谷三丁目の駅から歩いて5分ほどの静かな住宅街。小さな看板を見逃せば素通りしてしまうような、何の変哲もない住宅が【カルネヴィーノ】だ。玄関を抜けて店内に入っても、その印象が変わることはない。まるで知人の家を訪れたときのような、少しの緊張感と、少しの安心感。それはこれから始まる美食の時間を、いっそう彩るエッセンスとなるだろう。
店名の由来は「カルネ=肉」と、「ヴィーノ=ワイン」。潔いまでにシンプルな命名に、両者への信念と自信が窺える。たとえば牛肉なら、黒毛和牛や短角牛、赤身の旨いジャージー牛などを、状態によって使い分け。あるいは北海道白糠町から届くエゾシカやブルターニュ産鴨といった滋味深いジビエ、イベリコ豚や仔羊などの繊細で甘みある肉。肉料理を知り尽くしたシェフが、多方面から肉の魅力を提案してくれるのだ。そんな厳選肉を引き立てるのが、店のもう一翼を担うワインだ。揃うボトルはイタリア産を中心に200本以上。北から南まで、イタリア全土の銘柄を網羅し、あらゆる料理、あらゆる好みに対応する。
肉とワインが織りなす力強い味の競演、そして一軒家というくつろぎの空間。三者が程よく調和する味と空間のマリアージュこそ、この店を唯一無二の名店たらしめている由縁なのだ。
※このページのデータは、2016年1月上旬取材時のものです。メニュー、営業時間、定休日などの情報は変更されることもございますので、あらかじめご了承ください。