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  3. 北イタリアのトップレストラン6<ミラノから日帰りで叶う、エキサイティングな食体験>

ミラノから日帰りで叶う、
エキサイティングな食体験
北イタリアの
トップレストラン
Hitosara special

“世界一のレストラン”に輝き続けたモデナのレストラン【オステリア・フランチェスカーナ】ほか、
世界トップレベルのガストロノミ―レストランが集まる北イタリア。
クールで、アーティスティックでエキサイティングな新しいファインダイニングの体験を楽しみに、
今日も人々は、そのレストランを目指して旅に出る。
ミラノを拠点に、今、のりにのっている、レストランを取材した。

Photographs by Tadahiko Nagata / Coordination&Text by Masakatsu Ikeda / Design by form and craft Inc.

  • 『ムール貝とナス、スカンピのスパゲッティ』魚介類のパスタは【ダ・ヴィットリオ】のスペシャリティ。
    これはムール貝のソースにパスタをからめ、エビとナスのソテーをトッピング。ナスとバジリコのクリームが夏らしい清涼感を醸し出す

    Da Vittorio ダ・ヴィットリオ

    1966年創業、家族経営の老舗にして
    イタリアを代表する魚介料理店

     ミラノから最も近い3ツ星【ダ・ヴィットリオ】が誕生したのは今から半世紀以上前の1966年のこと。ヴィットリオ・チェレア氏とブルーナ夫妻が、当時のベルガモには珍しかった魚介料理専門店として創業。当時のミラノ周辺部では今と違って魚を食べる習慣がほとんどなかったが、ヴィットリオ氏はヴェネツィアの漁師と契約を結んで新鮮な魚介類を日々調達することに成功すると、その噂は瞬く間に知れ渡ることになる。1978年にミシュラン1ツ星獲得。やがて成長したエンリコやロベルトら5人の子供達がレストランを手伝うようになり2010年にはついに3ツ星獲得。ヴィットリオ氏はその栄誉を見ることなくこの世を去ったが、以来【ダ・ヴィットリオ】は9年連続で3ツ星を維持しており、ケータリングやホテル、パーティスペースも拡張。現在イタリアで最も成功しているレストランとなった。
     現在の【ダ・ヴィットリオ】はイタリアを代表する家族経営レストランの典型にして極致だ。チェレア家の長男、通称キッコことエンリコがシェフ、次男のフランチェスコはレストラン・マネージャー、三男のロベルトはドルチェ、そして長女のロッセッラがレセプション、次女のバルバラが姉妹店のカフェ担当と子供達全員が父親が築いた道を歩んでいる。
     【ダ・ヴィットリオ】の料理は現在も魚介類中心だが、キッコが遊び心を加えた料理もコースの中に登場する。特に『カルタ・ビアンカ』というメニューはイタリア語で白紙委任状を意味し、エンリコ氏のおまかせスペシャル・メニューに相当。
     そのメニューの中でも、トマトソースを使ったショートパスタ『ヴィットリオ風パッケリ』は必ず登場する永世定番で、50年間作り続けている【ダ・ヴィットリオ】の味。ソースに使用するのは3種類のトマトとパルミジャーノ・レッジャーノ、バジリコ、唐辛子のみ。トマトの心地よい酸味とチーズのコクはシンプルだけどいくら食べても飽きない。これはチェレア家の食卓にも常に登場したであろうヴィットリオ氏の味であり、さらに次の世代へと伝えてゆくイタリア家庭料理の原点だ。彼とともにレストランと5人の子供達を育てたブルーナ夫人が挨拶に訪れた。すでに80才を超えているのというのに夜遅くまで大変ですね、と話しかけると「この店はわたしたち家族の家だから疲れるなんてことはないのよ」という。
     ヴィットリオの時代から料理は進化し続けているとはいえ、根本にあるホスピタリティは創業当初からいつも変わらない。それこそが家族経営ならではの魅力であり、イタリアにはそうしたレストランがまだ数多く残っている。父から子供達にバトンを渡し、夢を叶えた究極系がこの【ダ・ヴィットリオ】なのだ。

    • 『アラゴスタ』300gの伊勢海老を使ったリッチな料理。伊勢海老を生姜、ニンニク、タイム風味のバターで調理して丸ごといただく。ソースにはイタリアンパセリ、ペコリーノ・チーズ、オリーブのクランブル、プッタネスカ・ケチャップとともに
    • 『豚バラ、セロリ、青リンゴ』豚バラ肉は軽く燻製したあとに真空低温調理。仕上げにスパイスをのせてかりっとグラティネしてある。外はかりかり、中はほろほろの食感。セロリのカンディート青リンゴ風味と、青リンゴのソースの甘みが心地よい
    • ベルガモから車で10分ほどの郊外にある【ダ・ヴィットリオ】。全10室の客室やプール、テニスコート、などのほかVIP用にヘリポートも完備。敷地内には広大なブドウ畑もある
    シェフの流儀 (左)エンリコ・チェレア氏
    (右)ブルーナさん

    イタリア料理は家庭料理です。【ダ・ヴィットリオ】の料理もその延長線上にあります。わたしは料理に関する多くのことを両親から学びましたがまだまだ研究しなければいけないことが山ほどある。特にドルチェは常に進化し続けているので【ダ・ヴィットリオ】のドルチェも進化をやめてはいけない、と思っています。

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