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Restaurant État d'esprit レストラン エタ デスプリ
琉球ガストロノミーを世界へ
若き天才が描く沖縄料理の未来形「ようこそ伊良部島へいらっしゃいました」
シェフが高らかに声を上げると、ゲスト一人ひとりの盃にふわりと磯の香りを漂わせながら白い液体が注がれていく。目の前には、ろうそくの明かりに照らされぬらぬらと光る、真っ黒なウミヘビの燻製。液体の正体は、このウミヘビと豚足を泡盛とともに煮込んだスープだという。車座になって泡盛を回し飲む宮古島の伝統、「オトーリ」のオマージュであり、その名を料理名にも冠したコースの口開けとなる一杯だ。
東京、パリ、ニースなどの名だたるフレンチの名店で研鑽を積んだシェフの渡真利泰洋氏。5年前、料理長に就任した【Restaurant État d'esprit】も、当初は正統派フレンチの色合いが強かったが、今年劇的な変貌を遂げた。その原動力となったのが「もっと、ここでしか出合えない料理を」との想いだ。ゲストが遠路はるばる島に足を運びたくなる、求心力溢れる料理とは何かを追求。そのために渡真利泰洋氏はまず、どんな食材もあえて島のものを使うと決めた。
「おいしくないと言われる沖縄の魚も、ちゃんと処理すれば旨くなる。ここでしか獲れない食材で勝負すれば、自ずとオリジナリティも生まれてくるはず」
たとえば、今、宮古島で害鳥として駆除の対象になっている孔雀もその一つだ。無闇に命を奪うのではなく“食財”として肉と骨からコンソメスープをつくり、アロエを練り込んだ宮古島の素面仕立てに。また金粉を散らして、渡真利氏が研究を重ねている琉球の宮廷料理をイメージした。さらに今後は、そんな島の味を引き立てる個性豊かな泡盛のペアリングもドリンクの主軸に据えていく。
「もはやフレンチではなく、沖縄料理になりました」と渡真利氏。宮古島の“今”を自由な感性で表現すること。そしてまだ知られざる島の食文化を掘り起こし、未来へ繋げていくこと。新生【Restaurant État d'esprit】の進化に刮目したい。
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