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あの名シェフから若き俊英まで 新たな時代を築く
東京中華を追う!
Hitosara special

ここ数年でグルメ界を大きく賑わせているのが、続々と誕生する中国料理店。
その勢いは令和になっても変わらず、2019年も新店ラッシュとなった。
しかも、その多くは中国料理の可能性を示す個性派ばかりだから面白い。
新たな時代の幕開けを予感させる、中国料理の新鋭を取材した。

Photographs by Noriko Yoneyama , Takuya Suzuki , Shinjo Arai , Mami Hashimoto
Text by Shinji Yoshida , Ai Ozaki , Maria Kawashima / Design by form and craft Inc.

  • 「飽き性だから、勉強し続けられるように3つの土地の料理を作っている」とシェフの水岡孝和氏。
    探究心が強く、現地へ足を運んだり、中国語で書かれている本を読んだりと学びを続けている

    南方中華料理 南三 なんぽうちゅうかりょうり みなみ

    雲南、湖南、台南の異なる食文化を
    アイデアで再構築した“越境”中華

     毎月1度の予約日には、1カ月分の予約が即完売。2018年5月のオープン以来、競ってフーディが訪れる【南方中華料理 南三】は、渋谷【天厨菜館】でキャリアをスタートさせ、銀座【黒猫夜】で料理長も務めた水岡孝和氏が独立し、始めたお店だ。
     水岡氏が台湾での語学留学時代、旅をするなかで出会った雲南、湖南、台南の料理。店名はその「3つの南」に由来している。しかしながら、現地そのままの味を再現することはない。ハーブやスパイス、発酵などを用いるという料理の特徴は大切にしつつも、水岡氏ならではのアレンジが加えられ、ここでしか味わえない唯一無二の逸品に仕上げられるのだ。
     「中国はとても郷土愛が強く、違う地方の料理同士を融合することはありません。でも、組み合わせることでもっと面白くなる。日本人の自分だからできる発想をメニューに取り入れたいですね」と水岡氏は話す。
     【南三】のシンボルともいえる中華シャルキュトリのひとつ、『羊のウイグルソーセージ』はその代表だ。現地で食べた、臓物を使うウイグルソーセージの味に感動したものの、ぽそぽそとした食感に改良の余地があると考えた水岡氏。そこで、台湾の夜市で定番の腸詰からヒントを得て、もち米を入れてみると、狙い通り、ジューシーな食感に仕上げることができたという。
     このほかにも、ベーコンや腸の燻製などシャルキュトリを手づくりしており、その時間を確保するためにもランチ営業をしていないのだとか。「今は店でつくっていますが、シャルキュトリをつくる工房があったらいいなと思っています。そこで角打ちのように、お酒も楽しめるようにできたら」と2店舗目のオープンも視野に入れる水岡氏。料理だけでなく、店づくりでも客を楽しませるアイデアが尽きない。

    • 『珍味盛り』は定番の品。この日は羊のウイグルソーセージ、鴨舌の燻製、豚大腸のネギパリパリ揚げが登場した
    • 『台湾オオタニワタリと自家製ベーコンの炒め』。ベーコンの燻香が移り、台湾の山菜、オオタニワタリのほろ苦さを味わい深くする
    • ボトルワインをリーズナブルに揃える。お客の要望もありナチュールが多く、シャンパンからオレンジワインまでバリエーション豊か

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