第48回:【HAJIME】創造の根源にあるもの
ミシュラン史上、世界最速での三ツ星獲得、また、「Foodie Top 100 Restaurants、Asia's 50 Best Restaurants」にランクインするなど、グローバルなガストロノミー・シーンでも高い評価を得る【HAJIME】。
「食べる」という行為を分解し、生物学、脳科学、宇宙科学などあらゆる知見から捉え直す、米田肇氏の驚くべき料理哲学とは。食べる人に新たな味覚体験をもたらし、現代美術界からも注目されるシェフの思考の根源を探る。
音楽コンサートのようなタイトルが付いた料理たち
――先日、初めて店にお伺いしました。「森」から始まって「生命」「川」「破壊と同化」「愛」など。およそほかでは見られないようなタイトルの料理が並びます。
米田:料理を通じてメッセージを感じていただくことを大切に考えた結果、こういう形になりました。
――とりわけ、お寿司のような形をしたフォアグラの一皿が印象的でした。そして、そのタイトルが「破壊と同化」。
米田:食事をするというのは、口で「破壊」をし、その破壊したものが体に「同化」していくんですね。その感覚を味わってほしくて。
地球をテーマにしたコース料理
――肇さんの料理は「食べる」という行為の意味を、改めて考えさせられるようにできています。
米田:料理には、そうしたメッセージ性を込められればいいな、と思っています。
――最後のデセールは「愛」というタイトルでしたが、これは?
米田:そのときは、「地球とはこういうものですよ」ということを表現するテーマに考えました。たとえば、宇宙人が地球にきたときに、地球を紹介する料理をやってみようと。そして、最終的には地球には「愛」というものがあると伝えられれば嬉しいと思い、最後のデセールのタイトルを付けました。
料理の大きさの前に、人間の口の大きさを考えた「破壊と同化」
「まず、食事をするときには、例えば牛肉がどんなに大きくても、それを切ってから口に入れますよね。だから全員の口の寸法を計算して口に入る大きさを考えました。」と話す米田氏。こうした根底には、自然に囲まれて過ごした少年時代の記憶、数学の世界にのめり込み電子工学を学んだ理系の「研究者気質」が影響しているという。