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本物の新潟と出合う食体験 Eat Local NIGATA Hitosara special

急峻な山々と広大な日本海、また佐渡島も擁する新潟県。
とりわけ冬は雪ふかく、厳しい環境に置かれるが、
四季の移ろいが明瞭な大地は、多くの恵みを抱えている。
「ミシュラン」刊行で話題の新潟へ、地の味を体感しに行く。

Photographs by Shinjo Arai / Text by Koji Okano / Design by form and craft Inc.

  • 6,600円のコースより「夏鹿 自家製赤ワインビネガー」。鹿の藁焼きの付け合わせは、夏野菜のチャンボッタ(ごった煮)。地場のブルーベリー、カシューナッツ、赤タマネギのピクルスも添えて。コースは前菜2皿、メイン2皿、パスタなどがつく

    灯りの食邸 KOKAJIYA

    岩室温泉の陸・山・海の恵みが生む、
    滋味あふれる、シンプルイタリアン

     開湯から3世紀以上を誇る岩室温泉の表通りには、築100年を超える豪壮な民家が立ち並ぶ。こちら【灯りの食邸 KOKAJIYA】がある建物も、そのひとつ。オーナーシェフの熊倉誠之助氏はイベントのケータリングでここを訪れ、心が惹かれたと話す。
    「近所にこんな趣のある建物が存在するとは知りませんでした。しかし、久々に岩船温泉を訪れたら、通りが静まり返っていたんです。『料理のチカラで、街を盛り上げられないか』と考えました」

     もとは新潟出身で、学生時代とその後の数年を沖縄で過ごし、那覇へ移住した料理人からイタリアンを学んだという熊倉氏。帰郷した後、2013年にこの古民家を改装して、【灯りの食邸 KOKAJIYA】を開業した。

     もちろん、「岩室温泉は、自らが目指す料理を実現できる場所」との確信はあった。「新潟」と呼ばれるだけあって、周囲には「潟」を埋め立てて作った農地が点在。朝獲れの野菜が食卓に並ぶのは、ここでは当たり前だ。また村の背後は山ゆえに、山菜やジビエも豊富。その山の裏側はさらに日本海で、もちろん魚介の宝庫である。
    「僕自身も狩猟免許を収得したので、ジビエの時期には山に入ります。また組合の会合で、他の漁師さんたちと一緒に鴨めしや鴨汁を囲んで話をしていると、『地に足のついた料理を出せている』という実感が湧いてくるんです」

     そんな熊倉さんのスペシャリテは、自ら狩猟した鴨を1羽使い尽くした一皿。夏なら、鹿の藁焼きが評判だ。
    「餌の豊富な春を過ごした鹿の肉は、あっさりしているのに旨味が強いんです」このメインに加えて、地場野菜の前菜、近隣の出雲崎町のサザエのソテーなども供される日替わりのコース。締めのデザートまで味わえば、これぞ新潟イタリアンの本領、その滋味で身体が生き返る心地すらしてくるだろう。

    • オーナーシェフの熊倉氏。2021年には焼鳥店【岩室 とり蔦】を開業。2022年春頃に一棟貸しの宿も開業予定
    • 素材の味わいをシンプルに引き出すべく、藁焼きを多用。夏の鹿もフライパンで両面を焼いたら、藁でじっくり火入れ
    • 和洋折衷の雰囲気の店内。存在感のあるシャンデリアは、昔からあったものをそのまま活用する
    Eat Local NIGATA

    熊倉氏のイタリアンと切っても切れない関係にあるのが、新潟の野菜。夏なら、10種類以上もある茄子をはじめ、唐辛子の一種で中越地方の伝統野菜である神楽南蛮や枝豆などが揃う。営業前に、岩室の直売所や農家の畑で野菜を仕入れるという熊倉氏。フェンネルやディルなどのハーブ類やトマトなどは、店の裏の菜園で育てて収穫している。

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