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新富町 湯浅 しんとみちょう ゆあさ
コンセプトありきではない
自由闊達な中華は確かな仕事の賜物「コンセプトに縛られるのが嫌いなんです」
そう話すのは、2019年2月に銀座の外れに【新富町 湯浅】をオープンした湯浅大輔氏。【御田町 桃の木】では小林武志氏のもとで研鑽を積み、千駄木【天外天】、銀座【筑紫樓】など多くの名店で修業を重ねた、中国料理界の若き秀才のひとりである。開口一番そう話した湯浅氏は、さらに「修業した店のどこに軸を置くかでなく、これまで身につけた技術を使って、食材をいかに美味しくするかを大切にしたいんです」と続けた。
それを証明するかのように、名物のフカヒレにも湯浅氏ならではのこだわりがあった。フカヒレというと、仕上げに油で焼きつけて香りを引き立たせるのが一般的だが、そうすると仕上がりがどうしても油っこくなる。しかし、湯浅氏は煮汁をつくる際に油を乳化させて煮込むことで、それを解消するのだ。
「フカヒレってどこも量が少ないでしょ。うちはフカヒレを100gの量でお出ししているので、オーソドックスにつくるとくどくなるんです。自分としては最後まで美味しく食べてほしいから、そばを食べるイメージで濃度と味の強さを調えています」
そんな自由闊達な料理は、魚料理にも見てとれる。この日登場したクエは、熟成させ旨味を増幅させてから、特製の大豆ソースと合わせたが、実は偶然できたソースだという。
「大豆を砕いてつくる豆酥醬(ドウスージャン)という調味料があるのですが、それを仕込んでいるときに途中で味見したら『アレンジ次第で、そのままソースとして使えるかも』と閃いて。魚だけでなく、肉や野菜に合わせても美味しい万能ソースなんです」
湯浅氏曰く、自身の料理に足し算、引き算、掛け算は関係ないという。自分自身がいまできる技術を駆使し、いかに食材を輝かせるか。湯浅氏が求めるのは、ただ美味しいだけではない、その先にある食べ手を感動させられる料理だという。
あの名シェフから若き俊英まで
新たな時代を築く
東京中華を追う!
Hitosara special
ここ数年でグルメ界を大きく賑わせているのが、続々と誕生する中国料理店。
その勢いは令和になっても変わらず、2019年も新店ラッシュとなった。
しかも、その多くは中国料理の可能性を示す個性派ばかりだから面白い。
新たな時代の幕開けを予感させる、中国料理の新鋭を取材した。
Photographs by Noriko Yoneyama , Takuya Suzuki , Shinjo Arai , Mami Hashimoto
Text by Shinji Yoshida , Ai Ozaki , Maria Kawashima / Design by form and craft Inc.
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