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今を面白くする一軒が続々! オーベルジュ&
ホテルレストランへ
Hitosara special

いま新たなホテル&オーベルジュが続々とオープンしている。
つまり、それは新たなレストランの誕生を意味するといっても過言ではない。
単なる宿泊施設のグルメという枠組みだけにとどまらない、
レストランシーンを面白くする5店を紹介しよう。

Photographs by Takuya Suzuki , Jiro Ohtani , Shinjo Arai /
Text by Shinji Yoshida , Natsuki Shigihara
Design by form and craft Inc.

  • シグニチャーディッシュの『農園より』。この日は18種の野菜がひと皿に。
    野菜の端材でつくったビネグレットを液体窒素で凍らせドレッシングにしている

    SHIROIYA
    the RESTAURANT

    文化・歴史まで表現する。
    “上州キュイジーヌ”に込めた思い

     “群馬キュイジーヌ”ではなく、あえて“上州キュイジーヌ”を謳う。それはなぜか。そこにはシェフ・片山ひろ氏のある思いがある。

     2020年12月に群馬県前橋市にオープンした「白井屋ホテル」。そのメインダイニングでもある【SHIROIYA the RESTAURANT】のコンセプトは、ホテルと同様にプレイス・オブ・エンカウンター。つまり、出会いの場である。ホテルにおいて、それはアートや建築、人との出会いの場を意味する。一方で、レストランにおいては食との邂逅がその役割を果たすが、片山氏の考えはさらに先を行く。

     「料理を通して、文化や風土、さらには歴史まで料理で伝えたいと思っています。だからこそ、歴史的なことまで踏まえると、群馬でなく上州なんです」という。

     たとえば、コース半ばに登場する料理『SUITON』。これはおっ切り込みや、焼きまんじゅう、水沢うどんなど、古くから上州に根付く粉物文化を表現すべく考案したメニュー。この日は春らしく豆にフォーカスして、スナップエンドウのさやのピューレを片山氏独自のすいとんに混ぜ、インゲン豆や空豆とともに和えて仕立てた。さらに、片山氏は、味噌や醤油など、すいとんは家庭ごとで汁の味付けが決まっていないことに着目。ソースには、ブールブラン(バターソース)と地鶏のジュ(焼き汁)を合わせ、梅干しの酸味と山椒オイルでアクセントをつけるなど、片山氏らしさもしっかりと打ち出した。もちろん、単なるすいとんがレストランの味へと昇華されるのは、片山氏の確かな技術と自由な発想があってのことだ。

     外苑前【フロリレージュ】のオーナーシェフ、川手寛康氏の監修を受けている片山氏は、開店前に、同店での修業をはじめ、浅草【オマージュ】、広尾【オード】、大阪【ラ・シーム】、和歌山【ヴィラ・アイーダ 】、そしてベルギーの三つ星レストラン【ヘルトンヤン】など、国内外の名だたる店で研鑽を積んだ実力の持ち主。「白井屋ホテル」とともに、ここ前橋に新たな文化を築き上げるに違いない。

    • 「白井屋ホテル」ヘリテージタワーの1階にある。コの字カウンターにライブ感あふれるオープンキッチン
    • オープン前には【the RESTAURANT】をプロデュースする【フロリレージュ】の川手寛康氏のもとで修業した
    • ソムリエの児島由光氏が酒をセレクト。日本酒、ワインの他、ノンアルコールドリンクのペアリングも提案
    シェフの流儀

    「若者よ、故郷へ帰れ!」。フランスの伝説的な名店【ラ・ピラミッド】のオーナーシェフ、フェルナン・ポワンの言葉に憧れ、地元の群馬でシェフになることを決意。コースの最初にシンプルな一杯のコンソメスープを出すのは、コンソメがレストランの語源になったともいわれているためで、原点回帰の意味を込めた。

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